Office 2021と日本市場 永続とクラウドのはざまで:Windowsフロントライン(1/2 ページ)
Microsoftから、コンシューマー向けの「Office 2021」とエンタープライズ向けの「Office LTSC」の投入がアナウンスされた。ここから見えてくる、サポートライフサイクルや日本での動向を見ていこう。
既報の通り、米Microsoftは2月18日(現地時間)にコンシューマー向けの「Office 2021」とエンタープライズ向けの「Office LTSC」の投入をアナウンスしている。
クラウド製品の「Office 365(Microsoft 365)」をプッシュするMicrosoftだが、今回発表された両製品は非クラウド、つまりローカルまたはオンプレミス状態での利用を想定した、いわゆる「Office Perpetual」と呼ばれる「永続的ライセンス」の製品だ。今回はMicrosoftのOffice Perpetual戦略と、サポート対応について少しまとめたい。
サポートが縮小され続けるOffice Perpetual
まずは、Office Perpetualと直近におけるMicrosoftの製品戦略の話題からだ。
クラウド版のOffice 365はサブスクリプションであり、サブスクリプションを止めると利用ができなくなる一方で、利用期間中はソフトウェアアップデートを含む最新のテクノロジーを利用できるというメリットがある。
一方のOffice Perpetualとは、購入後に追加料金なしでの継続使用のライセンスが与えられるため、契約更新などを考えずに使い続けることが可能だ。“永続的”とはいうものの、実際にはMicrosoftが定義する製品ライフサイクルにのっとった形でのサポートであり、Windows同様に「メインストリームサポートが製品提供から最初の5年、延長(Extended)サポートが次の5年」という形で、基本的に「購入後最大でも10年間」という使用期限が設定されてい“た”。
この過去形の部分が重要で、実際には何らかの理由で利用制限がかかって「実質的な利用がそれより短くなる」ということもある。
例えば、古いOfficeを動作させようとすると、新しいOSのバージョンがサポート対象外であったり、後に意図的に機能制限がかかったりするケースだ。後者について代表的なものがOffice 2016のケースで、Office 2016のメインストリームサポートが終了する2020年10月13日のタイミングで「クラウド(Office 365)で提供されるOutlook、OneDrive for Business、Skype for Businessへのアクセス機能を失う」というアナウンスが行われている。
つまり、これらサービスへの接続機能を継続利用したければ、より新しいOffice Perpetualである「Office 2019」などに早めに乗り換えるか、Office 365の契約に切り替えるかというクラウド優遇策に利用されている。
さらにMicrosoftでは、製品ライフサイクルポリシーそのものを改訂してOffice Perpetualのライセンスを制限しようとしている。例えば2018年2月の発表では、従来の「5+5=10年」の“固定”ライフサイクルを見直し、延長サポート期間を従来の5年から2年に縮小した「5+2=7年」のサポート期間を設定している。
これにともなうOffice 2019の延長サポート終了は2025年10月14日となっており、Office 2016の延長サポート期間終了にそろえた形となっている。
さて、問題はここからだ。Office Perpetualと一口にいっても、2種類の製品が存在する。今回のケースでいえば、1つは冒頭にも挙げたOffice 2021であり、もう1つはOffice LTSCというものだ。
Office 2021がコンシューマーからビジネスまでをカバーする汎用(はんよう)的なライセンスとすれば、Office LTSCは「LTSC:Long Term Servicing Channel」という名称からも分かるように、主にエンタープライズ用途を対象に「長期の固定運用」を主眼とする。
LTSCの定義や用途はMicrosoftのBlogでも解説されているが、Windows 10 LTSCも含めて「最新のテクノロジーやハードウェアとは離れた形でアプリケーションのみ運用」するケースが中心で、ラインワーカーや組み込み向け、あるいは機密保持といった理由でインターネットと隔離されている場合など、特定の用途で効力を発揮する。
Office LTSCに関していえば、基本的な製品構成はOffice 2021と一緒で、Skype for BusinessのみTeamsへの製品統合が理由で別途Download Center経由での手動導入となっている。
今回発表された2種類の新しいOffice Perpetualだが、公式Blogによればサポート期間はともに「メインストリームサポートの5年間のみ」となっている。Office 2021についてはここまで説明した流れからも判断できるように、規定路線として「Office Perpetualのサポート期間は縮小していく」という動きに沿っている。
だがLTSCに関しては用途特定型の製品であり、あらかじめ長期間の連続稼働を想定したものだ。同日に発表された「The next Windows 10 Long Term Servicing Channel(LTSC)release」というタイトルのBlog投稿では、「Windows 10 IoT Enterprise LTSC」では従来通りの10年間サポートが提供されるものの、Office LTSCと並んで「Windows 10 Enterprise LTSC」についても5年間にまでサポート期間が縮小されるとしている。
既存の「Windows 10 Enterprise LTSC 2015/2016/2019」については10年間のサポート期間は継続するが、新しいバージョンについては顧客からのヒアリングも含め「そこまで長期間のサポートは不要」と判断したという。
もともと、Windows 10はSemi-Annual Channel(SAC)のアップデートサイクルに準じている限りは継続サポートされるという、従来のMicrosoftの「5+5=10年間」のサポートライフサイクルからは外れており、Office Perpetualについても「WaaS:Windows as a Service」同様に考えれば最新テクノロジーを取り込むのに「10年サポートでは遅すぎる」と考えてもおかしくはない。
その意味で、一連の製品ライフサイクルポリシー変更は、過去20年ほどMicrosoftの特徴であった「10年サポート」を見直す機会になりつつあるのかもしれない。
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