「ニューノーマル」時代のオフィス像を模索 NECが本社でデジタルオフィスの実証実験を開始(2/2 ページ)
NECが、東京都港区にある本社において「デジタルオフィスの実証実験」を開始した。新型コロナウイルスの影響で「ニューノーマル」が叫ばれる中、それを前提にしたオフィスのあり方を模索するという。
顔認証決済:自動販売機や店頭での買い物も「顔パス」
「顔認証決済」は、事前に登録しておいたクレジットカードからの決済、あるいは給与からの控除(天引き)で物品を購入できるようにしたソリューションだ。今回の実証実験では、顔認証でジュースを買える自動販売機と、無人コンビニにおける顔認証でのレジレス決済が実施される。
顔認証自動販売機には、タブレットを改造した認証用端末が取り付けられている。これを操作して顔認証を実行すると、商品選択ボタンを押せるようになる。ボタンを押すと、何事もなかったかのように飲料が出てくる。代金は、事前にIDとひも付けておいたクレジットカードで支払われる。
なお、この自動販売機は端末を後付けしたこと以外は至って普通なので、現金でも飲料を購入できる。
2月から営業している従業員用無人コンビニ「NEC SMART STORE」(参考記事)では、今回の実証実験を機に顔認証をマスク対応とした。同時に入店できる客(従業員)の人数は、従来通り「最大8人」だ。
NEC SMART STOREでは、店内のセンサーカメラや棚に仕込まれた重量センサーなどを使って客の挙動や手にした商品をチェックしている。これらのセンサーにより、客が退店時にどのような商品を持ち出したか(買ったか)を把握し、給与から代金を自動控除している。
ここで気になるのは、持ち出した商品を“正確”に把握できているかどうかだ。店外には持ち出した(購入した)商品と金額を確認するための端末も設置しているが、2月からの運用開始以来「誤検出はほぼ皆無」(担当者)という状況が続いており、「慣れた人は、店から出たら(確認用端末をチェックせずに)そのまま立ち去るようになった」(同)という。
なお、今回の実験では、顔認証と虹彩認証の両方に対応する「マルチモーダル生体認証」を使った決済も実験されている。2つの生体認証を併用することで、セキュリティ精度を高められることが特徴だ。
顔認証を活用した取り組みは他にも
顔認証を使った実験は他にも行われている。
例えば、顔認証で預け入れや取り出しができるロッカーが設置された。このロッカーはタッチパネルで各種操作を行うが、モーションセンサーを使った「ジェスチャー操作」にも対応している。いわゆる「接触機会」の削減を図ることが目的だ。
その他、複合機やシンクライアントを顔認証で使えるようにする実験も行う。シンクライアントへの顔認証は、従業員が自由に使える共用オフィスにおける「共用端末」での利用を想定しているという。
居場所お知らせガイド:映像解析で居場所をすぐ把握できる
「居場所お知らせガイド」は、映像解析技術を使って「誰がどこにいるのか」を可視化するソリューションだ。
オフィスのカメラが撮影した映像を元に、特定の人物がどこにいるのかを検索できるので、特にフリーアドレス制を導入しているオフィスでありがちな「○○さん、出勤しているはずで直接話をしたいのに見つからない……」「電話やチャットで呼び出しても反応がない……」といった問題を解決できるという。
また、このソリューションは執務室の混雑具合を把握する用途にも使えるため、作業に集中できる場所を探したり、ソーシャルディスタンスを十分に確保できる場所を探したりするのも楽になるそうだ。
ウェルカムサイネージ:顔認証を活用して来客を効率的に誘導
「ウェルカムサイネージ」は、顔認証技術を活用した来客誘導サイネージシステムだ。
このシステムでは来客の顔を事前登録することができる。顔情報の事前登録に同意した来客が指定の場所にやってくると、顔認証が行われる。認証が済むと、面会予定の従業員には「○○さんが来訪されました」という旨が案内される。さらに、会議室フロアにやってきた来客がサイネージの前に立つと、顔認証によってどこの会議室に行けば良いか画面で案内する機能もある。
さらに、来客を楽しませる要素として、会議や商談が終わった来客がサイネージで「記念撮影」できる機能もある。表情を解析して「笑顔」が100%になった段階でシャッターを切るようになっており、撮影した写真はスマホにダウンロードできる。
NECの取り組みは、テレワークを前提としてオフィスを削減する意図を持ったものではないという。テレワークは推進しつつも、「ニューノーマル」に向けたオフィスとはどうあるべきかを模索するための実験という位置づけだ。今回の実験で利用されるソリューションは、実際に試してみて問題が発生したら都度改善していく、いわゆる「アジャイル開発」という手法を取っている。また、データの利活用は従業員(ユーザー)側に主導権を委ねる「自己主権型」で、今回の実験も基本的には同意した従業員が参加する形を取るという。
この実証実験からどのようなソリューションが生まれるのか、目が離せない。
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