「学校内ネットワーク」の問題をどう解決する? 「GIGAスクール構想」発展に向けたNECの取り組み(前編)(4/4 ページ)
文部科学省の「GIGAスクール構想」が本格的に始まって1年半が経過した。2021年4月までに端末とネットワークはおおむね整備された……が、ネットワーク回りに関する課題は現在も解消しきれていない。NECはこの課題にどう取り組んできたのだろうか。担当者から話を聞いた。
NECはネットワーク環境の課題をどう解決する?
このように、学校におけるネットワーク構築には気を付けるべきポイントが多い。NECは、それぞれのポイントにおいて解決策をしっかり用意しているという。
まず、無線LANアクセスポイントについてだが、先ほども触れた通り、家庭用Wi-Fiルーターでは代用が難しい。「なら法人向け(業務用)なら何でも大丈夫なの?」かと聞かれたら、実はそうとも限らないという。
GIGAスクール構想が始まる前に、NECは法人向け無線LANアクセスポイントをかき集めて、40人の同時接続に耐えられるかどうか検証したという。自社のものはもちろん、他社のものも一緒に検証した結果、満足の行くパフォーマンスを発揮できるアクセスポイントは“一握り”しかなかった。
そこで同社は、学校への導入を想定した高性能アクセスポイント「UNIVERGE QX-W1130」を開発した。QX-W1130は最新のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)規格の無線LANに対応した他、最大接続クライアント数を従来モデルの約2倍となる1536台とした。端末との通信を自律的に最適化する「RF最適化エンジン」も搭載し、多数接続時も通信品質を維持しやすくなったという。日本の環境に合わせて、動作環境気温を−10〜50度、環境湿度を10〜90%としている。
ルーター回りについては、先述の通りポート転送時の最大セッション数がボトルネックとなりうる。そこでNECは、業務用VPNルーター「UNIVERGE IXシリーズ」において最大25万セッションまで処理できるようにした。これは他社の同等品と比べて2〜6倍の性能だという。
UNIVERGE IXシリーズではデータの転送(通信)パフォーマンスの高さにもこだわっており、「UNIVERGE IX2310」では、最大10Gbpsで通信できる「10GBASE-T」にも対応している。
ネット回線については、集約型を取る自治体が意外と多い。そこで、NECではローカルブレイクアウトに対応するネットワークを構築することを推奨している。帯域やセッション数をたくさん消費するクラウドサービスの通信だけでも直接通信に切り替えれば、センターにおける通信負荷は大幅に軽減される。
先述のUNIVERGE IXシリーズはローカルブレイクアウトにも対応しており、やりとりする通信の内容に応じて「直接接続のインターネット回線」と「自治体の回線」を振り分けてくれる。同社子会社であるNECプラットフォームズが提供しているクラウドサービス「NetMeister」を活用すれば、複数の拠点(学校)におけるローカルブレイクアウトの設定を一括して行うことも可能だ。
ちなみに、NetMeisterでは、ルーターの保守/管理から設定までをクラウド上から行える。学校ごとのネットワーク構成や端末の状況を可視化することもできる。
各学校に独立したインターネット回線を敷設して、負荷の大きい通信をオフロードさせることで集約ネットワークの負荷は大幅に削減できる。UNIVERGE IXシリーズならNetMeisterを使えば複数拠点に対して同じ設定を配信(適用)できるので、設定にかかる手間を削減できる
後編では、公立学校で導入が進んだ「電子黒板」や「大型ディスプレイ」に関する動向についてお伝えする。楽しみにしていてほしい。
関連記事
- 「GIGAスクール構想」の推進に向けて――NECが教育ICTプラットフォームを強化
NECが教育ICTに関する説明会を開催した。同社が展開する教育クラウドサービスやハードウェア製品に関する近況や新展開が紹介された中で、興味深い話も飛び出した。 - 「プログラミング教育」が必修化されたのはなぜ? それを支える「GIGAスクール構想」とは?
2020年度は小学校、2021年度は中学校で新しい「学習指導要領」が完全実施される。特に小学校の課程では「プログラミング教育」が導入されるなど、非常に大きな変化がもたらされる。必須化の背景はどこにあるのか、そしてそれを支える「GIGAスクール構想」とは何なのか。 - 「GIGAスクール構想」の成功には何が必要? 先進事例から考えてみる
文部科学省の「GIGAスクール構想」の本格スタートから1年経過した2021年。実際の教育現場ではどのような動きがあるのでしょうか。1年に1回開催される教育関連の総合見本市「EDIX 東京」で行われたパネルディスカッションの様子を見ながら考察してみました。 - 公立小中学校の「学習用端末」の普及率は? 持ち帰れる? OSは何が優勢? 文科省が実態調査の結果(速報値)を公表
文部科学省が、2021年7月末時点における「GIGAスクール構想の実現に向けた端末の利活用等に関する状況」の速報値を公表した。GIGAスクール構想が目指す「1人1台端末」を実現できている自治体は全体の96.1%に達しているが、約1%の自治体は2021年度内の達成が困難な見通しだという。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.