「LAVIE GX」徹底レビュー NECPCが本気で作ったゲーミングPCの実力はいかに?(3/3 ページ)
NECPCがゲーミングデスクトップPC「LAVIE GX」をリリースした。その出来はいかほどなのか、さまざまな視点からチェックしてみよう。
ベンチマークテストで実力を確かめる
ここからは、LAVIE GX(GX750/EAB)の実力をベンチマークテストを通してチェックしていく。
CINEBENCH R23
まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスをチェックする「CINEBENCH R23」の結果を見てみよう。
- マルチコア:1万6118ポイント
- シングルコア:1872ポイント(マルチコアポイント倍率:8.61倍)
シングルコアのスコアはCore i7-12700(F)の標準的なスコアと変わりないのだが、マルチコアのスコアが少し物足りない。というのも、国内外のレビューを見る限り、Core i7-12700(F)のマルチスコアはおおむね1万9000〜2万ポイント程度となっているのだ。
当初、サーマルスロットリング(熱による性能低下)を疑ってみたのだが、Core Tempの情報ではCPU温度が65〜80度となっているので、CPU的には“余裕”がある(Core i7-12700FのCPUダイ自体は最大100度までの発熱を許容できる設計となっている)。よく冷えているともいえる。
そうなると、サーマルスロットリングを起こさないように、マルチコア性能を抑える(≒発熱による故障リスクを低減する)チューニングを施しているという推測も成り立つ。本件についてNECPCに質問した所、以下のような回答を得られた(一部要約をした上で、体裁を整えている)。
LAVIE GXは、ゲーミングPCでありながら、コンパクトなボディーでリビングにも置いていただけるよう静音性も重視した設計としております。静音性とパフォーマンスを両立する観点から、標準でIntelligent Cooling(インテリジェントクーリング)の設定を「Balance Mode(バランスモード)」としております。
パフォーマンスを優先する設定としたい場合は、UEFI(BIOS)セットアップからIntelligent Coolingを「Performance Mode(パフォーマンスモード)」に変更してみてください。
今回、時間の都合でパフォーマンスモードでの試験はできなかったが、NECPCによるとパフォーマンスモードでは1万9000ポイント前後のスコアで推移するという。マルチコア性能がモノをいうアプリを使うという人で「何か物足りない……」と思う人は、UEFIの設定を確認してみてほしい。
ただ、他社のゲーミングPCでは、このような設定をWindows用のユーティリティーアプリで行えることが多い。せっかくのゲーミングPCなので、LAVIE GX専用のユーティリティーアプリを作っても良かったのではないかと思う。
PCMark 10
続けて、「PCMark 10」を使ってPCとしての総合性能をチェックしてみよう。結果は以下の通りで、搭載しているCPUやGPUを考えると順当な結果となった。
- 総合:8438ポイント
- Essentials(Webブラウズやビデオ会議の性能):1万2049ポイント
- Productivity(ワープロや表計算などの性能):1万1130ポイント
- Digital Content Creation(写真や動画の編集/書き出し):1万1942ポイント
加えて、Microsoft Office(Word/Excel/PowerPoint)とMicrosoft Edgeのパフォーマンスをチェックする「PCMark 10 Applications」のテストを実施した所、スコアは1万4455ポイントとなった。こちらも、順当といるだろう。
3DMark
ここからは、ゲーミングPCの真骨頂ともいえる3Dグラフィックスのベンチマークテストを実施する。まず、高負荷の3Dグラフィックス描画をテストする「3DMark」において、DirectX 12ベースの「Time Spy Extreme」とDirectX 11ベースの「Fire Strike Ultra」の2種類を実行した。いずれも4K(3840×2160ピクセル)で描画するテストで、特に負荷が大きくなる。結果は以下の通りだ。
- Time Spy Extreme:4197ポイント
- Fire Strike Ultra:5210ポイント
GeForce RTX 3060を備えることを考えると、いずれも順当な値だ。追加でWQHD(2560×1440ピクセル)描画の「Time Spy」「Fire Strike Extreme」のテストも行ったので、以下にスコアを記す。
- Time Spy:9221ポイント
- Fire Strike Extreme:1万213ポイント
さすがに高品質設定で4Kゲーミングは厳しいかもしれないが、WQHDゲーミングならタイトルによっては高品質設定で快適に楽しめるポテンシャルは有している。エントリークラスのゲーミングPCだと考えれば十分に及第点だ。
FF14/FF15ベンチマーク
実際のゲームに近いテストとして、「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」と「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチマーク)」も実行した。今回はフルHD(1920×1080ピクセル)と4Kで複数の品質でテストを実施し、結果は以下の通りとなった。
- FF14ベンチマーク
- フルHD/標準品質(デスクトップPC):2万9920ポイント(非常に快適)
- フルHD/高品質(デスクトップPC):2万2397ポイント(非常に快適)
- フルHD/最高品質:2万1153ポイント(非常に快適)
- 4K/標準品質(デスクトップPC):1万6409ポイント(非常に快適)
- 4K/高品質(デスクトップPC):8182ポイント(快適)
- 4K/最高品質:7048ポイント(やや快適)
- FF15ベンチマーク
- フルHD/軽量品質:1万6455ポイント(非常に快適)
- フルHD/標準品質:1万2728ポイント(非常に快適)
- フルHD/高品質:9337ポイント(とても快適)
- 4K/軽量品質:6344ポイント(快適)
- 4K/標準品質:4600ポイント(やや快適)
- 4K/高品質:3933ポイント(普通)
FF15ベンチマークの4K/高品質設定は特に負荷が大きいのだが、それでも「普通」評価を確保している。設定次第では、4Kゲーミングも十分に楽しめる性能は確保できているといえるだろう。
CrystalDiskMark 8.0.4
今回のテスト機にはキオクシア製SSD「KBG5AZNV1T02 LA」が搭載されていた。これはPCI Express 4.0 x4接続に対応する「KIOXIA BG5シリーズ」の最上位モデルで、公称ではシーケンシャル(連続)リードが毎秒3500MB、シーケンシャルライトが毎秒2900MBというスペックを持つ。
PCI Express 4.0接続に対応するSSDとしては“控え目”なようにも思えるが、普段使いであればこれで必要十分だし、過剰な発熱を防ぐ観点に立てば“ちょうど良い”スペックともいえる。
「CrystalDiskMark 8.0.4」を使ってSSDの読み書き速度を実測した所、以下のようになった。
- シーケンシャル(SEQ1M Q8T1)
- リード:毎秒3333.47MB
- ライト:毎秒2867.21MB
- ランダム(RND4K Q32T1)
- リード:毎秒907.17MB
- ライト:毎秒813.47MB
公称値より少し低めの結果となったが、しっかりとSSDの性能は引き出せている。これなら、大抵のゲームは快適に楽しめるだろう。
必要十分な性能を備える ただし「価格」は評価が分かれそう
ここまでLAVIE GXを見てきた感想は「非常にそつなく仕上がっている」ということに尽きる。NECPCはゲーミングPC市場では後発組となるが、後発だからこそ非常にバランスの取れた仕上がりにできたと見ることもできる。いわゆる「AAAタイトル」も十分に快適にプレイできるポテンシャルを持っており、初心者が買うゲーミングPCとしては“抜け目”がない。
……のだが、問題は“価格”である。今回レビューしたGX750/EABの税込み実売価格は30万円前後である。販売店によっては30万円を切っているものの、同じような構成のショップブランドのゲーミングPCを購入すると、安い所なら税込みで21万円程度で手に入る。この9万円程度の価格差をどう考えるか、意見が分かれそうな所である。
LAVIE GXには、24時間365日対応の専用サポート電話窓口を1年間利用できる権利が付帯する上、ヘッドセットとXbox ワイヤレスコントローラーも付属する。ゲームの設定に関する不明点をいつでも電話で質問できることを考えると「安すぎるのでは?」と思わなくもないが「でも9万円差なのか……」という意見も理解できる。
一般的なゲーミングPCでは忘れられがち(不要とされがち)な“安心感”を求める人、あるいはゲーミングPCが欲しくても技術的な質問に答えてくれる知人が周囲にいない人には、ぜひLAVIE GXをお勧めしたい。
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