M1チップと新色で“時代の変化”を感じさせたApple新製品発表会を振り返る:林信行視点で振り返るAppleイベント(4/4 ページ)
Appleの発表会では、さまざまな新製品が登場した。それぞれの製品から見えてくるものを林信行氏が読み解いた。
MacBook Proユーザーをも嫉妬するiPad Proの性能
新型iPad Proは、M1の別の可能性を見せてくれた。これまでどこかPCに対して非力と思われていたタブレットが、今回さまざまな点でノートPCを超えた存在になってしまった。
Thunderbolt(USB 4.0)を搭載し、内蔵ストレージの容量も倍になり、最大2TBまで搭載可能になった新型iPad Proだが、近い性能を誇るMacBook Proに対して勝っているポイントは他にもたくさんある。
タッチ操作が行えるのはもちろんだが、それ以外にディスプレイ性能とカメラ性能、さらにはLiDARの搭載や5G通信搭載オプションというMacBook Proにはない強みがある。
Appleは、ここしばらく4K HDR映像の普及に力を入れており、実際、iPhone 12 Proなどで撮影してみると、その映像の美しさに息をのむことが多いが、MacBook Proのディスプレイは500ニトの輝度や広色域(DCI-P3)といっても従来型の液晶ディスプレイの延長線上にあるもので、HDR本来の美しさを再現できない。これに対してiPad Proの特に12.9インチディスプレイモデルでは、ディスプレイの設計を根本から見直した。
明るい部分を明るくするために、従来よりもたくさんの光源を詰め込む必要があった。そこでAppleは、これまでのディスプレイに採用されていたLEDと比べて120分の1以下のミニLEDを開発し、それを1万個も凝縮してディスプレイに搭載している。
ちなみに、iPad Proの前モデルが搭載しているLEDの数が72個と聞くと、その差に驚く。ミニLEDの採用で高輝度は実現できたが、よりリアルなHDR描写をするためには暗い部分は暗く描かなければならない。Appleは画面を2596のローカルディミングゾーンという領域に分けて、それぞれの領域で明るさを調整できるようにした。これにより明暗の差が大きい映像でも、きれいに描ける100万:1というコントラスト比を実現している。
このコントラスト比は、60万円もするApplenoプロ用ディスプレイ「Pro Display XDR」にも匹敵する性能だ。そこで12.9インチiPad Proのディスプレイは「Liquid Retina XDRディスプレイ」と名付けられている。ちなみに、11インチモデルは最大600ニトでMacBook Proなどに近いLiquid Retinaディスプレイのままだ。
これに合わせてカメラも進化している。背面のカメラは望遠レンズこそないものの、iPhone 12 Proシリーズ相当に進化してSmart HDR3の撮影にも対応した。LiDARとの組み合わせで、暗所でもフォーカススピードが速くなり、AppleがリリースするClupsの新バージョンでは、部屋の床面に沿って光のアニメーションを合成するといった映像効果も利用できるようになっている。
だが、面白いのはコロナ禍でリモートワークが増えたことに合わせて進化したでフロントカメラ(TrueDepthカメラ)だ。視野角122度の超広角カメラが搭載され、iPadを固定した状態で部屋の中を動き回ると、自分が常に中央でズームされるようにトリミングしてビデオ会議の相手に表示してくれる(映像の中に別の人物が入ってくると、2人とも収まるように拡大率を調整する)。
1時間未満の製品発表会は、新たな驚きで満たされていたが、これから発売までの1カ月をかけて、今日発表された製品群が、再びインターネットで話題を呼ぶことになる。
まずは4月23日の金曜日に、紫のiPhoneにAirTagやエルメス製を含むAirTag関連のアクセサリーの受注がスタートする。続いて4月30日にそれらが出荷されると同じ日に、今度は新型iMacとiPad Proの受注が開始となる。出荷は5月後半とまだ先だが、その間には新しいPodcastのアプリもリリースされる。
実際の製品がどのように仕上がっているのか、折を見てお届けしていきたいと思っている。
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