電子黒板や大型ディスプレイは活用できている? 「GIGAスクール構想」発展に向けたNECの取り組み(後編)(3/3 ページ)
文部科学省はここ数年、学校の普通教室への電子黒板配備を推進してきた。2019年度にはタッチ操作に対応しない大型ディスプレイまたはプロジェクターの導入も容認した結果、3者をまとめた「大型提示装置」の普及率は一気に上がり、2022年度には100%を達成できそうである。この大型提示装置について、NECから最近の状況と課題を伺った。
NECの電子黒板は「無線投影+α」の価値を訴求
NECの電子黒板(インタラクティブホワイトボード)の最新モデル「MultiSync LCD-CB752(75型)」「MultiSync LCD-CB652(65型)」(以下まとめて「新モデル」)は、GIGAスクール構想の要件と、昨今の企業におけるニーズの両方を意識して設計されたという。今回は学校での利用に絞って、その特徴を見ていく。
無線での映像投影に対応
学校で大型提示装置を使うシーンとして、児童/生徒が個々の端末を使って作った資料や成果の投影が挙げられる。端末にHDMI出力があれば、HDMIケーブルを用意してつなげればいい。しかし、大型提示装置の近くまで端末を持って行かなくてはならない。直接の映像出力端子を持たない端末では、変換アダプターも用意しなければならず面倒だ。
教師の机間巡視時にも似たような問題が生じる。加えて、大型提示装置に映像を投影している間は端末を持ち歩けず、逆に端末を持ち歩いている間は映像を投影できないという悩みも抱えてしまう。そのこともあり、学校の教員からは無線で映像を投影できるようにしてほしいという要望が多く寄せられたという。
そこで新モデルでは、別売の「無線LANユニット」を装着することで、無線LAN(Wi-Fi)を介して端末の映像を投影できるようになった。GIGAスクール構想の学習用端末では「Windows 10 Pro」「Chrome OS」「iPadOS」のいずれかを搭載することを想定しているが、いずれのOSでも標準機能を使って映像を伝送できるので、追加のアプリなどを導入する必要はない。
端末に専用アプリ「ScreenShare Pro」を導入すると、最大で6台の端末からの映像投影にも対応する。このアプリを使えば、無線映像投影機能を備えないOS(端末)からの映像投影もできる。
無線による映像投影機能は、導入した学校から好評を得ているという。
新モデルでは無線LANユニットを装着することで、映像の無線投影に対応する。Windows PCでは「Miracast」、Chromebookでは「Chromecast」、iPadOS(やmacOS)では「AirPlay」を使って投影できるので、端末側では追加のアプリを入れなくても構わない。ただし、これらの投影規格を利用できない端末、あるいは複数端末の同時投影機能を使いたい場合は専用アプリのインストールが必要となる
Chrome OS対応を強化 タッチ操作も対応
PC、あるいはPCベースのタブレット端末では、一般的にWindowsのシェアが高いとされる。しかし、GIGAスクール構想に合わせて公立学校に導入された学習用端末端末に限って見ると、Chromebook(Chrome OS)のシェアは約40%でトップとなっている。
NECは教育市場向けに複数のChromebookを投入している(参考記事)。そのこともあり、新モデルではChromebookとの接続性を高めている。
無線による映像投影機能では、先述の通りChromecastはもちろん、ScreenShare Proを使った投影にも対応している。さらに、HDMIケーブルとUSBケーブルを使って新モデルとChromebookをついないだ場合は、新モデル側でタッチ操作を行えるようにもなっている。
ちなみに、タッチ操作はWindows PCやMac(macOS)でも利用できる。しかし、Chromebookでも使えるということに(学校での利用という意味では)大きな意味があるのだ。
今回の新モデルは、Chrome OSとの接続性向上に力を入れたという。もちろん、高等学校課程で推進される見通しのBYOD(自分の好きなデバイスの持ち込み)/BYAD(学校指定のデバイスの持ち込み)を見越してWindows PCやMacへの対応もバッチリ行っている
PCレス運用も見越した「ミニアプリ」も多数
電子黒板というと、PCをつないで使うものと思われがちだが、最近ではPCを接続しなくても利用できる多機能さも重要視される傾向にある。
NECの新モデルも、その点でご多分に漏れない。まず、PCレスで使えるホワイトボード機能を搭載している。書き込んだ内容は内蔵ストレージに保存できる。後から再表示したり、PCなどに取り込んだりすることも可能だ。
スタイラスペンは4本付属している。このペンは両端の太さが異なり、それぞれに異なる色を指定することで「書き込み用」「丸付け用」といった役割分担も容易に行える。もちろん、ペンを使わずに指で直接書き込むことも可能だ。手のひらを“消しゴム”に割り当てれば、切り替え操作なしで書き込んだ内容を消すのも簡単になる。
PCの画面を投影している場合は、その画面へ直接書き込むこともできる。この機能はあくまでも電子黒板側で処理しているので、PC側に特別なアプリをインストールしていなくても使える
新モデルでは他にも、単体で利用できる以下の「ミニアプリ」を備えている。
- Webブラウザ(PCレスでWebサイトを閲覧可能)
- スポット画面隠し(画面の一部分だけ表示して「穴埋め問題」を出せる)
- タイマー
- ストップウォッチ
- 操作ロック(勝手な操作を行えないようにできる)
こうしたミニアプリは、表示されている画面を問わず利用できる。
ネットワーク越しで集中管理可能
先述の通り、NECはネットワークを介して大型提示装置を管理できるツール「NaviSet Administrator 2」を提供している。
新モデルはこのツールに対応しており、管理用PCから状況を監視したり遠隔操作したりすることも可能だ。例えば「教室のディスプレイの電源を消し忘れた……」ということはよくあることだが、職員室などにある管理用PCからの操作で電源をオフにできる。スケジュールに従って自動的に電源を切る設定も可能だ。
安全性も重視
新モデルでは、教育現場で安全に利用できることも重視しているという。
オプションのキャスター付きスタンドは、マルチメディア機器に関する国際安全規格「IEC62368-1」に準拠して設計されている。また、児童/生徒の目線に合わせてディスプレイ本体の高さを3段階から調整できるようにもなっている。
もちろん、新モデル本体自体も安全を優先した設計となっている。電磁波の漏えいレベルは、家庭用電子機器と同じ「VCCI クラスB(VCCI-B)」をクリアしており、教室に置いても安心だ。画面の保護ガラスは4mmと厚めにすることで、破損リスクを軽減している。国内で通信機器として必要な認証も取得済みだ。
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