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Appleが“史上最速“と語る「16インチMacBook Pro+Radeon Pro 5600M」は買い? 新旧比較テストで分かった性能差本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/4 ページ)

画面サイズを大型化しつつ、プロ向けに再構築された「16インチMacBook Pro」の登場から半年が過ぎ、より高速な内蔵GPUを選べるようになった。Appleが「史上最高性能のMacBook Pro」と語るその実力を従来モデルと比較しながら明らかにしていく。

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MacBook Proにおける高性能GPUは何のため?

 まずはっきりさせておきたいのがMacBook Proの位置付けだ。

 ノートPCでのゲーム需要が旺盛なWindows搭載機では、高性能なプロセッサとGPUを搭載し、冷却性能を高めた「ゲーミングPC」が数多く提供されている。その多くは可搬性よりも放熱性能を重視した機構設計が施されており、価格もMacBook Proよりもリーズナブルだ。

 Radeon Pro 5600Mと性能が同程度と考えられるNVIDIAのGeForceシリーズを搭載するモデルでも10万円台後半くらいから入手可能で、ディスプレイも120Hz表示が可能なものが多い。単純にGPU性能が高いコンピュータを使い、それを動画編集や3Dモデリングなどに使いたいだけならばゲーミングPCも選択肢の一つだろう。

 では、なぜMacBook Proを選ぶのか。それは(macOSを好むユーザーはもちろんだが)MacBook Proが提供する広色域かつ高精細、高輝度、色再現の調整もよく追い込まれたディスプレイや、(パフォーマンスに対して)薄く軽量な設計が施されていること、マイクやスピーカーの音質などが整えられていることなど、クリエイター向けに企画・設計されたノート型コンピュータを望むユーザー層があるからだ。

 もし、そんなことは気にしないし、外に持ち出すこともないならば、GPU重視でゲーミングPCを使った方が費用対効果は高い。同様にクリエイター向けをうたうWindows搭載機という選択肢もあるだろう。

 16インチMacBook Proの価値は、やはり自宅やオフィス、スタジオはもちろん、どこにでも持ち出して、いつでもクリエイター向けツールを快適に使いこなせることにある。

写真現像やレタッチでのGPU活躍は限定的

 まずはデジタル写真編集の性能チェックから。手元の環境では「Adobe Camera Raw」でGPUが活躍しないため、定番ツールの「Photoshop」や「Lightroom」でのGPUの恩恵は極めて限定的だ。Photoshopの場合、3Dレイヤーやロゴなどの3Dレンダリング時にGPUが使われ、Lightroomもサムネイルや編集時のプレビュー作成時にはGPUが使われる。いずれも操作の快適性を高めるものの、まとめてRAW現像を行う際には使われない。

 定量的な評価がしにくいためベンチマークテストは行っていないが、Lightroomの快適性は確かにGPU性能に依存する。しかしながら、5600M(8GB HBM2メモリ)と5500M(4GB GDDR6メモリ)に7万円分の差があるかと尋ねられると、そこまでの違いはないというのが個人的な感想だ。

 RAW現像にGPUを積極的に使うアプリには、Phase Oneの「Capture One」がある。プロフェッショナル向けの高機能現像ソフトだが、起動時にGPU性能を計測し、自動で最適な設定にしてくれる。

 ところが、キヤノンのミラーレス一眼「EOS R」で撮影した3030万画素のRAWファイル100枚を現像したところ、5500Mが2分34秒、5600Mが2分4秒と両者の差はわずかしかない。しかも今回試用した2.4GHzのCore i9搭載モデルでは、CPUで現像した方が2分1秒と高速になってしまった。

MacBook Pro 16
「Capture One」のRAWファイル現像テスト結果。3030万画素のRAWファイル100枚を現像したところ、所要時間は5500Mが2分34秒、5600Mが2分4秒だった。ちなみにCPUだと2分1秒でGPUの恩恵はない

 よりCPUへの依存度が高いSkylumのRAW現像アプリ「Luminar 4」では、GPUの恩恵が少なくなる。他にもキヤノンの純正RAW現像ソフト「Digital Photo Professional 4」も試したが、こちらはGPUを一切使わなかった。

 デジタル写真にMacを使っているユーザーは、今回のアップデートはあまり気に掛ける必要はなさそうだ。

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