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M1チップと新色で“時代の変化”を感じさせたApple新製品発表会を振り返る林信行視点で振り返るAppleイベント(3/4 ページ)

Appleの発表会では、さまざまな新製品が登場した。それぞれの製品から見えてくるものを林信行氏が読み解いた。

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M1プロセッサによる変化を形で表した新型iMac

Apple iMac
スリムでカラフルなボディーに一新された「24インチiMac」

 では目玉の2製品、プロセッサ以外はどのように進化したのだろう。

 M1の登場に合わせて、製品のデザインが根底から見直されたのが新型新iMacだ。これまではIntel製Coreプロセッサでいくつものチップに分かれていたものが、M1で1つにまとまったこともあり、まずは電子基板が劇的に小さくなった。これまでのInte製プロセッサは高熱になるので、冷却のためのファンなども大型のものが必要で、それが本体背面に膨らみを作っていた。しかし、M1は熱効率もいいので基板の両端に小さなファンを2つつけるだけで済んでしまう(新型iMacの場合)。

Apple iMac
新旧iMacのロジックボードと冷却システム(写真の暗い部分)の大きさ比較。左がIntel製プロセッサを搭載した従来モデル。右がM1プロセッサの新モデル

 この内部構造の結果が、本体を厚さ約11.5mmの平らな板にしてしまうという小型化だ。重量も4.5kg前後と劇的に軽くなっている。コロナ禍で人々がふさぎがちになる空気に抗うように、製品には気分を明るくする6色のカラーバリエーションとシルバーモデルを用意した。この7色というのは虹の色であり、Apple初期のロゴマークの色でもある。

 ただし、iMacやiPhoneなど、全てのApple製品に通じるデザイン哲学を忘れたわけではない。Appleのデザイン哲学とは、デジタル機器では画面に表示される情報が主役だ。製品を使ってソフトウェアとインタラクションしている間は本体の存在感を潜め、逆に使っていない時には物としての美しさで人を魅了する、というものである。

 カラーバリエーションは実際には濃淡の違う2色で彩色されており、画面がある正面には控えめな薄い色を使い、本体の側面や背面には鮮烈な色を使っている。とはいえ、本体が薄いので真横から見た時には本体はほとんど消えてしまいそうだ。

 本体背面には4つのUSB Type-Cポートがあるが(下位モデルを除く)、このうちの2つはThunderbolt対応になっている。一方、省かれたのがネットワークポート(有線LANポート)だ。有線LAN接続ができなくなったわけではなく、何とACアダプターにポートが用意された。

Apple iMac
新型iMacに標準で付属するMagic Keyboard。絵文字キーやスポットライト検索、音声認識のキーに加えて、ビデオ会議などに役立つ「Do Not Disturb(おやすみモード)」キーを実装し、全ての通知をワンタッチでオフにできる。本体をロックするキーもある。他にも、Touch IDを備えたり、テンキー付きキーボードも用意される
Apple iMac
標準で付属するMagic Mouse(上)や別売のMagic Trackpad(下)も7色展開だ
Apple iMac
有線LANポートは、机の下に隠して置く前提のACアダプターに挿す仕様に改められた

 この設計変更のおかげで、有線LANでつないでいる場合も、(USBポートを使っていなければ)本体に挿すケーブルは1本だけで済む、というシンプルな配線を実現している。ちなみに電源コードも編み込み素材を採用し、なんとマグネットでピタッと吸着する仕様になっている。

 ディスプレイは24インチの4.5K解像度(正確には23.5インチで4480×2520ドット)は、500ニトの輝度とDCI-P3と呼ばれる広色域に対応する。

 M1プロセッサの搭載でCPU性能は最大85%、グラフィック性能は最大2倍など性能も大きく進化しているが、それに負けないくらい進化したのが、フロントカメラだ。コロナ禍でオンラインミーティングなどが増えたことを受けて、Mac史上最高となる1080p(ハイビジョン画質)のカメラに進化した。内蔵ISP(画像信号プロセッサ)が1秒間に1兆回の計算をして自動的にホワイトバランスや露出、顔検出、画像融合、ノイズ低減、細部強調、ローカルマッピングといった映像処理をして、暗いところでもきれいに顔を映してくれる。

Apple iMac
M1チップをフルに活用して、ビデオ会議やオンラインミーティングの映像を美しく仕上げてくれる

 この高性能カメラに合わせて、マイクの性能もスタジオ品質に大幅に向上した。3つのマイクアレイでハウリングを抑え、ビームフォーミングという技術で家庭内の他の雑音をカットしてユーザーの声だけを捉えてくれる。

Apple iMac
ディスプレイ下部に内蔵されたスピーカー。Dolby Atmosでのビデオ再生時は空間オーディオに対応する

 一方で既に定評のあったスピーカー品質もさらに向上している。2組のフォースキャンセリングウーファーが、不要な振動を排除して豊かで深みのある低音を響かせ、1組のウーファーごとに1つの高性能ツイーターを搭載することでバランスを調整する。

 そしてスピーカーに関してもう1つすごいのが、Dolby Atomsでビデオを再生する時に空間オーディオで音が再生されることだ。つまり、顔の向きに関わらず映画の出演者の声が、本人が映し出されている場所から聞こえてくる。

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