AppleはAIのOS統合をどのようにデザインしたのか? 林信行の「Apple Intelligence」考:WWDC24(3/5 ページ)
注目が集まっていたAppleの生成AIに対する取り組み。ついにWWDC24でその全貌が明らかになった。林信行氏が読み解く。
AIに適しているプロセッサは、もうApple製品の中にある
Appleは2017年以降、AI処理に優れたプロセッサを開発し続けており、既に画像の認識や翻訳など多くのAI処理が、iPhone/iPad/Macのオンデバイスで処理できる。それに対応している機能であれば、通信を行ったり、クラウドサービスにデータを渡したりする必要はない。
それでもデバイス上で処理しきれない高度なAI処理を行う場合は、「Private Cloud Compute」というプライバシーに配慮したサーバの助けを借りる。サーバに送られる情報は匿名化されるだけでなく、そもそも結論を導き出すのに必要な最小限の情報しか送らない設計になっている。しかも、処理を終えたらサーバ上にデータを残さないという徹底ぶりで、プライバシーに配慮を行う。
どうしても、iPhone/iPad/Macだけでは処理しきれないAI処理は、「Private Cloud Compute」というAppleシリコンで動作するサーバに匿名化後、必要最小限のデータだけを送って処理を行うが、このPrivate Cloud Computeにも「提供されたデータを保持しない」「(データは)ユーザーのリクエスト以外には利用しない」「これらのプライバシー保護に関する原則が守られているか確認できるようにする」という3原則が設けられている
このようにユーザーが安心してプライバシー情報を預けられる土台をまずは作った上で、その原則に基づいてパーソナルなアシスタントを動かすのと、後付けの機能でプライバシーを守るのとでは安全性に大きな違いがある。
ChatGPTは「統合」ではない リクエストを外注する「連携」先として採用
ただし、プライバシーに配慮し、できるだけオンデバイスで処理を行う設計のApple Intelligenceだけでは、できることに限りがある。そこでAppleが打ち出したのが、OpenAIのChatGPTと連携させる手だ。
例えば、Apple Intelligenceにはさまざまな分野の専門的知識に基づいた情報の提示や、画像/文章のより深い理解といったことはできず、ChatGPTの方がその点においては優秀だ。
だから、例えば冷蔵庫にある食材の情報からレシピを生成するといった専門知識を必要とするAI処理を頼もうとすると、Apple Intelligenceがその要求にはChatGPTを利用した方が良い結果が得られそうだと説明し、ユーザーからのリクエストを(より安全性の落ちる)ChatGPTにも共有していいかを聞いてくる。
ここでユーザーが「はい」と答えると、Apple IntelligenceがChatGPTにリクエストを送り、結果を表示してくれる。
安全性の落ちるChatGPTを使う場合は、情報を共有してもいいかの確認を促す画面が現れる(左)。ChatGPTとのやりとりは、Apple Intelligenceが用意したウィンドウなどを通して、常にChatGPTからの答えであることが分かるように明確にロゴなどを明示した形で表示する (右)
結果として、iOS 18やiPadOS 18、そしてmacOS Sequoia(セコイア)には、ユーザーの個人情報を知った上で安全にアシストをしてくれるApple Intelligenceと、専門的知識が豊富なChatGPTという2つの異なるAI技術が提供されることになり、ちょっと複雑に見えるが、ChatGPTとの仲介をApple Intelligenceが行ってくれるので、そこまで操作が煩わしくなることはない。
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