新島でヨットに暮らして超小型PCでテレワークをした話:特集・日本を変えるテレワーク(2/2 ページ)
話題のテレワーク/リモートワークについて、超小型PCを使った一風変わった体験をお届けする。そこから見えてきたものとは何だろうか。
超小型PCがあるではないか
そこで思いついたのが、偶然、連続レビューを実施していた超小型PCのラインアップだ。こちらの記事でも紹介しているように、GPD「GPD MicroPC」から「GPD Pocket2」、One-Netbook Technology「OneMix2S」、そしてCHUWI「MiniBook」と、集中して評価する機会に恵まれていた。
これらの中で、GPD MicroPCはシリアルポートを備えるなどインタフェースが充実していたこともあって、電子海図と航法支援ソフトウェアを導入し、AISレシーバーと接続した“舶用機器”として使用していた。ただ、キーボードは親指入力が基本で記事のような長い文章をタイプするには無理がある。となると、GPD Pocket2、OneMix2S、MiniBookから選ぶことになる。
筆者が評価作業中、文章の入力で最も使いやすかったのはGPD Pocket2だった(完全無欠ということではなく相対的にではあるが)。そして、バッテリー容量は5V 6800mAh(34Wh)だった。つまり、5V 2A供給のモバイルバッテリーでも充電ができる。手持ちの容量1万mAhのモバイルバッテリーを3、4個持っていけば、1週間ぐらいは駆動電力を賄える計算になる。
ヨットにおける電力供給状況。1万mAh級モバイルバッテリーを主力にPCとスマートフォンとモバイルルーターを充電。デジタルカメラのバッテリーはAC100V出力に対応したモバイルバッテリーから充電。モバイルバッテリーは、船に積んだDC12Vバッテリーからシガーソケットで接続したインバーター式昇圧変換器で充電を行った
というわけで、今回の出張取材では、PCをThinkPadからGPD Pocket2に変更した他は、デジタルカメラもスマートフォンもモバイルルーターも通常の取材と同じ機材を使っている。その分、モバイルバッテリーはいつもより多めに用意し、デジタルカメラの充電用にAC100V出力に対応したモバイルバッテリーも携行した。
なお、デジタルカメラの撮影データはUSB接続のSDメモリーカードリーダーを使ってGPD Pocket2に移している。それ以外は普段の取材と同じだ。いや本当に全くもって技術的にテレワークは、それがどこで実施しようともごく当たり前で普通のことだったりする。
テレワークは行動圏を拡大する手段に過ぎない
昨今「働き方改革」というフレーズと共にテレワーク/リモートワークに対する関心が高まっている。テレワークといっても、自宅で仕事をすることから、都会を遠く離れた風光明媚な環境で気持ちをリフレッシュさせて仕事の効率を高め、引いては自分の生き方を見つめなおすことを目指した取り組みまで、その解釈と取り組みは幅広い。
筆者は、「船で仕事をする」という形態でのテレワークを以前から経験してきている。2004年に掲載したこちらの記事は八丈島を目指して時化た外洋航海をしながらTOUGHBOOKを検証して執筆し、2006年に掲載したこちらの記事は、小豆島から伊豆半島に航海しているヨットで執筆して送稿をしている。
このような経験を通して言えるのは「必然性があってこそのテレワーク」ということだ。遠方長期出張におけるテレワークは明らかに必然性があるし、今回のような「長期取材の経費削減のために船に寝泊まりしてテレワーク」も必然性があるから何ら疑問を感じずに実行できる。
テレワークの先駆的事例として筆者が思い出すのは、カヌーイストの野田知佑氏だ。彼は海外の大河を旅するとき、衛星電話とFAXと発電機を携行し、連載の原稿を書いてはFAXで人工衛星越しに送稿しつつ、長期間に渡って旅をした。この場合も実現が難しい遠方長距離旅を可能にするために、テレワークで仕事を継続することが必然だったといえる。
テレワークは、仕事の効率を上げる上げないではなく、人の行動圏を物理的に広げてくれるか否かという視点で検討するのが望ましい。行動圏を広げる必然性があったとき、テレワークは実施した人にとって価値のある行為になる。行動圏拡大の必然性がない、「風光明媚な土地でいつもと気分を変えて効率向上」を目指したテレワークは、実施した人に負担と疑念を生み出す行為になるだろう。
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