「Apple Vision Pro」を先行体験! かぶって分かった上質のデジタル体験(2/3 ページ)
AppleがWWDC23にて発表したMRヘッドセットが「Vision Pro」だ。これまでのAR/VRなどのHMDデバイスと何が違うのだろうか。林信行氏が真っ先にかぶって分かったことをまとめた。
PC、スマートフォンに続く新しいコンピューティング環境
このVision Proで、もう1つ良いなと思ったのが、VRやMRはもちろん、同社のティム・クックCEOが好きだというAR(拡張現実)という言葉も使わずに製品が目指す体験を「Spatial Computing(空間コンピューティング)」と呼んだことだ。
これまでのHMDは、VRカメラで撮った立体映像など特殊なコンテンツを楽しむメディアプレイヤー的な役割が主だった。
これに対してAppleが目指しているのは、マウス操作を広めたMac、タッチ操作を広めたiPhoneに続く新しいコンピューティングスタイルの創造であり、この新しい機器ならではの新しいライフスタイルを広めることにある。
今回は体験できなかったが、基調講演では視界に映ったMacの画面を、空中に拡大表示して操作する様子やiOS用のアプリを使う様子も紹介されていた。
つまりVision Proをつけていれば、普段、MacやiPhoneで行っていたことも、デバイスを切り替えず行えるのだ。
今回、実際に体験できた空間コンピューティングの体験で、最も素晴らしいと思ったのは「フォトアルバム」のアプリだ。
iPhoneで撮ったというパノラマ撮影の写真が視界いっぱいに広がってVR的に楽しめる。
いや、それだけではない。Vision Proについている3Dカメラで撮影した写真や動画は、実際の風景と比べつがつかないくらいに、リアルかつ立体的に表示/再生される。撮影されている範囲はやや狭いのだが、立体写真の境界線がきれいにぼかされていて、映画の中の回想シーンのようなとても良い雰囲気で表示されるのだ。
フォトアルバムの写真は部屋の中、視線の先に表示させることもできるが、ゴーグルの右上についたデジタルクラウンを時計回りに回すと、それまで写真の背景として見えていた部屋が暗くなり、真っ暗な空間に写真だけが浮かび上がっているような没入状態でも楽しめるようになる(周囲の様子が分からないVRゴーグルを被ったような状態だ)。
この没入度の調整だけで終わらせず、「こんなところまで考えていたのか」と驚かされる工夫がある。人が近づいてくると、その人の周囲だけ明るくなってちゃんと姿が見えるのだ。
VRゴーグルのように、周囲をシャットアウトして仮想空間だけに閉じこもるのではなく、ちゃんと現実空間とのつながりも断たない。こうした社会性も大事にする姿勢もAppleらしければ、それを形に変える体験の作り込みの良さもAppleらしい。
Vision Proを装着している他の人との、FaceTimeでのビデオチャットも体験してみた。相手はゴーグルをつけた状態で現れるのかと思ったら、付けていない状態で現れた。これ、実は機械学習で作られた合成映像だ。
あらかじめVision Proのカメラで自分の顔をスキャンしておくと、スキャンした顔に内側についたカメラで撮影した目を合成してゴーグルをつけていない状態の顔を再現してくれる。しかも、リアルに表情も再現してくれるのだ。
確かによく見るとCGだと分かるのだが、しばらく話していると、そんなことも忘れてしまうくらいリアルに感じられる出来栄えだった。
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