公立小中学校の「学習用端末」の普及率は? 持ち帰れる? OSは何が優勢? 文科省が実態調査の結果(速報値)を公表
文部科学省が、2021年7月末時点における「GIGAスクール構想の実現に向けた端末の利活用等に関する状況」の速報値を公表した。GIGAスクール構想が目指す「1人1台端末」を実現できている自治体は全体の96.1%に達しているが、約1%の自治体は2021年度内の達成が困難な見通しだという。
文部科学省は8月30日、「GIGAスクール構想の実現に向けた端末の利活用等に関する状況(令和3年7月末時点)」の速報値を発表した。速報値の段階ではあるが、全国のほぼ全ての自治体において「学習用端末」の導入が進んだが、ごく一部で導入が遅れている様子が伺える。また、その利活用面では、特に「端末の持ち帰り」について、学校(自治体)による対応差が生じているようだ。
調査対象は「全国の公立小中学校」
今回の調査は、都道府県、市町村、特別区、一部事務組合(※1)が設置する公立の義務教育課程の学校(小学校、中学校、義務教育学校(※2)、中等教育学校(※3)の前期課程、特別支援学校の小学部/中学部)を対象に行っている。
自治体の総数は1812、学校の総数は小学校相当が1万9791校、中学校相当が1万165校となる。
(※1)複数の自治体が特定の業務を共同で実施するために設置する団体で、自治体の1つとみなされる
(※2)小学校と中学校を統合した学校で、第1〜6学年が小学校、第7〜9学年が中学校に相当する
(※3)中学校と高等学校を統合した学校で、前期課程(第1〜3学年)が中学校、後期課程(第4〜6年)が高等学校に相当する
端末の整備率は「96.1%」 2021年度内でも未達見込みの自治体も
GIGAスクール構想では、義務教育課程の学校において「児童/生徒1人に1台の学習用端末」の整備を求めている。今回の速報によると、全国の1812自治体のうち1742自治体(96.1%)がこの要件を満たしたという。
一方で、残りの70自治体(3.9%)は、7月末時点でも1人1台を達成できていない。この中には、特別区や政令指定都市も含まれている。
端末の整備が遅れている主な理由としては「端末の需給状況の逼迫(ひっぱく)」や「必要な台数を整備する予算の確保ができなかった」ことなどが上げられている。GIGAスクール構想の前に策定された「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018〜2022年度)」に基づいて端末の配備計画を進めていたために、目標未達となった自治体もあるようだ。
なお、整備が遅れている70自治体のうち、25自治体は2021年内に、30自治体は2021年度内(2022年3月まで)に整備を完了する見込みだという。残りの15自治体は、2022年4月以降に整備を完了する予定を立てている。
端末の普及率ほど進んでいない利活用
学習用端末が1人1台に行き渡ったとしても、その利活用が進まなければ端末はただの「板」「箱」である。
今回の速報によると、公立小学校のうち96.1%、公立中学校のうち96.5%は何らかの形で学習用端末の利活用を開始しているという。もう少し具体的に見ると、公立小学校の84.2%、公立の中学校の91.0%は全学年で、公立小学校の11.9%、公立中学校の5.5%は一部の学年で端末の利活用が進んでいるようだ。
一方、公立小学校のうち3.9%、公立中学校のうち3.5%が端末の利活用を始めていない。ただし、これらの学校のほとんどは、2021年内には利活用を開始するとしている。2021年度内には、ほぼ全ての公立小中学校で何らかの形で端末の利活用が始まる見通しだ。
「端末持ち帰り」はこれから OSは「Chrome OS」がトップシェア
先日の記事にもあるように、学習用端末の持ち帰りは「仕組み」さえしっかり工夫すれば児童/生徒の学習に大きなメリットがある。ただ、その事例のようにうまく機能している事例はまれで、端末の持ち帰りが実現してない学校も少なくない。
今回の速報によると、学習用端末の持ち帰りを実施している公立小中学校は、平常時で25.3%、緊急時で64.3%となった。公立小中学校の約4分の3が平常時の持ち帰りを実現できていないが、51.0%の学校が持ち帰り実現に向けた準備を進めているとのことで、将来的には公立小中学校の4分の3において学習用端末を持ち帰れるようになる見通しだ。それでも、公立小中学校の23.7%は平常時における学習用端末の持ち帰りを実施する予定がないという。
なお、今回の調査では参考として「端末の破損/紛失時の対応状況」と「整備済み端末のOS比率」も掲載されている。
2021年4月1日以降の破損/紛失台数は1万104台(整備済み台数の0.2%)となったそうだ。自治体ごとに破損/紛失時の対応を聞いた所、27.6%が保守契約を締結した事業者を通した対応を、72.0%が予備機を活用した対応を行うと答えたという。
学習用端末のOSのトップシェアはChrome OS(40.1%)だった。その後は、Windows(30.4%)、iOS(iPadOS、29.0%)と続く。Chrome OSのシェアが高いことが伺える。なお、わずか0.5%だが、macOSやAndroidを導入しているケースもあるようだ。
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