新「13インチMacBook Pro」下位モデルはMacBook Airより買い? 価格もサイズも近い2台のテストで分かった実力差:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/4 ページ)
2020年5月4日に発表された新しい「13インチMacBook Pro」。いち早く下位モデルを入手したので、ディスプレイのサイズが同じで価格が近いMacBook Airと性能を比べてみた。
総合的な性能は13インチMacBook Pro下位モデルが優位
全く想定外だったのは、GPUの計算能力を示すGeekbench 5のComputeスコア(Metal)だ。こちらはMacBook Air(ただしCore i5以上)の方がおよそ4割ほど高い値になるはずだった。というのも、既に実績値として7500前後のスコアを出していたからだ。
一方で13インチMacBook Pro下位モデルに内蔵されているIntel Iris Plus Graphics 645は、5200程度のスコアしかマークしていない。ところが今回、あらためて計測すると最高で7499のスコアをたたき出した。つまりMacBook Airの最新モデルと同等ということになる。
半信半疑でMacBook Proの2018年上位モデルに搭載されているIntel Iris Plus Graphics 655もテストしてみたが、こちらも7000を超える値をマークした。これがMetal側の改良によるものなのか、あるいはMacBook Airが本来のGPUパフォーマンスが発揮できていないからなのかは分からない。しかしいずれにしろ、GPUはMacBook Airの方が高速という前提は崩れることになる。
では実際のアプリケーションではどうだろうか。macOSは最新の「Catalina」から、アクティビティモニタでGPUの利用率やトータルの利用時間統計を見ることができるため、それらも参考にしながらテストを進めた。
まずは動画編集ソフトから見ていこう。
アプリケーションごとに異なる動画編集ソフトの体験
動画編集ソフトは動画に対する視覚効果や合成などでGPUを多用するため、GPU能力がアプリケーション全体の動きに大きく影響を与える。しかし、同じように使える動画編集ソフトでも、GPUの扱い方に若干の違いがあるため、パフォーマンスの感じ方は異なる。
例えば「Final Cut Pro X」(Apple)や「DaVinci Resolve」(Blackmagic Design)は、動画のカットや編集などの作業時はGPUとCPUをバランスよく使い、手元の応答性を重視した動作を行う。
このときの操作感は13インチMacBook Pro下位モデルの方が応答性がよく感じられる。もちろん、動画プレビューにはGPUも使われるため無関係ではないが、フルHD程度ならばGPUの差は出ない。
GPU性能の差が出るのは編集後の動画を書き出す際で、CPU負荷に対して圧倒的にGPU負荷が勝る。GPU性能では互角のはずだが、こちらは13インチMacBook Pro下位モデルの圧勝となった。
30fpsのフルHDで動画プロジェクトを作成し、16分間の動画を複数のビデオ合成やクロスディゾルブなどでつないだ映像をH.264で書き出したが、13インチMacBook Pro下位モデルが18分で書き出しを終えるところ、MacBook Airは24分かかっった。
「Premiere Pro」や「Premiere Rush」(Adobe Systems)は、編集中でもGPUへの依存度が高い。これはバックグラウンドでGPUを用いて動画のプリレンダリング処理が走り続けるためで、GPUに余力がない場合は(CPUに余裕があっても)操作の応答性が悪く感じたり、重ね合わせている動画のプレビュー画像が乱れたりといったことがある。
そのぶん、Premiereシリーズは書き出し時の処理が軽いといわれる。ところが、操作をする上でも、書き出しの絶対的な速度でも、13インチMacBook Pro下位モデルの方が高速という結果だった。
RAW現像でも13インチMacBook Pro下位モデルが圧倒
マルチコアが生きてくる重い処理としてもう一つ、高画素デジタルカメラのRAW現像処理をテストしてみたが、アプリケーションによってGPUの寄与度が全く異なる。
例えば「Photoshop」(Adobe Systems)などで使われる「Adobe Camera Raw」や、筆者がテストで使っている「Digital Photo Professional」(キヤノン)で一括現像処理を行っても、全くGPUは使われない。100%の処理をCPUで行うため、CPUのマルチコア性能の差がそのまま結果に反映される(つまり13インチMacBook Pro下位モデルの方がずっと高速)。
一方、AppleがmacOS内に実装しているRAW現像モジュールはGPUとCPUをバランスよく使っているようだが、こちらはRAWファイルのプレビュー時などにしか使われず、一括処理を行う機会はないだろう。
「Luminar 4」(Skylum)というRAW現像アプリケーション(Photoshopなどのプラグインとしても利用できる)は、高画質な現像処理とAIによる自動レタッチ機能を持つが、極めて処理時間が重い。一方でGPUがあればCPUの負荷をオフロードする機能を持つため、こちらを使ってテストしてみた。
現像したのはキヤノン「EOS R」で撮影したRAWファイル100枚だが、13インチMacBook Pro下位モデルが44分だったのに対して、MacBook Airは1時間10分という大差になった。
これはLuminar 4がCPU処理のオフロードにGPUを用いていることに加え、CPUとGPUが同時に動作することでシステム全体の発熱量が増えやすく、冷却性能が高いMacBook Proの総合力が生かされたのだと考えられる。
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