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人気の秘密は「何でも快適にできる魔法のガラス板」 Appleが語る新型iPadとiPad miniの変わらない魅力iPad担当者独占インタビュー(1/2 ページ)

発売が始まった新型iPadとiPad miniについて、Apple幹部がインタビューに答えた。

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 2010年の登場から11年目を迎えたiPadだが、iPadの魅力をさらに光らせるiPadOS 15の登場で新たな転機を迎えようとしている。今回、製品を担当するMac and iPad Product Marketing担当副社長トーマス・ボーガー氏(Thomas Boger)とPlatform Product Marketing担当のステファン・トンナ(Stephen Tonna)氏の2人を独占インタビューする機会を得た。

やりたいことが何でもできる魔法のガラス板

 「病院では、医師が白衣のポケットにもスポッと収めてそこかしこに持ち運び、空の上ではわずかなスペースも大事な飛行機のコクピットでパイロットが活用する。海の上では船長も。さらに現場で顧客と向き合う補修/点検サービスの技術者や不動産業者、建築設計士たちも活用し、零細企業の社長やデザイナーの役にも立つ。新しいiPad miniが活躍できる場面はたくさんあると思います。なぜなら、こんなに小さい製品ではあるけれど、正真正銘のiPadだからです」とボーガー氏は語る。

iPad mini Thomas Boger
2018年のイベントで登壇したトーマス・ボーガー氏

 iPadは、とにかく活用の幅が広いデバイスだというボーガー副社長だが、iPad miniの携帯性に優れたサイズにより、さらにその幅が広がると確信しているという。

 Appleがスマートフォンとパソコンの中間の領域に、新カテゴリー製品の可能性があることを感じてiPadを発表したのは11年前だ。最初は、Apple自身も電子書籍リーダーや動画ビューアー以外の活用方法を思い浮かべられずにいた。しかし、実際に製品が発売されると、そのシンプルな形ゆえに多くの人にインスピレーションを与え、施設の受付や会計からスポーツのトレーニング、デパートや電車の駅の案内係など、今では外出先でも見かけることも多い。

iPad Jobs
2010年1月のイベントで「iPad」を紹介するスティーブ・ジョブズCEO(当時)

 ボーガー氏は初代iPad登場からの11年をどのように見ているのだろうか。

 「iPadは日々の暮らしの中で、ますます重要な存在になってきていると感じています」とボーガー氏。「朝、1日のスタートにiPadを見ることで幕を切り、日中はiPadを使ってクリエイティブなもの、事務的なものに関わらず仕事をしたり、人によっては勉強をしたりと活用されています。一方でネットを見たり、ソーシャルメディアをチェックしたり、ゲームをしたりとプライベートにも活用したり……iPadそのものの活用は非常に幅が広いですが、それは私たち自身も製品の魅力が用途の幅広さだと認識しており、さらに用途が広がるように意識して製品をアップデートしてきたことがあると思います」

 「例えば、Apple PencilやSmart Keboardのようなアクセサリーも製品の用途を広げました。2021年に追加したUSB Type-CやThunderbolt端子、M1プロセッサや5G対応なども、全てiPadの用途をさらに押し広げるべく加えた変更です」

 「iPadは、やりたいことが何でもできる魔法のガラス板です。これは11年前に製品が登場した時以来変わらない、我々の同製品への認識であるし、実際、これこそがiPadの全てだと思っています。アップデートの積み重ねで、今、この言葉は10年前よりもさらに真実味を帯びていると思います」という。

第9世代iPad
第1世代Apple PencilやSmart Keboardにも対応した第9世代iPad

2つの新iPadで異なるアプローチ

 モデルチェンジを重ねることで、さらに用途が広がったというiPad。確かにiPad miniの携帯性は、製品に新しい使い方のインスピレーションを与えてくれる。

 ボーガー氏もiPad miniでは、ただ製品を小さくしたのではなく、小さいからこそ広がる可能性を重視した製品だという。他社が出している小型タブレットの多くは「小さい」=「安い」という発想で、性能などが落ちる設計のものが多い。

 これに対して、Appleが今回のiPad miniで取ったのは全く逆のアプローチで、「小さいサイズに可能な限りの能力を凝縮する」というものだった。

 「iPadをiPadたらしめている全ての要素を持ちながらも小さくて携帯性に優れる」

 このことがiPad miniをさらに汎用(はんよう)性の高い製品にするのだという。

iPad mini
こちらは第2世代Apple Pencilに対応した第6世代iPad mini

 では、一方で、見た目がこれまでと変わらない第9世代のiPadはどうか。この製品はiPad miniとは、全く別の方法で製品の活用の幅を広げてくれるとボーガー氏は語る。優れたコストパフォーマンスのことだ。

 「(10.2インチという標準サイズの)iPadは明らかに一番人気が高いiPadです」とボーガー氏。実際、2020年発表された第8世代のiPadも、人気の高さゆえに日本では売り切れの状態が続いていた。こちらの製品も、人気で使っている人が多いだけに多様な使い方が生まれているという。

 そうした新しいニーズに対応すべく、第9世代では最新のA13プロセッサを搭載し「CPUやGPU処理、機械学習処理などあらゆる処理が20%ほど高速に」なったとうたう。もともとiPadは、処理の遅さを感じることが少ないデバイスだが、性能が高くなることで、よりやれること、やりたいことが増えるはずだ。最低のストレージ容量が64GBに引き上げられた(以前は32GB)ことも同様だろう。

 これに加えて環境光になじむTrue Toneを採用したり、第1世代のApple PencilやSmart Keyboardをサポートしたりとトレンドに合わせた進化も施されているが、ボーガー氏は、中でもセンターフレーム機能に対応した超広角カメラの採用は大きな変化だという。

新装備の広角フロントカメラを使ったところ。かなり広範囲に映り、フレームの移動もスムーズなのが分かる

 「iPad Proで既に搭載済みの機能だが大好評の機能」とのことで、「Pro向けとして開発したこの機能を、こんなにも早く一般向けのiPadにまで広げられたことを誇りに思っています」と付け加えた。

 第9世代iPadは、価格重視の一般ユーザーはもちろん、製品の大量導入を考えている組織や教育機関でも重要な製品だ。「特に昨今はヘルスケア系の機関でのiPadの活用が広がっています」とボーガー氏は語る。

 第9世代iPadはLightning端子だけでなく、製品の形状も第7/第8世代のiPadと同じなので、既に市場に出回っている豊富なアクセサリー、あるいはユーザーが前世代のiPadのために自作した取り付け器具などもそのまま使うことができる。

 一方で性能が大きく向上しているのは「常にiPadの新しい活用が広がり続けており、より多くの活用方法に対応するためにも性能は常に更新し続けていく必要があるからだ」という。

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