なぜ今、NECPCは米国再進出を目指すのか? 薄型・軽量ではない日本クオリティーの持つ意味:CES 2020(2/2 ページ)
NECパーソナルコンピュータ(NECPC)が、米国市場に再びチャレンジすることになった。2015年のテストマーケティングとは異なり、今回はNECブランドで挑むのはなぜか。同社のデビット・ベネット社長に話を聞いた。
「トップダウン」の米国再進出 本格的に食い込めるか?
NECPCによる2015年の米国進出は、企画部門が「ボトムアップ」で進めたもので、親会社であるLenovoとの擦り合わせも難しかったようだ。
レストランを貸し切ったLenovoのプライベートブースで、NECPCのコーナーは一番奥の目立たない場所にあった。あくまで主役は「ThinkPad」を始めとするLenovo製品というわけだ。
だが、今回の米国再進出はベネット社長による「トップダウン」によるもので、Lenovoブースでの展示も“一等地”に大きく構え、「NEC」や「LAVIE」のロゴも大きく掲示した。今回の新製品も、「Lenovo」ではなく「NEC」ブランドで販売される。
「失敗を恐れずに、しっかりサポートする社内環境を作りたい。もう一度、米国で新しい製品を出す挑戦をしたい」とベネット社長はストレートに思いを語る。
今回、米国での発売が発表されたのは、LAVIE Pro Mobileの他、クリエイター向けをうたう15.6型ノートPC「LAVIE VEGA」と、液晶一体型デスクトップPC(AIO)「LAVIE Home All-in-one」の計3機種。これらの中で、意外にも高評価を得たのは、4K有機ELディスプレイを搭載するLAVIE VEGAだという。
LAVIE VEGAは天板にCorning製の強化ガラス「Gorilla Glass 6」を用いており、カーボン素材を使っているLAVIE Pro Mobileとは、見た目でも一線を画している。
一方、米国市場において、AIOは苦戦が予想される。住居の広さに余裕がある米国では、設置スペースを節約できるAIOの需要はそれほど大きくないという。
その中で、NECPCがあえて投入するLAVIE Home All-in-oneは、画面がスピーカーを兼ねる「Crystal Sound Display」技術を活用しているため、あたかもディスプレイだけのように見える新しいデザインを実現した。実際に画面に触れてからサウンドを鳴らしてみると、指に振動が伝わってくる。
この斬新なデザインで、NECPCは米国市場におけるAIO普及に活路を見出そうとしている。
米国再進出のロードマップの第一歩として、NECPCは2020年から米国市場で先述の3モデルのパイロット販売を開始する。もちろん、そこから“次のステップ”へ進むことも視野に入れている。
今後の世界展開についてこそ明言はしなかったが、ベネット社長は「国によっては日本ブランド、日本クオリティーというだけでバリューになる」と期待感を語る。
この5年間で、他のPCメーカーもNECPCと同様に進化を遂げている。CES 2020ではASUSが1kgを切るノートPCを披露し、LG Electronicsは「LG gram」、Samsung Electronicsは「Galaxy Book S」といずれも軽量ノートPCを出展している。もはや薄型軽量は日本メーカーの専売特許ではない。
海外市場ではこれらのメーカーに先を越されてしまった感はあるものの、見方を変えれば、薄型軽量のノートPCが受け入れられる市場が海外に広がったともいえる状況にある。NECPCが元祖・薄型軽量ともいえる日本ブランドで、世界市場に挑む姿勢を示したことは、注目すべき動きといえる。
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