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新「MacBook Pro」で一層際立つApple独自チップの価値 M1 Pro・Maxだけではない全面アップデートも注目本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/4 ページ)

Apple独自の新チップ「M1 Pro」「M1 Max」を搭載した14インチと16インチの新しい「MacBook Pro」が登場。発表内容から、見た目も中身も大きく変わった新モデルを掘り下げていく。

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TDP枠でみる新型MacBook Proの特異性

 M1 Proには14コアと16コアのGPU、M1 Maxには24コアと32コアのGPUがぞれぞれ動作する異なったバージョンが提供される。基本設計は同一ではあるものの、細かな違いは多いように見受けられる。提供されているダイの写真を見る限り、レイアウトや配線が少々異なっており、各パートを接続するファブリックの設計が大きく違うからだ。

 一方でCPUやGPU、Neural Engineなど、部分的なプロセッサ回路の世代はA14 Bionicを踏襲していたM1と共通しているようだ。というのも、Neural Engineの演算性能が毎秒11兆回と発表されており、これがM1やA14 Bionicと同じ値のためである。

M1・M1 Pro・M1 Max
M1、M1 Pro、M1 Maxのサイズ比較。トランジスタ数はそれぞれ160億個、337億個、570億個だ

 メモリ帯域幅がM1 Proは毎秒200GB、M1 Maxは毎秒400GBという違いがあるのも、共有メモリのチャンネル数の違いだろう。DRAMとの接続がM1 Proは2チャンネル、M1 Maxは4チャンネルで、アクセスできる帯域がそれぞれ毎秒200GB、毎秒400GBということだ。

 M1はシングルチャンネルでメモリ容量が16Gバイトであったため、搭載できるDRAMの容量がM1 Proは最大32GB、M1 Maxは64GBというのもこれで計算が合う。

M1 Pro
M1 Proはメモリ帯域幅が毎秒200GB、メモリ容量が最大32GB
M1 Max
M1 Maxはメモリ帯域幅が毎秒400GB、メモリ容量が最大64GB

 SoC全体のファブリックネットワークがどのように作られているのかは興味深いが、さらにAppleが提供している模式図を見ていると、単にCPU、GPUだけではなく、さまざまな要素が強化されているようだ。

 M1 ProとM1 MaxのCPU、Neural Engineは共通で、GPUだけが違うのだとしたら、メモリインタフェースが2倍だったとしても、トランジスタ数が2倍になることはないが、実際には2.5倍になっており、模式図上でも増加している部分が随分ある。メディア処理用の回路やディスプレイのインタフェースなどと思われるが、これについては取材の中で明らかにしていきたい。

 しかし、それよりも特異性を感じるのは、10W程度の熱設計電力(TDP)枠でほぼ性能が引き出せ、連続した負荷でも15Wあれば十分だったM1に対して、Appleが公開したグラフを見る限り、M1 Pro、M1 Maxともに従来の13インチMacBook Pro同等の28W TDPでCPUのピーク性能を引き出せ、60W以上のTDP設計が求められるIntel製8コアチップよりも高速になる。同じ消費電力ならば1.7倍だ。

M1 Pro・M1 Max
M1 Pro・M1 Maxの最大10コアCPU(高性能8コア+高効率2コア)は、Intel製8コアチップと比較して、同じ電力レベルで最大1.7倍高速であり、最大70%少ない電力でピーク性能を達成できるとする

 この特徴はGPU性能、特にディスクリートGPUとの比較ではさらに際立つ。高い消費電力の高性能GPUと別途搭載が必要な広帯域のグラフィックスメモリが必要なのだから当然だが、150Wクラスのポータブル性が皆無なゲーミング用のハイエンドノートPCと同等のGPU性能をM1 Maxでは50W程度のTDP枠で引き出せる。

M1 Pro・M1 Max
M1 Maxは最大32コアのGPUを搭載し、100WクラスのハイスペックノートPCと同等のGPU性能を最大40%少ない電力で引き出せるとする
M1 Pro・M1 Max
さらに150Wクラスの大型ノートPCと比較して、M1 Maxは同等のGPU性能を最大100W少ない電力で引き出せるとする

 ということは、14インチMacBook ProではM1 Maxの性能を100%引き出せないのではないか、という疑いも出てくるが、一方で従来の冷却システムに比べ、より低い騒音レベルで50%の空気流量増加とアナウンスされており、14インチMacBook Proでも十分な性能が引き出せそうだ。そこは実機で試してみることにしよう。

MacBook Pro
前世代のモデルより低速なファン速度で50%多くの空気を流せる新冷却システム

 また、ディスクリートGPUでは当然発生するグラフィックスメモリとメインメモリの間のメモリ転送がM1 ProとM1 Maxではなくなるため、こうしたスペック上の比較以上にエネルギー効率に差が出てくるかもしれない。

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