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NPU搭載の「AI PC」で、これからの“パソコン”は何が変わる? アプリベンダーとの協業を強めるHP、Windows 10のEOSを見据えてHP Imagine 2023(2/2 ページ)

Windows 10のサポート終了を約2年後に控える中、冷え込んでいたPC市場は落ち込みから回復する兆しが見えてきた。そんな中、HPはVPU(AIプロセッサ)を内蔵するPC向けSoC(プロセッサ)を備える「AI PC」を軸に販売を拡大する戦略を取るようだ。

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ISVと組んでAI活用アプリを開発して「鶏が先か、卵が先か」を回避

 言うまでもないが、CPUが新しい命令や機能を搭載し、それを生かすAPIの準備が整ったとしても、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)が自社のアプリに実装するには一定の時間を要する。しかし、AI PCにとっての“良いニュース”として、ISV側は既にNPUを活用したアプリの提供準備を始めている

 Microsoftが5月に開催した開発者向けイベント「Microsoft Build 2023」では、AdobeがDirectMLを介してCore UltraプロセッサのNPUを使ったデモを披露した。

 このデモでは、動画編集アプリ「Adobe Premiere Pro」において「オートリフレーム(人/動物/物体の動きに合わせて画角を自動調整する機能)」や「シーン検出(動画を解析して、カットすべきポイントを自動検出する機能)」をする様子を見せていた。

 両機能は既に実装済みなのだが、NPUを併用すると処理がより高速になる

リフレーム
オートリフレームやシーン検出自体は、Premiere Proに実装済みだ。しかし、Core UltraプロセッサのNPUを使うと、CPU/GPUだけよりも高速に処理を行える

 Adobeのような取り組みを、多くのISVが取り組むようになるのはいつになるのだろうか。パテル氏に見込みを聞いてみると、以下のように答えた。

 確かに(対応に)時間がかかるのは事実だが、シリコンベンダーは既に対応する(VPU)を搭載するチップを発表しており、ISVはアプリがそれを正しく扱えるように取り組んでいる。HPも複数のISVと協業を行っており、AI PCが登場するタイミングでAIを活用したアプリを一緒に紹介できると思う

 AI PCをリリースするにあたり、HPも搭載されるアプリがどれだけ出そろうのかを重要視している。ISVが自社のアプリを出す前に、HP側から働きかけて協業してプリインストールアプリを作成しているという。

 CPUの新しい命令やAPIを利用するアプリは、出そろうまでに「鶏が先か、卵が先か」的な議論が続くことが通例だ。今回のAI PCについては、メーカーであるHP自身がそこをリードして、“鶏を作り出す”活動をしているということだ。

 実はこのような取り組みはHPだけでなく、ASUSやAcerといった台湾のPCメーカーも行っていることを表明している。AI PCでは「PCメーカーがプリインストールするAIアプリ」が1つのトレンドになりそうだ。

 PC市場を取り巻く動きとしては、Windows 10のサポート終了(いわゆるEOS)も見逃せない。

Windows 10の「サポート終了」は、PC市場をどれだけ後押しする?

 PC市場の動向を占うに当たって、Windows 10のサポート終了(EOS)は非常に重要なファクターだ。

 EOSに先立ち、2024年3月31日をもって、Windows 11 Proのダウングレード権を行使した「Windows 10 Pro」のプリインストールPCの提供が終了し、同年4月1日以降は販売店の在庫限りとなる。その後、2025年10月14日にEOSを迎えることになる。企業は、原則としてこれからの約2年以内にWindows 11への移行を進めなければならない。

Intel Connectionの様子
日本HPが「Intel Connection 2023」で行った講演で示されたスライド。2024年3月をもってWindows 10 ProのプリインストールPCの提供が終了し、2025年10月にはWindows 10自体がEOSを迎える

 この事実を踏まえると、Windows 11への移行はPCメーカーにとっては販売面における“後押”しとなりそうだ。この点をパテル氏に問うと、このように答えた。

 特に日本市場では、おっしゃるような特需があると考えている。他のリージョンではもう少し緩やかに移行が進む一方で、日本市場では毎回(EOS期限)ギリギリになってからの買い換え需要が発生するのが通例だからだ。

 特に日本市場では、Windows 10 ProをプリインストールするPCの提供終了や、OS自体のEOSが市場を盛り上げる要因になりうるという認識を明らかにした。

 同氏によると、こうした特需は日本市場固有の現象で、海外市場では移行が緩やかに進むのだという。移行スタイルの是非は置いておくとしても、PCメーカーにとってはビジネスチャンスとなるので、日本法人を中心にさまざまな取り組みを行っていくという。

 パテル氏は「そうしたWindows 11への移行需要、そしてAI PCという新しいアプリケーションの登場がPCの成長を後押しするはずだ」と述べ、そうした要素により24年以降に再びPC産業が上向きになるだろうと見通しを強調した。

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