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内田洋行と東京学芸大学が「包括的事業連携協定」を締結 「1人1台端末」の次を見据えて(2/2 ページ)

小中学校に通う全ての児童/生徒に1人1台端末を──日本の教育現場は、GIGAスクール構想が掲げた1つのマイルストーンに到達した。しかし、その端末の3割は“使いこなせていない”という。その状況を打破すべく、国内で最も多くの付属学校を持つ東京学芸大学と、古くから教育現場を支援してきた内田洋行がタッグを組む。

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内田洋行と東京学芸大学がタッグを組む理由

 調印式であいさつに立った東京学芸大学の國分充学長は、「東京学芸大学は、150年という長い歴史を持つ教員養成大学として、教育を支える教員を養成し、時代に応じた教育の進化を捉えるリーダーとなっている。

 対する内田洋行は、GIGAスクール構想において全国の自治体へ約140万台のPC端末を導入し、ICTシステム構築やネットワークの個別設計など、教育現場での運用や支援において豊富な実績を有している。これらの経験と技術が、脅威の質を更に向上させるための重要な力となるはずだ」と、両者が事業連携協定を結ぶことの意義について述べた。

國分学長
東京学芸大学の歴史と、現在の教育分野での役割について説明する國分学長

 内田洋行の大久保昇社長も、「弊社のルーツは満鉄(南満州鉄道)の工事従事者向けに、測量器具や設計器具、計算尺などを提供したのが始まりだった。そこから小中学校で技術教育がスタートすることを見越して、1946年から全国の学校に科学教材の提供を実施している」と教育への同社の取り組みを説明した。

 さらに同社は、1998年に教育に特化したシンクタンク「内田洋行教育総合研究所」を設置し、文部科学省や総務省などか教育に関連する事業を受託したり、大学と共同研究を行ったりしている。受託事業や共同研究を通して得られた知見も生かしつつ、教育現場の課題解決活動にも取り組んでいるという。

 大久保社長によると、国内の教育現場に目を向けると「(義務教育課程では)全国に100万人の教職員、900万人の小中学生がいる。しかし、その3割程度が(学習用端末を)使いこなせていないと考えている」という。その上で、「東京学芸大学は、日本で最も多くの付属学校(12の学校/園)を擁している。そのことから、たくさんの教育データとAIを組み合わせた新しい取り組みができるのではないかと期待している」と、同大学と連携協定を締結する狙いを説明した。

大久保社長
内田洋行の始まりから、教育にかかわるようになった経緯を説明する大久保社長

連携協定の具体的内容は?

 「産学連携」というと、プロジェクトごとに学校(教育委員会/学校法人)と企業が協働するというイメージが強い。それに対して、今回の内田洋行と東京学芸大学の事業連携協定は“包括的”なもので、内容は大きく5つの柱からなる。

  • 未来の教育や学校教育の在り方に関すること
  • 学校教育における効果的・効率的な学習環境の在り方に関すること
  • 教員養成・教員研修の在り方に関すること
  • 国内外の教育機関、行政機関等との連携に関すること
  • その他両者が必要と認める事項

 協定の詳細は、東京学芸大学の荻上健太郎准教授(教育インキュベーション推進機構)が説明した。荻上准教授は「1つ目と2つ目の柱に関連して、既に多くの企業や団体と共に『未来の学校 みんなで創ろう。プロジェクト』を推進している。このSUGOI部屋は、その取り組みの象徴だ」と語る。

1つ目と2つ目の柱
1つ目と2つ目の柱
荻上健太郎准教授
東京学芸大学の荻上健太郎准教授(教育インキュベーション推進機構)

 3つ目の柱については、同大学が東日本で唯一の「教員養成フラッグシップ大学」と指定されていることもあり、教員を目指している在学中の学生を育てるだけでなく、教員免許を持っているものの、教師の職に就いていない社会人、また免許のない社会人も含めた「リカレント(再教育)事業」を通して、教育に関わる人材を育てること、教育に関わる機会をより広く提供することなどを掲げている。

3つ目の柱
3つ目の柱

 4つ目の柱には、2つの取り組みが含まれている。1つは「OECD日本共同研究国際共創プロジェクト支援基金」という特定のプロジェクトに対する寄付を募る枠組みを作り、その基金を活用してより多くの先生や子どもたちと一緒に「これからの教育の在り方」を作ることだ。もう1つは、「遊びと学びがシームレス」というキーワードに、これまでの常識にとらわれず、学びや教育の方法を広げていこうという「EXPLAYGROUND(エクスプレイグラウンド)」という取り組みとなる。

 「この取り組みには、国内外の教育機関や行政機関との連携が必要不可欠であり、今回の包括的事業連携協定に推進力としての期待をしている」と荻上准教授は語った。

4つ目の柱
4つ目の柱には2つの取り組みが含まれる

 大久保社長は「小中学校の児童生徒に『1人1台端末』を実現できているのは、G7参加国の中で日本だけ」とした上で、「Next GIGA(GIGAスクール構想の次世代版)に向けての課題は山積している。それには教師の働き方改革も含まれるだろう。学習環境の在り方にとどまらず、職員室の環境改善にも取り組み、教員養成や教員教育を行っている東京学芸大学と共に、全国そして全世界に日本の教育の良さを発信していきたい」と語った。

 最後に、國分学長は次のような言葉で締めくくった。

 「1人1台端末の導入から始まり、教育現場においてICTが日常的に定着した現在、この協力体制が日本の教育の未来にとって有意義な一歩となるよう努力すると共に、この協定がそれを前進させる力となると確信しております」

締結式の様子
締結式の様子(左が大久保社長、右が國分学長)
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