有言実行を続けるAppleの新たな取り組み 直営店でiPhoneの「プライバシー」機能の理解を深める無料講座
Appleが1月28日の「データ・プライバシーの日」から、新たな取り組みを開始する。その内容を見ていこう。
Appleのプライバシーに関するWebページ。Appleはユーザーのプライバシーの保護こそが同社製品と他社製品を明確に区分するアドバンテージと考えており「プライバシー。これがApple。」というコピーで広告も展開中だ(上は1月24日時点での同社プライバシーページのトップ画像)
データ・プライバシーの日に新たなアクションを起こすApple
突然だが、1月7日は七草がゆの日だ。その4週間後の2月11日は建国記念の日。それではこの2つのちょうど間となる1月28日は何の日かご存知だろうか。不動明王の1年で最初の縁日を意味する「初不動」でもあり、「いるい(1)/ふん(2)/わり(8)」に掛けて「衣類乾燥機の日」とも言われているようだが、これらは日本だけの話だ。
だが、日本だけでなくヨーロッパの47の国と米国/カナダ/イスラエルなどの国々では、この日は「プライバシー保護」の意識を高める「データ・プライバシーの日」と定められている。
始まったのは2007年で、初代iPhoneが発表された直後の2007年1月28日に欧州評議会で制定され、2年後の2009年の同日からは米国などもこれを採用。現在は世界中の国々が取り上げている。
この日は当然、CMで「プライバシー。これがApple。」とまでうたい、「プライバシーは基本的人権」と唱える同社にとっても重要な日で、これまでも毎年のようにプライバシー保護に関するホワイトペーパーなどさまざまな発信を行ってきた。とはいえ、これまでそうした情報をわざわざ参照していたのは、おそらくこういった事柄に関心が高い人たちだけだろう。
2023年のAppleは、より多くの人がプライバシー保護に関心を持ち、どのように自分のプライバシーを守ればいいかの知識を身につけられるように新たな取り組みを始める。
日本全国に10カ所(世界全土に522店舗)のApple直営店で提供している同社製品を、よりうまく活用するための無料講座「Today at Apple」にてiPhone上でのプライバシー管理についての講座をスタートさせる。
セッションタイトルは「Skills:Taking Charge of Your Privacy on iPhone」(スキル:iPhone上でのプライバシーを自己管理する――執筆時点で正式な日本語名が分からないので筆者訳)で、なぜプライバシー保護が大事なのかや、自分のプライバシーを自分で守るための術を紹介するという
第1回は1月28日の午後12時から開催で、データ・プライバシーの日以降も、毎週2回のペースで継続的に提供する予定とのことだ(受付は1月25日からスタートする)。
約30分の講座では、パスワードとパスキー、メールプライバシー保護、位置情報サービス、アプリによるトラッキングの透明性、安全確認、プライバシーレポートといったトピックに触れ、それぞれの設定にどのような意味やリスクがあり、設定にどのような選択肢が用意されていたのかなどに触れる。
同社は、ユーザーがiPhoneをよりうまく活用する上で重要なこの講座を、同社のソーシャルメディアアカウントや公式Webサイト、そしてApple直営店の店内でプロモーションしていく予定だ。
なお、Today at Appleの講座の一部はオンラインからも視聴できるようになっているが、今回のプライバシーに関するセッションについては、直営店で同社のエキスパート(クリエイティブプロ)に対面で直接質問などを投げかけ、理解を深めてもらうことを重視しているため、オンラインでの提供の予定はない。その代わり、同社のプライバシーへの取り組みについては、Webページなどを通して詳細に情報提供を行っていく模様だ。
なお、Today at Appleでは今回、新たに提供するプライバシーのセッション以外にも、同社製品を使った写真の加工方法から、同社の開発環境「Swift」を使ったアプリ開発など、幅広いテーマの講座を全世界のApple直営店で毎週1万5000件提供している。
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