もっと大きなことをしたい 独自性は堅持する――FCCL大隈社長インタビュー(4/4 ページ)
2021年4月、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の社長が交代した。FCCLの発足以来社長を務めてきた齋藤邦彰氏からバトンを受け継いだのは、Lenovo出身の大隈健史氏だ。PC USERでは、大隈社長にインタビューする機会を得た。その模様をお伝えする。
Web直販のカスタマイズは「難しい」?
―― 御社の「富士通WEB MART」(Web直販)では、量販店モデルには用意されていない構成のモデルが用意されていることが魅力です。ただ、レノボを含む外資系メーカーと比べると、カスタマイズできる要素が少ないようにも思います。もう少し、カスタマイズできる要素を増やせないものでしょうか。台湾や香港で米国英語(US)キーボードを搭載するLIFEBOOKを見る度に、直販限定でもいいから日本でも売ってほしいと思ってしまい……。
大隈社長 これは需給のバランスを考慮しないといけないので、なかなか難しいですね。
外資系のメーカーは、カスタマイズメニューを増やしても、グローバルレベルで需給調整を行いやすい状況にあります。一方で、私たちは(基本的に)日本国内に閉じているので、オプションを増やして極端に不人気な構成が出てきた場合に、どこかで利益を確保するための“調整”を入れざるを得なくなります。
USキーボードも含め、お客さまからカスタマイズに関する要望は多数頂いております。全ての声に応えるのは難しいですが、できる範囲で選べるオプションを充実させたいと考えています。
―― 齋藤会長は以前、PC周辺機器の販売を強化する方針を表明しました。その一部は販売に向けた動きを見せていますが(関連記事)、その進捗(しんちょく)はいかがでしょうか。
大隈社長 社名にもある通り、私たちは「クライアントコンピューティング」の世界で生きています。これからもPCやタブレットの提供価値を高めていくことは当然なのですが、長期的な視点に立つと、これらの需要が爆発的に伸びることは考えづらいのも事実です。そうなるとビジネス、直接的にいえば収益源の多様化を絶えず検討しなくてはなりません。
その流れにおいて、(現在主力としている)PCに近しい領域にある周辺機器は拡充したいと考えています。富士通ブランドで販売できるものがないか、Lenovoはもちろん、外部のOEM/ODMとも話を継続して進めています。
富士通ブランドPCの40周年記念としてクラウドファンディングサイトで販売されている「LIFEBOOK UH Keyboard」は周辺機器の販売強化を占う一品でもある。写真にあるDark SilverとGarnet Redは、既に製品化が決まっている
半導体不足は大丈夫?
―― 昨今は資材の不足、とりわけ半導体の不足によってPCや周辺機器の発売が遅れたり、納期が極端に長くなったりする事例も見受けられます。FCCLとして、何らかの対策はしているのでしょうか。
大隈社長 大枠の話をすると、資材の供給がタイトである状況は続いています。ただ、私たちは他社とは異なるポイントが2つあります。
1つは、私たちがLenovoグループの一員であるということです。グループとして世界中から集めてきた資材の一部をFCCLが利用できます。資材の調達に苦戦する時期もありましたが、不足傾向続く中でも(PC生産における)主要コンポーネントの供給状況は改善しています。
もう1つは、FCCLが独自の資材調達部隊を持っていることです。ドイツ、台湾、日本(川崎/島根)にいる担当者が相互に情報交換をしつつ、現地あるいは近隣国のサプライヤーに直接連絡を取って調達したり、場合によってはオープンマーケットから調達したりしています。
これらで資材不足が完全に解消しているわけではありませんし、一部のお客さまにご迷惑をおかけしていることも重々承知していますが、相対的には(他社よりも)良い状況にあると考えています。
PCを欲しいと思っているお客さまにPCを供給できないことは、私たちにとって機会損失です。ビジネスとして売り上げや利益が立たないというのはもちろんですが、PC業界全体にとっても良いことではありません。OSやCPUのベンダーと手を取り合って、立ち向かっていきたいと思います。
これからのFCCLの姿は?
―― これから、FCCLをどのような会社にしていきたいですか。
大隈社長 今まで話してきたことの「まとめ」となりそうですが、私はFCCLに入ってから社内外に3つのことを言い続けています。
1つ目はFCCLの独自性を堅持、発展させていくということです。これがないと、会社としての存在意義を失ってしまいます。「人に寄り添う」というコンセプトを含めた技術力は確実に守ります。
2つ目はLenovoグループ内での存在感を高めることです。先ほども話した通り、ここは余地がかなりあると考えています。Lenovoグループのメンバーと英語で会話できるメンバーが少ないのも事実なので、“いいとこ取り”を加速する観点でも、人事面を含めて体制を整えていきたいと思います。
3つ目はグローバル展開による成長です。PC業界の今までのやり方、売り切り型のビジネスに依存しすぎると、中長期的にはビジネス規模を縮小せざるを得ません。それは(全力で)避けなければいけません。日本だけではなく、海外の市場にも目を向ける必要もあります。
先ほどご指摘いただいた通り、FCCLは香港や台湾でもPCを販売していますが、今後はインドでも本格展開します。日本に閉じずに、市場を広げる取り組みを進めていきます。
さらに、日本を含めてハードウェアの売り切りにとどまらない事業も展開します。
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