Apple秋の新製品に共通する“掘り下げると深い”魅力:iPadにApple WatchからiPhone 13まで(1/4 ページ)
Appleから、iPhone 13シリーズを筆頭に新型iPadとiPad mini、さらにApple Watch Series 7と秋の新製品が相次いで発表された。それらに隠された真の魅力を、林信行氏がウオッチした。
iPhoneを中心に、Apple製品が一気に刷新される同社秋の製品発表イベントが開かれた。今回もiPhone 13やiPhone 13 Pro、Apple Watch Series 7、さらには第9世代iPadとiPad miniなど魅力いっぱいの新製品が多数発表された。発表の主役がiPhoneであることには変わりないが、iPad miniと発売が少し遅くなるApple Watchは魅力が大幅に増していた。一方、iPhoneの発表に関しては少し潮目の変化を感じる部分もあった。
価格と実績で教育市場を魅了する新iPad 全面刷新のiPad mini
今回、新たに発表されたハードウェアの新製品は全部で7つある。
10.2型の液晶を搭載したiPadの新型は、A13 Bionicのプロセッサ、容量が2倍になった64GBのストレージ、カメラの画角に写っている人を追いかけながら、自動的にズームするセンターフレーム機能に対応した超広角のフロントカメラを搭載する。それでいて、価格がWi-Fiモデルで税込み3万9800円〜、Wi-Fi+Cellularモデルで5万6800円〜と、かなり手頃になっている(9月24日から出荷開始)。
圧倒的に手頃な価格設定や、既に世界中の学校で採用され多くのアクセサリーなどが発売されているiPadの標準の形を踏襲しているのは、学校での導入など教育市場を意識してのことだろう。
性能も、同様に教育市場を狙ったChromebookの最も売れているモデルより最大3倍、Androidの最も売れているタブレットより最大6倍高速だという。2世代前のiPhone 11シリーズが搭載していたプロセッサではあるが、これは最新OSの全機能に余裕で対応する性能で、最新iOS/iPadOSなら写真中のアルファベット文字を認識する機能などにも対応している。
ちなみに、iPad Proで搭載され好評を博していたセンターフレーム機能は、AppleのFaceTimeはもちろん、Zoom、BlueJeansやWebExといった他社のビデオ会議システムにも対応する。さらにはDoubleTake、Explain Everything、TikTokといったアプリでの動画撮影もサポートしている。
iPad関連で最大の発表は、フルモデルチェンジとなったiPad miniだ。手のひらにギリギリおさまる8.3型のサイズに最新の機能と魅力が凝縮された形だ。
業界を見渡すと、ミニサイズのタブレットは画面サイズに合わせて値段を落とし、それに伴って仕様もダウンした廉価版製品であることが多い。しかし、iPad miniのアプローチが全く逆であることは、5万9800円という価格にも表れている。画面サイズが大きい前述のiPadよりも高価なのだ。
iPad Air、iPad Proなどに近いサイズでの選択肢が多い標準iPadでは、教育市場での導入のしやすさや製品の普及を第一に、価格を優先した印象だった。
これに対してiPad miniでは、この小ささをアドバンテージとして生かせるユーザーをターゲットに、そこに詰め込める妥協しない最新の性能と魅力を凝縮した印象がある。
4色のカラーバリエーションを選べる楽しさはもちろんだが、パフォーマンスの点ではiPhoneと同じA15 Bionicのプロセッサを搭載し、Wi-Fi+Celluarモデルの場合は5G通信にも対応する。電源ボタンと一体化したTouch IDの指紋認証機能を内蔵し、本体側面にピタッと吸着するApple Pencil 2で利便性を向上させ、カメラも大きく進化させた。
Apple Pencil 2対応は、結果としてiPad miniに2つの変化をもたらした。1つはPencilを吸着させるフラットエッジ(平ら)な側面になったこと、そしてもう1つはこれまでその位置にあったボリューム(音量)ボタンの移動だ。ボリュームボタンは、仕様変更に合わせて電源ボタンと同じ側面(縦長に構えた時に上にくる位置)になった。
ただし、ホームボタンがなくなった時点で実質的にiPadは“正しい向き”がなくなっており、センサーで構えた向きを認識して画面を回転させるだけでなく、4つのスピーカーからの音が正しく左右に分離されるようになっているのと同様、ボリュームボタンも構えた向きに対して上側が音量アップ、下側が音量ダウンに、ボタンが左右に並ぶ際には右側がボリュームアップになる仕様だ。
カメラも進化している。背面には1200万画素対応で4Kビデオも撮影できるf1.8の明るい広角レンズを搭載する。フロントカメラが、同じく1200万画素の超広角カメラに進化させ、センターフレームもサポートした。
iPad miniに関しては、もう1つ重要な変更がある。本体の端子が、Lightning端子から幅広い周辺機器を接続できるUSB Type-Cに変更されたことだ。これにより、デジタルカメラなどを直接つないで写真が取り込めるようになる。発表会でiPadに接続できる特徴的なUSB Type-C機器として、携帯型の超音波検査機「Butterfly」を、公式ホームページではポータブルシンセサイザーの「OP-Z」を紹介している。
Butterflyを手がけるButterfly Networkは、機動性が高く高速な通信も行える5Gにも対応したiPad miniのおかげで、超音波センサーを訪問診察の際にも利用しやすくなったと期待を膨らませているという。
誕生時から「片手で(ギリギリ)持てる」を製品のコンセプトにしてきたiPad miniは、常に最大サイズのiPhoneと比較されることになるが、iPhoneの端子はLightningのままだ。
端子の選び方にAppleの製品としての位置付けの違いが感じられる。iPhoneはそれ自体がデジタルカメラとして使われることはあるが、デジタルカメラをつなげて写真を取り込むことはない末端の機器だ(一部、Lightning端子に接続する特殊なカメラはあるが少数派だ)。
一方でiPadシリーズは(価格優先の標準モデルを除くと)、幅広い周辺機器との連携も視野に入れたPCの代替となる位置付けだ。こうした機器連携は、超音波撮影や演奏中に突然、電話がかかってきて作業が中断する可能性があるiPhoneよりも、その可能性が小さいiPadという使い分けを想定しているのではなかろうか。
第9世代のiPadは、教育市場には最も響く価格という要素を圧倒的にアピールした製品に仕上げているかと思えば、逆にiPad miniは「小さいiPadならではの新しい活用」を徹底的に模索。2021年秋のiPad新製品は、かなり戦略的な進化を果たしている。
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