eスポーツを通じて高校生の新たな可能性を育てる――2021年の活動をNASEF JAPANが発表
日本でも、eスポーツと教育が徐々に距離を縮めつつある。2020年には北米教育eスポーツ連盟の日本本部となるNASEF JAPANが設立された。ここでは、NASEF JAPANが開催した国際教育eスポーツサミットの模様をお届けする。
北米教育eスポーツ連盟(NASEF:North America Scholastic Esports Federation)の日本における団体であるNASEF JAPAN(日本本部)は、3月20日に「NASEF JAPAN国際教育eスポーツサミット2001」(以下、eスポーツサミット)を開催した。同時に2021年度の活動構想発表会も行われており、同団体の目指す方向性や狙いをまとめた。
なお、NASEF JAPAN(日本本部)は2020年11月にNASEFとサードウェーブが提携して設立されたもので、代表には同社でGALLERIAやeスポーツ事業に取り組んできた松原昭博氏が就任している。
eスポーツを通じて自主性を育む
eスポーツサミットで開催されたクロストークでは、NASEF JAPAN代表である松原昭博氏と全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)理事である大浦豊弘氏が登壇し、高校生が活動しているeスポーツの現状について紹介した。
大浦氏は2021年3月に194校が参加した第3回大会が終了したと述べ、ここまで続けられたことについて振り返り、「とにかく大変だった」と語る。「高校に行って先生に聞くと校長がOKをしないとだめ。そして次に校長に会っても教育委員会がOKをしないと厳しい」など、参加校を募るのはかなりの難産だったそうだ。そういった中で、高校野球やサッカー大会などのように、親や教育者からeスポーツを応援してもらわないとダメだと感じたという。
このような経験から、eスポーツをすることが子供たちのために何がプラスになるのかを啓発する必要があると感じ、2019年11月に全国高等学校eスポーツ連盟を立ち上げた。
実際に活動を続けていく中で、eスポーツは子供たちの役に立っていると感じているそうだ。学校内でも部やサークルを立ち上げていくのは大変だが、高校に入ったばかりの1年生がeスポーツの部活を立ち上げたいと考え、校長にまで談判をして作ったという。その頑張りを見て、プログラミングの先生が班を作ってスタートにこぎ着けたというエピソードもあったそうだ。
また、オンラインでプレイしているので誰がどこにいるのか分からない。そこで廊下や食堂に作ったプラカードを掲げて、一緒にやりませんかと伝えてメンバーを集めたこともあるという。こういった活動は誰にもできるわけではない。「そこに至らせるパワーがeスポーツにはある」と大浦氏は強調した。
松原氏は学校におけるeスポーツについて、「子供たちがやりたいNo.1だからeスポーツを普及させている」と語る。しかし親も学校も、一般的にeスポーツについてはいい顔をしないことが多い。実はそれは北米でも同じで、いろいろな活動をしているのがNASEFだった。そこで日本でも同じ取り組みを行いと考えてスタートしたのがNASEF JAPANだ。
松原氏はまた、eスポーツの競技で強くなるのはもちろんだが、大事なのは社会性や英語教育、チームワークを育むことだと強調する。今後はプログラミングについても強化していくとのことで、これを通じて論理的思考やITを学ばせていくことになる。
これだけでなく、高校生には実際に大会の運営にも携わってもらい、配信やポスター作成など、ゲーム以外の事柄を学んでいくことで、今まで気づかなかった才能が花開くかもしれない。キーワードは国際化とICTスキル、この2つを軸に高校生を育成する助けをしたいと語った。
2021年の活動方針も発表
開場ではeスポーツサミットに引き続き、2021年度の活動構想発表会が開催された。今年の取り組みだが、教育産業界や教育現場にeスポーツを活用した教育の可能性を広げ、eスポーツの理解を広げていくとのこと。そこで教育サミット・シンポジウムを春と秋に実施する予定だ。ここでは学術的なことを議論するだけでなく、現役高校生もスピーカーとなって登壇してもらうことを予定している。
高校生向けには、「eスポーツキャンプ」を開催する。非日常の中で、学校の枠を越えて共通の目的を持って取り組むことになる。カリキュラムとしては英語の講習もあるが、ただ座学で進めるのではなく、ハイタッチの練習も行うなど実践的な海外交流のレクチャーとなる。さらにトレーニングや栄養学など、eスポーツにはゲーム以外のことも重要で学ぶ機会も設けられる。
今後NASEF JAPANでは、予選から決勝トーナメントまで行われる「MAJOR」と、カジュアルな対戦会となる「EXTRA」の2つの大会を開催していく。MAJORについては「Fortnite」による対戦が行われる。決勝は6月19日に開催されるが、それ以外の日程については公式サイトやTwitterで告知されることになる。
MAJORについては、NASEF JAPANは司令塔の育成を計画しており、技術だけでなくコーチングもするとのことだ。この他、配信技術を持つエンジニアや実況解説をするメンバーなどのクリエイターの育成も検討されている。
「メンバーシップ」制度の導入も発表され、高校教員向けの「Teacher」と生徒向けの「Students」に加え、学校向けの「School Menbership」が設けられる。School MenbershipにはAとBがあり、Aは既にeスポーツサークルが立ち上がっている学校向け、Bはサークルが設立されていないが、プレイしたいという生徒がいて、先生もサポートを希望している学校向けのものとなる。これらは4月から募集開始となるとのことだ。
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