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iPad Airが新搭載する「A14 Bionic」で見えてきたiPhone 12とApple Silicon Macの可能性本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

新型iPhoneの発表が例年より遅れる中、Appleは「Apple Watch」と「iPad Air」を先行してモデルチェンジした。iPad Airの新プロセッサ「A14 Bionic」は、おそらく次期iPhoneを主眼に開発されており、その性能からはiPhone 12(仮)、次期iPad Pro、そしてApple Silicon Macの姿も透けて見えてくる。

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A14から透けて見えてきた次期iPhone、iPad Pro、そしてMac

 繰り返しになるがSoCはさまざまなプロセッサ、処理回路の集合体だ。ざっとリストアップしてもCPU、GPU、機械学習アクセラレータ、Neural Engine、ISP(Image Signal Processor)などがあり、さらにiPad ProやMacのような製品向けになれば、扱うデータ量が増えるため、メモリまわりのインタフェースやSSDコントローラーの仕様にも求められる要素の変化が出てくる。接続する可能性のあるディスプレイやその数で、ディスプレイ向けインタフェースも変わるはずだ。

A14
A14を構成する要素

 言い換えればA14の主な用途は、恐らくiPad Airではなく、今後発表を控えた「iPhone 12(仮称)」だ。同じSoCが搭載されると仮定して、今回、Neural Engineへの言及が控えめだったことを考えれば、次期iPhoneに絡んで何らかの意図があってコア数が2倍になっているのではないだろうか。

 iPad Proに搭載される「LiDAR」がiPhoneにも加わると仮定するなら、その辺りの仕様変更と連動している可能性がある。また、iPad ProやMacで使うことを考えるなら、A14 Bionicの派生プロセッサとして、高性能コア数、GPU数をともに2倍に増やし、メモリ帯域を拡張したA14Xが登場するだろう。今回、A12との性能比較をApple自身が行っているため、こちらは目安となる性能がある程度は分かる。

 仮に高性能コア4個、GPUコア7個のA12Zと同じコア数ならば、CPUが40%、GPUが30%高速になるだろう。A12Zでも、既に同等クラスの消費電力であれば最高クラスの性能だったが、CPU、GPUともにモバイル系のコンピュータでは最高性能の製品になるはずだ。

 しかしAppleがSoCを自社設計する利点は、そうしたCPUやGPUの単体性能ではない。例えば最近のIntel Macは別途搭載する「T2」プロセッサが、SSDコントローラーとなり、暗号化や安全な起動、動画圧縮のアクセラレータなどの処理を行っていたが、Apple Silicon搭載Macではそうした独自回路を全てSoC内に収容してしまうからだ。

 MLアクセラレータがA12比で10倍、そして最新世代のiPhoneで使われるだろうISPを生かしたカメラの画質向上(Macの場合もWebカメラの画質が上がるはずだ)などは、iPad ProやMac向けでも引き継がれるだろう。Neural Engineも同じだ。

 そもそもiOSとほぼ同じiPad OS用アプリはもちろんだが、Apple Silicon搭載MacではiOS用、iPad OS用アプリも動作する。そこで培われてきた機械学習処理やニューラルネットワーク処理を応用したアプリの開発をさらに推し進め、用途を広げたいとAppleは考えているのだろう。

 Neural Engineのコア数が2倍になったのは、それが搭載されるMacでの応用が視野に入っているからなのかもしれない。

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