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M3ファミリー搭載の新型iMacと16インチMacBook Proを試して分かったこと(1/2 ページ)

Appleが新たに投入したSoC「Apple M3ファミリー」を搭載したiMacとMacBook Proシリーズが発売を迎える。一足先に実機に触れた林信行氏が、試して分かったこととは?

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 第3世代Apple Siliconを搭載したMacBook Proと、iMacが一斉に発表された。3度目の正直という言葉があるが、過去のMacやWindows PCのコンピュータプロセッサを振り返っても、3世代目のプロセッサには大きなヒットとなることが多い。

Apple M3ファミリー SoC スペシャルイベント 16インチMacBook Pro 新型 iMac
10月のスペシャルイベントで発表された新型SoC「Apple M3ファミリー」
Apple M3ファミリー SoC スペシャルイベント 16インチMacBook Pro 新型 iMac
M3ファミリーの特徴

第3世代のApple Siliconとなる「M3ファミリー」

 第1世代には、新たなプロセッサに切り替えるだけのパフォーマンス的価値を示しつつ、過去の資産との互換性を保つ使命がある。第2世代は第1世代に間に合わなかった機能の実装や新たに得た知見を取り入れつつ、足りていなかったところを補ったりすることが多い。

 これが第3世代になると、そのプロセッサファミリーの信頼と実績も確立され、いよいよ中長期を見据えた本来狙っていたデザインが採用され、それによってパフォーマンスもグンと伸びていることが多い。そして、それだけに初代プロセッサの製品を購入したユーザー(つまり、M1ファミリー搭載Macユーザー)からのアップグレードも意識した作りになる場合が見られる。

 また、過去2世代の製品を振り返ってユーザーが買いやすいように、プロセッサファミリー全体の仕様などが見直されることもままある。

 Apple M3ファミリーは、まさにこの通りのプロセッサだ。基本性能がグンと向上し、性能に大きな違いを生み出す新しい設計も取り入れられた。その上でやみくもに性能を上げるだけでなく、十分な性能を確保しながら、その中で普及型プロセッサのM3、プロ仕様のM3 Pro、そして負荷の大きな作業をする人のためのM3 Maxという、3つのプロセッサの個性がより明確に分かれた(おそらく、ここに電力にも金額にも糸目をつけずとにかく最大性能を求める人のためのM3 Ultraも加わることだろう)。

Apple M3ファミリー SoC スペシャルイベント 16インチMacBook Pro 新型 iMac
新カラーのスペークブラックを採用した新型16インチMacBook Pro

 このプロセッサファミリーの見直しに合わせるかのように、MacBook Proそのものの見た目も少し見直された。M3 ProおよびM3 Maxでは、本体色が従来のスペースグレイではなく、より黒みの増したスペースブラックのカラーバリエーションが用意されることになった(シルバーのカラーバリエーションはプロセッサの種類に関係なく選ぶことができる)。

 どちらの色も光の反射で表情が変わるので、単体をパッと見ただけではスペースグレイかスペースブラックか分かりにくいが、両者を並べてみるとハッキリと分かるといった感じのカラーバリエーションだ。

 誰が見てもM3 Pro/Maxモデルだと分かる強い主張ではなく、「気がついた人にだけ分かる」という静かな主張になっているが、暗い部屋で使うと、キーボードのバックライトがより強く強調され暗闇の中にキーボードとディスプレイだけが浮かび上がっているような印象を受けた。

Apple M3ファミリー SoC スペシャルイベント 16インチMacBook Pro 新型 iMac
新色のスペースブラックとシルバーはM3 Pro/M3 Maxモデルで選べる。M3チップモデルはシルバーとスペースグレイの展開だ

新旧のApple Silicon搭載モデルを速度比較

 M3とM2までのプロセッサでは、そもそもベースとなっている性能が格段に違う。もしかしたら、前の世代のMacの値引き販売があるかもしれないが、今から新しいMacを買うのであれば可能な限りM3ファミリー搭載の製品を選ぶことを勧めたい。

 現時点においてはM3ファミリーの性能は必要ないという人がいるかもしれないし、確かにPCはWebブラウジングとメール、オフィス向けソフトしか使わないと決めている人ならそれでもいいかもしれない。だが、今後、急激に増えるであろうAI技術を基盤にした最新アプリトレンドなどにも触れる可能性が少しでもある人は、M3ファミリー採用のMacを買った方が、そういったトレンドを一足早く確実に、しかも良い体験で享受しやすく、その分、同じ製品を長く使えることになるはずだ。

 では、M3とM2以前のプロセッサではどの程度の差があるのだろうか。

 Appleが公表している性能比較によると、M3プロセッサ搭載のMacBook Proは負荷の大きい3Dレンダリング処理で、かつてのMacが備えていたIntel Core i7と比べ7.4倍の性能を発揮するとアピールしている。3年前には速いと驚かれたM1と比べても35%高速で、2022年に登場したM2と比べても20%も高速だという。

 今日のプロセッサは、何種類かの性質の異なるコアの集合体だが、節電優先で性能は少し落ちる高効率コア(Eコア)の性能はM1との比較で最大50%速く、パフォーマンスの高い高性能コア(Pコア)では最大30%も速くなっているそうだ。

 実際、新たに(正確には再び)GPU性能の検証にも対応した「Cinebench 2024」を使った。CPU8コア/GPU10コア、ユニファイドメモリが24GB、2TBのSSDを備えた最上位構成のiMacとのCPUテストでは、1コア当たり性能でM1チップを23%上回っていた。8コア全てを使ったマルチプロセッサ性能のスコアは600で、同じ8コア搭載のM1 iMacのスコア(509)と比べて約18%の性能アップだ。

Apple M3ファミリー SoC スペシャルイベント 16インチMacBook Pro 新型 iMac
新旧Apple Siliconの速度比較

 1世代飛ばしたM1とM3の比較で20%台というと、あまり進化していないように感じるかもしれないが、実は映像や3Dグラフィックなどの処理で重要なGPUの性能が段違いなのだ。M3のスコアが3631に対して、M1が1260で2.9倍も高速になっている。

 まだIntel Macを使っている人には、今度こそ劇的に性能アップを果たすタイミングだ。一方、3年前に「驚くほど速い」と感じていた初代M1チップの性能に慣れ、少し不満を感じ始めた人にも良い乗り換えのタイミングとなりそうだ。

Apple M3ファミリー SoC スペシャルイベント 16インチMacBook Pro 新型 iMac
M3プロセッサ(CPU8コア/GPU10コア)搭載iMacのCinebench 2024のテスト結果

 ちなみにiMacは結局、M2チップ搭載モデルが出ずに、いきなりM1モデルからM3モデルへと隔世進化を果たしたが、M3とM2の性能差はどうだろうか。

 モデルは異なるが、今回借りられた新型16インチMacBook ProがM3 Maxチップ(16コアCPU+40コアGPU)に128GBのユニファイドメモリと8TB SSDを備え最上位構成モデル(105万6800円)のためM2 Maxとの比較になるが、「Geekbench 6」の検証でシングルコア性能のスコアが3072、マルチコア性能が21242だった。

 M2 MaxのMacBook Proは12コア搭載が最上位モデルなのでCPUそのものの条件はそろわないが、シングルスコアが2793、マルチコアのスコアが15135となり、シングルコア性能が約10%、マルチコア性能が約41%向上していることが分かる。

 M3採用のiMacと異なり、マルチコア性能が劇的に向上しているのは複数のプロセッサコアを連携させる際に重要なプロセッサコアとメモリとの通信データ量(バンド幅)の違いが影響しているものと思われる。今回、M3 Proプロセッサでは、プロセッサファミリー全体としての性能バランスを見直した結果か、M2 Proプロセッサに比べてメモリバンド幅が抑えられている(これがどのように性能に影響しているかは気になるところだが、今回貸出の機材では検証できなかった)。

Apple M3ファミリー SoC スペシャルイベント 16インチMacBook Pro 新型 iMac
新旧Apple Siliconのスペック比較

 さて、それではGPU性能ではどのような差が出たのだろうか。Cinebench 2024のGPUテストではM3 MaxのMacBook Proのスコアは12711だった。M1 Maxとの比較で2.9倍、2022年春にPC用としては最高性能をうたっていたM1 Ultraの性能すらも抜いてしまっている。

 M2 MaxのMacBook Proが用意できなかったが、24コアCPU/60コアGPU/32コアNeural EngineのM2 Maxを備えたMac Studioとのスコアが5907なので、それと比べても2.15倍も高速になっている。

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