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実は意外とお買い得 「ThinkPad T14s Gen 1」を念入りにチェックしてみた(1/2 ページ)

ThinkPadのパフォーマンスモデルである「ThinkPad Tシリーズ」の中で、スリムさを重視した「s」の付くモデルは似たフォームファクターを持つフラグシップモデル「ThinkPad X1 Carbon」の陰に隠れがちだ。この記事では、その最新モデルである「ThinkPad T14s Gen 1」の魅力を探っていく。【】

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編集担当 「もしもし、『ThinkPad T14s Gen 1』のレビューをお願いします!」

筆者 「またまた、『T41s』の間違いじゃないっすか?」

編集担当 「いえいえ、『T14s』で間違いありません」

 ……ということで、いきなりネーミングナンバーが若返ったThinkPad T14s Gen 1は、5月末に登場したThinkPad Tシリーズの新モデルだ。

 既報の通り、レノボは2019年11月からThinkPadの製品命名ルールを変更し、整数部分でディスプレイサイズを表し、その後に世代を示す「Gen X」が続くようになった(Xは世代の数字が入る)。

 同時期に登場したThinkPad Tシリーズには15.6型ディスプレイを搭載する「ThinkPad T15 Gen 1」と、14型ディスプレイを搭載する「ThinkPad T14 Gen 1」、そして今回取り上げる「ThinkPad T14s Gen 1」の3モデルがある。整数部分末尾の「s」は、今まで通り「モバイル利用を重視したモデル」という意味で、sのないモデルと比べるとスリムで軽い。

 この記事では、“新世代”の幕開けに登場したThinkPad T14s Gen 1をレビューしていく。最後までぜひお付き合いいただきたい。

Intelモデル
今回レビューするThinkPad T14s Gen 1(Intelモデル)

第10世代Coreと第4世代Ryzenを選べるスリムモデル

 ThinkPad T14 Gen 1とThinkPad T14s Gen 1、さらに加えて、これも同時期に登場した「ThinkPad X1 Carbon Gen 8」は、いずれも14型モデルということで、本体サイズや重量にどのくらいの差があるのか知りたくなる。

 参考として、以下に最軽量構成の重量とサイズを示す。なお、ThinkPad T14s Gen 1については、フルHD(1920×1080ピクセル)ディスプレイモデルに加えて、括弧書きで4K(3840×2160ピクセル)ディスプレイモデルの値も示す。

モデル名 ThinkPad T14 Gen 1 ThinkPad T14s Gen 1 ThinkPad X1 Carbon Gen 8
329mm 329(328.8)mm 323mm
奥行き 227mm 226.15(225.8)mm 217mm
厚さ 19.9mm 16.7(16.1)mm 14.95mm
重さ 1.46kg 1.3(1.24)kg 1.09kg

 T14と比べると、T14sはフットプリント(幅×奥行きで定まる面積)でほぼ同等ながら、わずかに薄くわずかに軽い。

 ThinkPad X1 Carbonの歴代モデルと比べると、2017年モデル(5th Gen)までは大きく重く、2016年モデル(4th Gen)までさかのぼるとフットプリントがコンパクトながらも重く、さらに2015年モデル(3rd Gen)までさかのぼるとコンパクトかつスリムとなる。

【訂正:14時30分】サイズ感に関する説明を変更しました

 ThinkPad T14s Gen 1には、第10世代Coreプロセッサを搭載する「Intelモデル」と、第4世代Ryzenプロセッサを搭載する「AMDモデル」が存在する。それぞれ2019年に発売された「ThinkPad T490s」「ThinkPad T495s」の後継モデルという位置付けだ。

 モデル名は大きく変わったものの、その内実は「ビッグマイナーチェンジ」だ。CPUの世代が変わったこと、それに伴いメモリの動作クロック(周波数)が向上したこと、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)に対応したことで基本スペックは向上し、キーボードのファンクションキーの一部機能が変更されてはいるが、ボディーの基本設計は先代のものを引き継いでいる。ディスプレイの構成が同じなら、公称のボディーサイズや重量も先代と同じだ。

 T490s/T495sとT14 Gen 1を並べると、X1 Carbon(7th Gen)とX1 Carbon(Gen 8)の関係と同様に「間違い探し」になると思われる。

背面
ThinkPad T14s Gen 1の背面。この角度から見た場合、同じディスプレイを搭載するThinkPad T490s/T495sとの見分けは付かない

 ちなみに7月2日現在、T14s Gen 1のカスタマイズ(CTO)モデルで選択できるCPUは以下の通りとなる。

Intelモデル

  • Core i5-10210U(1.6G〜4.2GHz、4コア8スレッド)
  • Core i5-10310U(1.7G〜4.4GHz、4コア8スレッド、vPro対応)
  • Core i7-10510U(1.8G〜4.9GHz、4コア8スレッド)
  • Core i7-10610U(1.8G〜4.9GHz、4コア8スレッド、vPro対応)

AMDモデル

  • Ryzen 3 PRO 4450U(2.5G〜3.7GHz、4コア8スレッド、AMD PRO対応)
  • Ryzen 5 PRO 4650U(2.1G〜4GHz、6コア12スレッド、AMD PRO対応)
  • Ryzen 7 PRO 4750U(1.7G〜4.1GHz、8コア16スレッド、AMD PRO対応)

Wi-Fi 6に対応 ポート類も充実

 無線LANでは、最新のWi-Fi 6に対応する。内蔵モジュールの最高通信速度は2.4Gbps(理論値)で、従来のWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)よりも高速な通信を期待できる。最近はWi-Fi 6に対応するルーターやアクセスポイントも充実してきたので、これらと組み合わせることで、より快適なワイヤレス通信を楽しめるだろう。

 ディスプレイは14型IPS液晶で、解像度はフルHDか4K(Intelモデルのみ)から選べる。4KディスプレイはT490sにおけるWQHD(2560×1440ピクセル)ディスプレイの代わりに追加された選択肢で、HDR(ハイダイナミックレンジ)表示に対応する。フルHDディスプレイは非光沢で、オプションで「省電力タイプ」「マルチタッチ対応タイプ」「電子プライバシーフィルター付きマルチタッチ対応タイプ」も選択可能だ。

ディスプレイ
ディスプレイは14型。今回は標準的なフルHDディスプレイを搭載する構成をレビューする

 その他のポート類は、先代のT490s/T495sと共通だ。

 左側面にはUSB Type-C×2(うち1基はドッキングコネクターと兼用)、イーサネット拡張コネクター(ドッキングコネクターと兼用)、USB 3.0 Type-A端子(Powered USB対応)、HDMI出力端子、ヘッドフォン/マイクコンボジャックを備える。

 2基のUSB Type-C端子はUSB Power Delivery(USB PD)による電源入力とDisplayPort Alternate Modeによる映像出力に対応しているが、以下の通りIntelモデルとAMDモデルで構成が異なる。

  • Intelモデル:USB 3.0 Type-C+Thunderbolt 3(USB 3.1 Type-C、ドッキングコネクター兼用)
  • AMDモデル:USB 3.1 Type-C+USB 3.1 Type-C(ドッキングコネクター兼用)

 IntelモデルはThunderbolt 3を利用できる代わりに、ポートの1つがUSB 3.0規格になってしまう。一方、AMDモデルはどちらのポートもUSB 3.1規格に対応する代わりに、Thunderbolt 3を利用できない。CPUの選択が、USB Type-C端子の機能にも影響することには注意が必要だ。

 イーサネット拡張コネクターは、別売(※)の「ThinkPadイーサネット拡張ケーブル2」を使うことで有線LANポートとして機能する他、隣接するUSB Type-C端子と一体となって、純正のメカニカルドッキングステーションを接続するためのコネクターとしても機能する。

(※)カスタマイズモデルでは、本体の付属品とすることも可能です

左側面
左側面。Intelモデルではドッキングコネクターを兼ねる右側のUSB Type-C端子がThunderbolt 3に対応するが、左側のUSB Type-C端子がUSB 3.0規格となることに注意が必要だ

 右側面には、スマートカードリーダー(オプション)とUSB 3.0 Type-A端子を搭載する。背面にはmicroSDメモリーカードスロットとnano SIMスロット(LTE対応構成のみ)も備えている。

 ACアダプターはUSB Power Delivery(USB PD)準拠のもので、カスタマイズモデルであれば「45W」か「65W」のものを付属できる。現行の45W ACアダプターのサイズは約93(幅)×40(奥行き)×29(厚さ)mmで、重量は約257g(いずれも実測値)だ。

右側面
右側面
SIMなど
背面のmicroSDメモリーカードスロットとnanoSIMスロットは、一体化されたトレイ式となっている。トレイの取り外しにはSIMピンなどが必要となる
ACアダプター
今回レビューするT14s Gen 1には、45WのACアダプターが付属していた。本文にもある通り、カスタマイズモデルでは65W出力のものを付属させることもできる

 テレワークやビデオ会議の普及で最近関心が高まっているWebカメラについて、カスタマイズモデルでは以下のいずれかの構成を選択できる。

  • Webカメラなし
  • 720p(1280×720ピクセル)カメラ付き
  • 720p+IR(赤外線)カメラ付き(顔認証対応)

 顔認証対応の有無を問わず、Webカメラ付きの構成では「ThinkShutter」と呼ばれる物理シャッターが付いている。このシャッターを使えば、使わない時は物理的にカメラをふさげるので安心だ。

ThinkShutter
Webカメラ付きの構成では、ThinkShutterを使うことで物理的にカメラをふさげる

 ストレージはPCI Express x4接続のSSDで、カスタマイズモデルでは容量を128GB、256GB、512GB、1TB、2TBから選択できる。256GB以上のSSDは、自己暗号化技術(OPAL)にも対応する。2TBはT14s Gen 1から選択肢に追加された。

 メインメモリはDDR4規格のオンボード実装で、最大32GB(16GB×2)まで搭載できる。ただし、7月2日時点ではIntelモデルは最大16GB(8GB×2)止まりで、32GBを実装したければAMDモデルのRyzen 7構成をカスタマイズする必要がある。

背面
裏面は1枚のふたとなっている。ネジを外せば、SSDなどにすぐアクセスできる

 ThinkPadの象徴ともいえる「TrackPoint(トラックポイント)」のクリックボタンは、同時期に発表されたThinkPad X1 Carbon Gen8(あるいはThinkPad トラックポイント キーボード II)のようなフラットな形状ではなく、先代のT490s/T495sや「ThinkPad X1 Carbon(7th Gen)」と同じ「手前はフラット、すぐ下り坂」な形状となる。

 キーボードについても、物理的な特性はT490s/T495sと同様である。実測のキーピッチは約19mm、ストローク(押し込んだ際の深さ)は約2mmと、X1 CarbonやこれまでのThinkPad Tシリーズと変わらない。タイプした感触は重くも軽くもなく、ぐらつきもなく、キートップをスッと押し込める。それこそ、(筆者が使っている)初代ThinkPad X1 Carbonから外付けのThinkPad トラックポイント キーボード IIに至るまで、共通して維持されているThinkPadらしい“タイプ感”だ。

 ただし、先にレビュー記事が出ているThinkPad X1 Carbon(Gen 8)と同様に、F9〜F11キーに割り当てられている特殊機能が「設定」「Bluetooth」「キーボード機能設定」から「アクションセンターの表示」「VoIPアプリの着信」「VoIPアプリの終話」に置き換わっている。テレワークなどでWeb会議を利用する機会が増えたことを受けた仕様変更だが、先のレビュー記事にもある通り、現時点ではF10キーとF11キーの機能を生かせるのは「Microsoft Teams」か「Skype for Business」のみとなる。

キーボード回り
キーボードはバックライト付きで、変則ピッチのキーのないフルサイズとなっている。写真は日本語配列だが、カスタマイズモデルでは好みに応じて米国英語(US)配列も選べる
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