「GeForce RTX 4060 Ti(8GB)」はフルHDゲームも動画エンコもピッタリな良コスパGPUだ(4/4 ページ)
5月24日22時から販売が始まる「GeForce RTX 4060 Ti(8GB)」を搭載するグラフィックスカード。その実力はいかほどのものか、日本未発売の純正カードを使ってチェックしていこう。
ゲーム以外のパフォーマンスをチェック
最近のGPUに求められるのはゲームの性能だけではない。クリエイター向けのアプリケーションを快適に動作させるのにも、高性能なGPUは求められている。
簡単ではあるが、クリエイター向けアプリケーションでのパフォーマンスのチェック幾つか行ってみよう。ここからは、過去のテストとの比較も再開する。
Blender Benchmark
まず、2D/3Dアニメーション製作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリ「Blender Benchmark」のWindows版を用いて、パフォーマンスの比較をしてみよう。今回は「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオにおいて、1分間当たりの生成サンプル(オブジェクト)数を計測した。
結果は以下の通りだ。なお、このテストのみ、最新のCore i9-13900K(Pコア8基16スレッド+Eコア16基16スレッド)でテストした「CPUだけでオブジェクトを生成した結果」も参考として記す(当然、他のスコアは「GPUのみでオブジェクトを生成した結果」である)。
- Monster
- GeForce RTX 4060 Ti(8GB):2238.614565個
- GeForce RTX 4070:3076.904531個
- GeForce RTX 4070 Ti:3697.841085個
- Core i9-13900K:286.632545個
- Junkshop
- GeForce RTX 4060 Ti(8GB):1057.836321個
- GeForce RTX 4070:1496.971164個
- GeForce RTX 4070 Ti:1693.661584個
- Core i9-13900K:161.211536個
- Classroom
- GeForce RTX 4060 Ti(8GB):1134.041809個
- GeForce RTX 4070:1511.919688個
- GeForce RTX 4070 Ti:1863.355900個
- Core i9-13900K:132.288408個
純粋にGPU同士で比較すると、先のベンチマークテストと同様に“順当な差”が生じている。とはいえ、CPUによる演算と比べればGeForce RTX 4060 Ti(8GB)でも十分すぎるくらいに高速であることも分かるはずだ。
今後、GeForce RTX 3060シリーズを搭載する完成品のデスクトップPCが、今後GPUをGeForce RTX 4060シリーズに置き換えるとなると、信頼性を担保する「ISV」などの仕組みの差はさておき、とってもコスパのいい、エントリークラスの3Dレンダリング/CADマシンになるような予感もする。
ノートPCでクリエイター向けアプリを使っているけれど、動作が緩慢で困っている――そんな人に、GeForce RTX 4060 Ti(8GB)を搭載するデスクトップPCを勧めてみようと思う。GeForce RTX 3060 Ti搭載モデルと実売価格が変わらないなら(10万円台半ば〜20万円台前半)、これほど魅力的な選択肢もない。
Adobe Premiere Pro(4K動画書き出し)
続けて「Adobe Premierer Pro」を使って、4K動画のエンコードに要する時間を比較してみよう。今回は「GoPro HERO 10」で撮影した数本の4K動画を30分ほどにまとめて書き出すのに要した時間をまとめた。結果は以下の通りである。
- GeForce RTX 4060 Ti(8GB):7分54秒
- GeForce RTX 4070:7分47秒
- GeForce RTX 4070 Ti:7分40秒
内蔵エンコーダー(第8世代NVENC)が同一で数も同じ(1基構成)なので、書き出す速度に大差はない。ただし、「ちりも積もれば山となる」ではないが、より長い尺の動画をエンコードする際や、たくさんの動画を書き出すという場合は“数秒の差”が大きな差となる可能性はある。
とはいえ、先代までと比べれば高速である事実は揺るがない。極端に高頻度(あるいは長時間)の動画を扱わない限りは、コストパフォーマンスの優れた「エンコード用GPU」となりうる。30〜60分前後のカジュアルな(あるいはYouTube向けの)動画をもっぱら書き出すというのであれば、十分すぎる実力を備えている。
「平均的な環境」を底上げするコスパの良いGPU
GeForce RTX 4060 Ti(8GB)を搭載するグラフィックスカードの想定販売価格は、米国では399ドル(約5万5000円)から、日本では6万9800円となる。米国では先代(GeForce RTX 3060 Ti)から価格据え置きなのだが、為替レートの都合もあって、日本では先代から少し“値上げ”されている。
米国価格を基準に考えると「同じ値段でパフォーマンスが向上して、コストパフォーマンスのよいGPU」といえるのだが、日本価格を基準に考えるとコストパフォーマンス面での魅力が薄れてしまうのは正直な所である。それでも、GeForce RTX 3060 Tiに少しの追加投資をすれば最新世代になると考えれば、お買い得であることは間違いない。
ターゲット解像度のフルHDは、スペックを重視するユーザーや最新を追いかけるユーザーからすると物足りなさを感じるかもしれない。しかし、NVIDIAもいう通り、大半のユーザーはフルHD解像度のディスプレイでゲームを遊んでいる。もっといえば、WQHDや4Kの高リフレッシュレートディスプレイは、現在も簡単に買える価格とはいえない。
そういう現実を踏まえると、GeForce RTX 4060 Ti(8GB)は多くの人に“ちょうどいい”新しいGPUとなるはずだ。
GeForce RTX 4060 Ti(8GB)は、消費電力も魅力の1つである。今回のテスト環境では、アイドル時は81W、3DMarkの「Time Spy Extreme」実行時のピークでも262Wと、300Wを切る電力でしっかりと動いていていた。ワッパは間違いなく最高によい。最近はやりの「スモールファクタ」のケースに入れても、放熱を気にする必要が従来よりも減るので、最新世代のパーツを使った自作の幅を広げる一助にもなる。発売を楽しみに待ちたい。
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