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インタビュー

電子黒板や大型ディスプレイは活用できている? 「GIGAスクール構想」発展に向けたNECの取り組み(後編)(1/3 ページ)

文部科学省はここ数年、学校の普通教室への電子黒板配備を推進してきた。2019年度にはタッチ操作に対応しない大型ディスプレイまたはプロジェクターの導入も容認した結果、3者をまとめた「大型提示装置」の普及率は一気に上がり、2022年度には100%を達成できそうである。この大型提示装置について、NECから最近の状況と課題を伺った。

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 NECは以前から、教育市場向けのICT機器を開発してきた。とりわけ、文部科学省が「GIGAスクール構想」を発表した後は、その狙いに合致する製品の開発や導入を加速している。

 筆者は、最近のNECの教育市場に対する取り組みについて、取材する機会に恵まれた。この記事では、電子黒板、大型ディスプレイやプロジェクターといった「大型提示装置」に関する話をお伝えする。

大型提示装置も「1クラス1台」が目標

宮越エキスパート
取材に応じてくださったNECの宮越英幸エキスパート

 大型提示装置に関する話は、プラットフォームソリューション事業部 映像商品企画グループの宮越英幸エキスパートと、仲山裕樹主任の2人から伺った。

 GIGAスクール構想を推進する以前から、文部科学省では全ての普通教室(普段の授業で使う教室)に電子黒板を整備する計画を掲げていた。この計画は2019年度に若干修正され、大型ディスプレイやプロジェクターを含む大型提示装置の整備率100%を目指す計画となった。

 そのような事情もあり、「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」における「電子黒板普及率」(2018年度まで)と「大型提示装置整備率」(2019年度以降)に数値上の連続性はない。2019年度以降の数値に目を向けると、全国の公立学校(※1)における大型提示装置の普及率は以下のように推移している。

  • 2019年3月:52.2%
  • 2020年3月:60.0%
  • 2021年3月(暫定値):70.3%

(※1)小学校、中学校、義務教育学校(小学校と中学校を統合した学校)、高等学校、中等教育学校(中学校と高等学校を統合した学校)、特別支援学校

 整備率100%、言い換えれば「1クラス1台」という状況にはまだ遠いが、着実に普及が進んでいることは確かである。

普及率
公立学校における電子黒板(2018年度まで)と大型提示装置(2019年度以降)の普及率の推移。2021年3月時点での大型提示装置の普及率は暫定値で70.3%となっている(文部科学省資料より、PDF形式)

 NECによると、昨今の大型提示装置の導入(更新)事例では、特に義務教育課程(※2)ではGIGAスクール構想により「1人1台の学習用端末」がおおむね普及し、児童/生徒が手元の端末で作業できるようになったことから、電子教科書を始めとする電子教材を大きく表示できればいいという“画面の大きさ”に焦点を絞った調達が行われる傾向にあるという。言い換えれば、児童/生徒の注目を集めたい場面で使えればいいと考える自治体や学校が増えている。

(※2)小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程(第1〜3学年)、特別支援学校の小学部/中学部

 大型提示装置の補助金については、GIGAスクール構想に基づく補助金ではなく、それ以前から行われている地方財政措置の1つ「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」で整備が進められている。この予算措置は2022年度(2023年3月)が期限となっていることもあり、学習用端末と比べるとゆっくりと導入を進める自治体もある。

 また、大型提示装置は教室での集合授業で使うものと思われがちだが、最近ではオンライン授業をする際に、カメラを通して伝えられる児童/生徒全員の表情をしっかりと見るために、複数台使うというニーズも高まっているとのことだ。

GIGAスクール構想
GIGAスクール構想でも、授業において大型提示装置を利用することが前提となっている。ただ、措置予算が異なることもあり、結果的に学習用端末の整備が先行した事例もある(NEC提供資料)

 自治体や学校ごとに異なるニーズに応えるべく、NECではさまざまな大型掲示装置を用意しているという。さらに、ネットワークを介して大型提示装置を管理できるツール「NaViSet Administrator 2」も無料で提供しており、リモートで定時になったらプロジェクターの電源をオフにするといった運用も可能だ。

フルラインアップ
NECでは電子黒板、大型ディスプレイ、プロジェクターを取りそろえている(NEC提供資料)
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