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バッファローのWi-Fi 7ルーター「WXR18000BE10P」を試す 無線通信でも実測約9Gbps!有線より圧倒的な高速ぶり(3/3 ページ)

国内において「Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)」の320MHz幅通信が解禁されて時間を置かずに、バッファローがWi-Fi 7ルーター「WXR18000BE10P」を発表した。本機の実力はいかほどのものか、それを支える技術を解説しつつ、実際に試してみよう。

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WXR18000BE10Pの実力は? テスト環境では無線でも約9Gbps!

 WXR18000BE10Pは、同社の個人向けWi-Fi 6/6E対応ルーターのフラグシップモデルのデザインを踏襲している。本体の正面は中央を縦に山折りしたようなデザインとなっており、その上部に、3軸回転機構を備えた4本の外部アンテナが突き出ている。

 事実上の先代モデルとなるWXR-11000XE12との違いは、本体下部のカラーリングと、大きく「7」とデザインされたシールくらいだろうか。

全景
4本のアンテナを始めとして、バッファローの個人向けフラグシップWi-Fiルーターのデザインを踏襲したWXR18000BE10P
シール
Wi-Fi 7対応を示すシール。3本のラインはMLOを表しているのだろうか?

 1つのアンテナには、実は2本のアンテナが内蔵されている。アンテナの根元側には6GH帯用、先端側には2.4GHz/5GHz用(デュアルバンド)アンテナが埋め込まれているという。2.4GHz帯は2ストリーム、5GHz/6GHz帯は各4ストリーム(合計10ストリーム)での通信をサポートする。

 パッと見ではWXR-11000XE12と変わらないものの、実は2.4GHz帯のストリーム(アンテナ)数が「4」から「2」に半減している。しかし、型番から読み取れる通り、各周波数帯の最大通信速度(理論値)は合計約1万1000Mbpsから約1万8000Mbpsに向上している。

3軸回転OK
4本のダイポールアンテナは、3軸回転機構を備えている。向きをうまく調整することで、環境に合わせて最適な通信を実現できる
ちょっと重い
WXR18000BE10Pの重量は、公称で約1700gとなる。据え置き用のスタンドが付属する他、別途フックを用意すれば壁面への設置も可能だ

 有線ポートは、インターネット(WAN)ポートとLANポート1が10GBASE-T(10Gbps)対応で、LANポート2〜4が1000BASE-T(1Gbps)対応となっている。10GBASE-Tのポートは10BASE-T(10Mbps)の通信に対応しないが、現在出回っている有線LAN機器は、少なくとも100BASE-TX(100Mbps)以上の規格に対応していると思われるので、大した問題にはならないだろう。

 現在、理論速度が1Gbpsを超えるインターネット回線が増加傾向にある。にも関わらず、有線LANの10Gbps化はそれほど進んでいない。ネットワークアダプター(NIC)はもちろん、スイッチ/ルーター/ハブの価格がこなれていないからだ。LANポート付きのメディアコンセントが敷設されている住居でも、内部のケーブルが「CAT5A」で10GBASE-Tに対応できない、なんていうことも少なからずある。

 そういった現状を鑑みると、本機の10GBASE-T対応ポートが「WANとLANで1つずつ」という仕様は妥当だろう。個人的には、他のLANポートは2.5GBASE-T(2.5Gbps)対応であってほしかったところだが……。もしかすると「WAN以外は全て無線接続で、LANポートは全く使わない」という家庭の方が、今では一般的なのかもしれない。

有線LANポート
10GBASE-T対応ネットワークポートは、分かりやすく示されている。USB端子(USB 3.2 Gen 1 Standard-A)にUSBマスストレージを接続すると、簡易的なNASとして運用することも可能だ
モードスイッチ
動作モードは「ルーター(ROUTER)」「アクセスポイント(AP)」「中継(WB)」の3つをサポートしており、出荷時は接続状況を自動的に判断して動作モードが選択される「オート(AUTO)」モードとなっている。自動判定がうまく行かない場合は「マニュアル(MANUAL)」モードに切り替えて、動作モードスイッチを切り替えよう

 さて、Wi-Fi 7の高速性を確かめるべく実機で性能測定をしたい……のだが、今のところWi-Fi 7対応のクライアント機器は、「M.2スロットモジュール」「PCI Express拡張カード」といった環境を選ぶものがほとんどである。また、クライアント側のアンテナ数によって通信速度が大きく左右されてしまい、少ないクライアント数での測定ではポテンシャルを十分に発揮できない懸念がある。

 そこで今回はWXR-18000BE10Pを2台用意して、それぞれ10GBASE-T対応の有線LANポートを持つPCと“直結”してWXR-18000BE10P同士の通史速度を計測することにした。やや特殊な環境だが、バッファローも同様の方法で計測しているので、それだけWi-Fi 7対応ルーターの登場がかなり先行したということなのかもしれない。

 具体的には、WXR-18000BE10Pにおいて無線バックホールを使ってメッシュネットワークを構築し、親機役とエージェント役のWXR-18000BE10PをPCに接続して「iPerf3」を使って速度を計測した。親機は自宅端の部屋に設置し、エージェントは自宅内を移動しつつ、「ドア開」「ドア閉」の状態で5回ずつ計測してベストスコアを求めている。

概略図
検証環境の概略図。親機側にはデスクトップPC(Core i5-13400F/2.5GHz、32GBメモリ、Windows 11 Pro、Marvell「Aqtion 10GbE」搭載)を、エージェント側にはノートPC(Dell XPS 13 9380:Core i5-8265U/1.6GHz、8GBメモリ、Windows 11 Pro、センチュリー「CATB3LAN10G」接続)を用いている。iPerf 3のパラメーターは「-w 512M -O 2」としている
AOSS
WXR-18000BE10Pをメッシュのエージェントとして使う場合は、自機と親機で「AOSSボタン」を押すだけで簡単に設置アップできる
TB3アダプター
ノートPC側で使ったセンチュリーの「CATB3LAN10G」は、Thunderbolt 3/4対応の10GBASE-Tアダプターだ。同社の直販サイトでの販売価格は3万2800円となる
シンプル
CATB3LAN10Gは、有線LANポートのみ備えるシンプルなボディーを備える。ケーブルは本体直結だ

 結果は下図を見てほしいが、同一室内であれば8.95Gbpsと、9Gbpsに迫る速度を記録した。最も悪い(遅い)箇所でも2Gbps超で、どの部屋でもおおむね4〜6Gbpsを記録した。少なくとも1000BASE-Tや2.5GBASE-Tでネットワークを構築するよりも高速といえる。

 2.4GHz帯に比べて、5GHz/6GHz帯は高周波であるがゆえに直進性が強い。障害物に電波が吸収されやすいために、本来はドアや壁といった障害物の多い環境などでは実効速度が低下しやすい。

 だが、このことは見方を変えると、電波が外部から到達しにくいともいえる。2.4GHz帯に比べると、5GHz帯や6GHz帯は利用者が少ないことなどから、外部からの干渉を受けにくく、結果として十分な速度が出ているようだ。

ドアオープン
部屋のドアを開けた状態で計測した結果。親機を設置した部屋では9Gbpsに迫る速度だが、最も遠い部屋でも2.62Gbpsと、一般的な有線LANの1Gbps/2.5Gbpsをしのいでる
ドアクローズ
部屋のドアを閉めきった状態でも、意外と速度低下は小さい。場所によってはドアが開いている時よりも良いスコアが出るなど、「誤差の範囲」に収まるケースもあった

フルスペックのWi-Fi 7対応PC/スマホにも備えられるハイスペックさ

 マーケティング戦略として、無線LANルーターの世界ではグレードを簡易的に示すために「AC6000」「AX11000」といった指標が使われることがある。アルファベット部分が対応規格を示し、数値は各周波数帯の最高速度(Mbps換算した理論値)の概数の合算だ。

 バッファローに当てはめると、WXR-11000XE12なら「4803Mbps(6GHz帯)+4803Mbps(5GHz帯)+1147Mbps(2.4GHz帯)≒1万1000Mbps」であるため「AXE11000」と表記することになるが、ルーター〜クライアント間で見ると、周波数帯域別で見た場合の最高速度は5GHz帯または6GHz帯を利用した際の4803Mbps(約4.8Gbps)が最高速度だ。

 今回レビューしたWXR18000BE10Pの場合、同様に表す都「BE18000」という指標となるのだが、MLOが有効なら理論上の最高速度は1万7981Mbps(約18Gbps)に達する。Microsoft Excelの関数で例えるなら、今まで「max()」を使っていたところが「sum()」になるわけだから、その効果は“甚大”だ。

 小型化が求められるクライアントの場合、「複数アンテナの同時使用」という高負荷かつ難易度の高い実装が求められるため、Wi-Fi 7のポテンシャルを存分に発揮することはかなりハードルが高い。それでも、時の流れで各社からMLOに対応したクライアント機器が出てくることは間違いない。

 MLOを使うには、クライアント機器とアクセスポイントの両方が対応していなければならない。アクセスポイントが対応していなければ、クライアント機器の代金に上乗せされているであろう、高度な技術を全く活用できなくなってしまう。

 今後出てくる多様なクライアントのポテンシャルを十分に発揮するためにも、Wi-Fi 7対応ルーターにはWXR-18000BE10Pのようなハイエンド機を選ぶべきだろう。

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