モデルチェンジの理由は? 第5世代12.9インチiPad Pro用「Magic Keyboard」の秘密を探る:厚みの違いだけではなかった(2/3 ページ)
Apple M1チップを搭載した新型の12.9インチiPad Pro(第5世代)用の専用オプション「Magic Keyboard」。従来モデルとの違いは何か、なぜ第4世代以前のモデルを対象外としたのか探ってみた。
奥行きを取らない独自のフローティング構造
もう1つ、iPad Proが宙に浮くフローティング構造の採用により、奥行きが抑えられているのも利点だ。単純にキーボード手前にトラックパッドを追加するとそのぶん奥行きが増えてしまうが、iPad Proを浮かせる構造ならばそうしたこともなく、奥行きのない場所でも快適にキー入力できる。ただし、そのぶん重心が高くなるのはややマイナスだ。
これ以外でも本製品は、ヒンジ部分にUSB Type-Cポートを搭載し、本製品経由でiPad Proをパススルー充電できるギミックも備える。その一方で、閉じた状態では側面が露出したままになるため、耐衝撃や防水/防じんという点では不利なこと、またiPad Pro本体と合わせるとノートPC並みの重さになることは、構造上のウィークポイントだ。
厚みは実はほとんど変わらず 違うのは「吸着力」
キー入力のチェックは後回しにして、従来モデル、つまり第3〜4世代までの12.9インチiPad Proに対応したMagic Keyboardとの違いについて見ていこう。
まず、本製品と第5世代12.9インチiPad Pro、および第4世代12.9インチiPad Proを組み合わせた場合だが、いずれも違和感なく利用できる。どちらも対応機種に入っているので、これは当然だ。ちなみに本体中央の厚みを測ったところ、前者が実測15.6mm、後者が15.5mmということで、ほんの誤差レベルだ。
では、第3〜4世代のみ対応する従来のMagic Keyboardを、新しい第5世代12.9インチiPadに接続した場合はどうだろうか。結論から言えば、利用そのものには支障はなく、またきちんとカバーを閉じることも可能だ。厚みは確かに増すが、第4世代12.9インチiPadを挟んだ状態で14.9mmなのに対して、第5世代12.9インチiPadでは15.4mmと、0.5mmの差しかない。
これだけ見ると、正直なところ、わざわざモデルチェンジするほどの必要性が感じられない。筆者も最初はそう思った。ところが組み合わせを変えながらチェックしているうちに、マグネットの吸着力に差があることに気づいた。
磁界シートを使って調べたところ、新しい第5世代の12.9インチiPad Proは、以前の第4世代モデルに比べてマグネットの個数が増え、さらに配置も変更されている。今回の新しいMagic Keyboardはこれに合わせて内蔵マグネットが追加されており、より強力にiPad Proに吸着できるようになっている。
もし12.9インチiPad Proだけを新しい第5世代モデルに買い替え、Magic Keyboardが従来のままだと、この吸着力強化の恩恵を受けられない。具体的には以下の写真で、第5世代12.9インチiPad Proで新たに追加された黄緑枠内のマグネットについて、Magic Keyboardでそれを吸着する部分がないため、無駄になってしまうというわけだ。
従来モデルは、置き場所を移動させようとしてうっかりiPad Proの両側に指をかけて引っ張ると、iPad Proがパネル面から外れてキーボード面に落下することがあった。Magic Keyboardのユーザーの多くは、こうしたミスを一度はした経験があるのでないかと思う。iPad Proのような重量物がキーボードの上にダイレクトに落ちるのは、非常によろしくない。
しかし今回のモデルでは吸着力の強化により、そうした事故が起こりにくくなっている。そのため12.9インチiPad Proを第4世代から第5世代に買い替えるならば、Magic Keyboardも併せて買い替えるのがベターだ。今回の12.9インチiPad Proは従来モデル比で約41gも重くなっているが、これがマグネット増分の影響だとすれば、その恩恵を享受しないのはもったいない。
とはいえ実売で4万円強もする製品ゆえ、ためらうのは当然だろう。iPad Pro側に厚みのあるガラスフィルムを貼っているせいで閉じにくくなったとか、あるいは今回試用しているホワイトモデルに興味があるなど、買い替えにつながる別の要因があれば、積極的に検討する、くらいで良いだろう。
ともあれ、厚みの増加への対応はどちらかというと副次的な理由で、マグネットの追加による吸着力アップこそがモデルチェンジの真の目的だったと考えれば、Apple側の意図もナルホドと理解できる。
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