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インタビュー

電子黒板や大型ディスプレイは活用できている? 「GIGAスクール構想」発展に向けたNECの取り組み(後編)(2/3 ページ)

文部科学省はここ数年、学校の普通教室への電子黒板配備を推進してきた。2019年度にはタッチ操作に対応しない大型ディスプレイまたはプロジェクターの導入も容認した結果、3者をまとめた「大型提示装置」の普及率は一気に上がり、2022年度には100%を達成できそうである。この大型提示装置について、NECから最近の状況と課題を伺った。

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デジタル教科書を投影するなら「電子黒板」がお勧め?

仲山主任
インタビューに応じてくださったNECの仲山裕樹主任

 最近は“大きく表示する”ことに焦点を絞った調達を考える自治体や学校が増えている。多様なニーズに応えるため、NECはいろいろな大型提示装置を用意している。

 しかし、同社は今後、学校において電子黒板へのニーズが高まると予測しており、実際の営業活動でも電子黒板の導入を推奨していく。その背景には、2024年度から順次実施される予定のデジタル教科書の本格導入がある。

 2020年度から順次施行されている新しい「学習指導要領」では、端末の画面上に表示する「デジタル(電子)教科書」も児童/生徒用の教科書として存在する。しかし、主教材はあくまでも“紙”の教科書で、義務教育課程では無償提供の対象外となる。よって、デジタル教科書を使いたいなら、自治体または学校が負担しなければならない。

 そのこともあり、2021年3月時点の公立学校における学習者用(児童/生徒用)デジタル教科書の普及率はわずか6.3%にとどまっている。

普及率
2019年度から学習者用のデジタル教科書が制度化されたものの、普及率は低迷している(文部科学省資料より、PDF形式)

 しかし、2024年度から順次進められる教科書の改訂に合わせて、文部科学省は自治体や学校の判断でデジタル教科書を主教材として採用できるようにする方針で、義務教育課程ではデジタル教科書も無償提供の対象となる見通しだ。実際にどの程度普及するかは未知数だが、義務教育課程では学習用端末が広まっていることもあり、デジタル教科書の採用もある程度進むことは確実だろう。

 デジタル教科書をメイン教科書に据えた後の授業の光景を少し想像してみてほしい。先生がタブレットを片手に授業を行う姿は、どことなく違和感がある。

 デジタル教科書ならではの「操作しながらの授業」を行うには、単なる大型ディスプレイやプロジェクターでは限界がある。そこでNECでは触って操作したり、ペンを使って画面に書き込んだりできる電子黒板へのニーズが高まると見て、電子黒板のラインアップの強化に努めているという。

スケジュール
現時点では、2024年度(2024年4月)から小学校課程においてデジタル教科書を主教材として使えるようにする予定となっている(文部科学省資料より、PDF形式)
本格普及
デジタル教科書を主教材として使えるようになることを受けて、NECでは電子黒板への需要回帰が起こると予測している(NEC提供資料)

大型提示装置で注目のトピックは4つ

 NECによると、最近の大型掲示装置に関するトピックとして「無線表示」「換気」「中学校」「保護ガラス」の4つが挙げられるという。「無線表示」については後で詳しく解説することとして、残りの3つがどういうことなのか簡単に説明しよう。

 「換気」は、教室の空気の入れ替えのことを指す。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、学校では窓やカーテンを開けた状態で授業をすることが増えた。外光が強く入ってくることもあり、学校からプロジェクターだと輝度不足で見えづらいという声が寄せられるようになったという。

 「中学校」は少々分かりづらいが、端的にいうと生徒の身長とディスプレイが合わないという問題が発生しているそうだ。現在、NECでは液晶ディスプレイを備える電子黒板は55〜75型を、大型液晶ディスプレイは最大98型をラインアップしているが、中学校では65型ディスプレイだと小さすぎるという声が出てきたとのことである。

 「保護ガラス」は、画面を保護するガラスパネルのことを指す。通常の大型ディスプレイでは、液晶パネルに特別な破損対策がなされていないことが多い。そのため、画面にモノや人がぶつかってパネルが割れるという事例が少なからず発生している。その点、タッチ操作やペン入力を想定している電子黒板では、画面が強力なガラスで保護されていることが多い。自治体や学校によっては、「丈夫な大型ディスプレイ」として電子黒板を導入することもあるそうだ。

プロジェクター
窓やカーテンを開けっぱなしにして授業をすることが増えた結果、輝度不足のせいで「プロジェクターの映像が見づらい」という声が増えているという(写真はイメージです)

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