新しい「16インチMacBook Pro」に見るM3 Maxチップの“実力” M1 Ultraチップ搭載モデルからの乗り換えも現実に:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
Appleが新型「MacBook Pro」を11月7日に発売する。少し遅れて発売される予定の「M3 Maxチップ」を搭載する構成を先んじてレビューする機会を得たので、その実力をチェックしていく。
薄型ボディーでM1 Ultraチップを置き換えられる実力
アプリの最適化状況にもよるが、新しいMacBook Proは、特に3Dグラフィックスの制作において大きなパワーを引き出してくれるはずだ。
初代のM1チップファミリーの頃から、Apple Siliconは省電力な割に処理パフォーマンスが良いことで評価されてきた。その一番の理由は、ユニファイドメモリを採用したことによるオーバーヘッドの極小化にある。CPUコアとGPUコアが同じメモリにするので、データのやり取りにおいてムダがないため、サクサクと作業を進められるのだ。
この特性は、特にプロフェッショナル向けの大規模データを扱うアプリにおいてメリットが大きい。AppleはM3 Maxチップ(16コアCPU/40コアGPU)のMacBook Proで、Cinema 4Dを使うデモンストレーションを披露した。このデモンストレーションでは、極めて複雑な頂点情報や高精細なテクスチャを持つシーンをまるまるメモリ内に収め、パワフルなM3 Maxでサクサクとリアルタイムに処理しながらモデリングやシーンの調整、プレビューが行える様子を見せていたが、「本当にノートPCでやっているのか?」と思ってしまうほどにスムーズだった。
商業施設などで使われるビルの建設や製品設計では、極めて複雑な構造の3Dモデルを用いることもあるだろう。Appleは3D CADアプリ「Archicad」のMac版のデモも披露した。あらゆるデータをオンメモリに置いた上で、多数のシェーディングタスクが動いても、ストールすることなく動作し続けていた。シアターを内包する複合商業施設の全構造を見下ろした視点で見たり、スライスして構造全体の位置関係をチェックしたりといったオペレーションでも、全く引っかかりが出ない。
その秘訣(ひけつ)は、M3チップファミリーで新規実装された「Dynamic Caching(ダイナミックキャッシング)」にある。グラフィックス処理に必要なメモリ領域の割り当てと解放を、ハードウェア側で動的に行ってくれるのだ。
力技と言えば力技だが、パフォーマンスに見合うメモリ容量が与えられたことによって、従来は「Mac Studio」でしかできなかったことが、MacBook Proでもこなせるようになる。例えば数十億のパラメータを使用する大規模言語モデルをオンメモリで動かし、強化学習やテストを行うこともできる。
この先には「M3 Ultraチップ(仮)」が控えているのだろうが、ひとまずはおととし(2021年)に我々を驚かせたM1 Ultraチップ搭載Macが担っていた領域の仕事は、M3 Max搭載のMacBook Proで“持ち歩ける”ようになったのは確かだ。
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