4万円台で買える「Wacom One 液晶ペンタブレット13」をプロ目線でチェックした:これはワコムの"塩おにぎり"だ(3/4 ページ)
ワコムが新機軸の液晶タブレット「Wacom One 液晶ペンタブレット13」を投入した。ワコムブランドでは安価な本製品の使い勝手を、人気イラストレーターのrefeia先生が“プロ”目線で確かめた。
詳しく見ていくと、診断画面で見られる「スイッチ」値が1でありながら「筆圧」値が0%でありつづける筆圧の範囲が、だいたい5〜19gのようでした。つまり、アプリやその状態によって、「スイッチ」値を見て描画する場合と、「筆圧」値を見て描画する場合があって、それで描き味が大幅に変わってしまうのでしょう。
ならば、PhotoshopやCLIP STUDIO PAINTがスイッチ値を見て描画してくれればいいかというと、そう簡単ではないです。この仕様になっている以上、少なくとも19gまでは、筆圧検知のリニアリティは無い=指先の力でコントロールできないと考えられるからです。
今まで見なかった傾向なので、ワコムにドライバの設定ミスではないか確認しましたが、設定ミスではないとのことでした。ペンの互換性が広い外販用のセンサーを使ったりで色々と事情はあるのでしょう。しかしもう自分のアタマの中はグルグルで目が回るような状態になっています……。
「いやいや、Cintiq 16までプロペン2だったのがそもそも美味しすぎたのでは」
「4万円液タブに良いペンを付けたら、Intuos Proさん死んじゃうのかな」
「とはいえOne板タブで出来ていたことが普通に出来ないのはちょっと……」
「ワコムブランド製品って色々言われることはあっても、描き味だけは信頼されていたはずでは……」
「しかし……まだ描きづらいと決まったわけでは……」
……などなど、アタマが沸騰していてもしょうがないので、実際に使ってみますね。
実用面はどうなの?
というわけで、最近よく実描テストに使っているイラストで、各工程を試しながら感触を見ていきます。
ラフの工程では、自分は比較的乱雑に描くので、あまり違和感なく作業ができました。線画の工程も、自分の作業の仕方では筆圧をかけて線を安定させる癖が残っていて、軽い筆圧をあまり使わないので、違和感は軽微でした。線の抜き入りにこだわりたい人には、違和感が残る可能性があると思います。
塗りの工程では、かなり塗りづらいと感じました。自分は大きいブラシを軽い筆圧から強い筆圧まで使ってグラデーションを作りながら塗りますし、薄く塗りたい時もフェザータッチに近い運筆を多用します。そういう塗り方では、始筆の位置が遅れてしまったり、意図したより早く筆が抜けてしまったり、それをカバーしようとして力を入れたら急激にべっちゃりと塗ってしまう、という失敗を繰り返しました。
オン荷重がペン自重(約11g)よりずっと大きいというのも、描き味の違和感に輪をかけていると思いました。ペンを画面に任せて、さらに少し力をかけないと筆が付かないというのは、普段の指先の感覚とは異なります。試しに、One液タブとOne板タブで、薄く入って、じんわりと力をかけて、薄く抜ける、という運筆を試してみたら以下のようになりました。上と下の線が目標の始筆と終筆の位置です。
描画位置の正確性が大事な線画までの工程はともかく、筆圧のコントロールの重みが増してくる塗りの工程では、One液タブよりもスタンダードIntuosを使いたいと思ってしまった、というのが正直なところです。実際に、良い液タブを持っているイラストレーターさんでも、塗り工程は疲れづらい板タブに切り替えている例もあります。
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