約60万円の「Apple Vision Pro」が日本でも発売! 買うかどうか迷っている人に知っておいてほしいこと:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
ついに「Apple Vision Pro」が日本で発売された。米国で発売日に買った筆者だからこそ、日本で買おうかどうか迷っている人に伝えたいことがある。
「情報端末」「コンテンツプレーヤー」としても便利
「情報端末」としてのApple Vision Proは、既に多くのレビュー記事が出回っている。先に紹介した通り、筆者もPC USERで英語版のままレビューをした。その際に感じたことでもあるが、本機は「映像視聴端末」としても素晴らしい出来だ。
先のレポートからアップデートがあった点としては、Webブラウザ(Safari)を通して「Netflix」を開いた際に、4K(3840×2160ピクセル)での動画再生が可能となった点がある(余談だが、Metaの「Quest 3」でも同様にNetflixの4K動画を再生できるようになった)。
完全な遮光環境で外光に影響を受けずに楽しめる4K/HDRの映像作品は、どれも素晴らしい画質だ。3D映画の表現も、(対応製品がほとんどなくなったが)プロジェクターやTVと比べても格段の品質で楽しめる。Apple Vision Proで改めて3D映画を楽しんでみると、新たな発見があるはずだ。
Apple Vision Proでは、Safariを通してNetflixを楽しめる。Netflix側のアップデートによって、Apple Vision Proでは最大4K解像度で動画を楽しめるようになった
「Apple TV+」では、Red Bullとのエクストリームスポーツシリーズ、「The Weeknd」、アリシア・キーズなど音楽アーティストのコンテンツ、アカデミー賞受賞監督撮影による180度立体視の短編映画「Submerged」など、180度パノラマの高精細映像作品が複数楽しめる。いずれも極めて正確なヘッドトラッキングを伴う立体音響が組み合わされており、臨場感がある。今後も、新作がリリースされるという。
またAppleは、Apple Vision Proの高精細表示を生かすべく、8Kパノラマ動画専用のエンコーダーを用意している。このエンコーダーはBlackMagic Designの「DaVinci Resolve」などで利用可能で、高精細なパノラマ映像の制作を高品位に行えるワークフローの整備にも熱心だ。
visionOS 2では、Macの仮想ディスプレイとして利用する連携機能について、2024年末までに「超ワイドスクリーンモード」が追加される。現在は最大で「4Kディスプレイ」を1枚投影できるが、アップデート後は横方向に2倍の解像度を持つ超ワイドスクリーンを、空間中にカーブディスプレイとして再現できるようになる。
ちなみに、visionOS 2では、「環境」モードで周囲の視界を遮断して作業したい場合に、ワイヤレスキーボードを接続しているMacのキーボード部分を自動的に識別し、その部分だけ“実態映像”として見せることで使いやすくする機能も追加されている。
加えて、このバージョンでは2Dの写真をタップするだけで簡単に3D写真を作成できる機能も提供される。機械学習を使用して左右の視点を生成し、自然な奥行きを持つ空間写真に変換するというものだ。「写真」アプリでは、Apple Vision Pro用向けに新しい「SharePlay」が導入され、デジタルペルソナを使って離れた場所にいるApple Vision Proユーザーとまるで同じ場所に存在しているかのようにパノラマ写真や空間写真、空間動画をを楽めるようになる。
操作性の面でも、手のひらを見つめるとホームボタンを示すアイコンが表示され、軽くタップするだけでホームビューを開いたり、そのまま手のひらを返すと時間とバッテリー残量を確認できたり。そこでタップするとコントロールセンターを呼び出せたり……という新しい操作方法も加わる。
システムとしては未成熟でも体験の質は高い
まとめになるが、率直にいうとApple Vision Proはシステムとしてはまだ未成熟だ。これはハードウェアだけのことをいっているのではなく、ソフトウェア(visionOS)も同様である。未完成な部分と、未熟な部分の両方が混在している。恐らく、Apple Vision Proならではの使い方やアプリも今後、いろいろな提案がされる中で、やがてヒットアプリが出てくるという順番になるだろう。
言い換えれば、現時点で(映像作品やMac用の)ディスプレイとしての使い方を除けば、「斬新で楽しい体験はあっても、HMDを積極的に使いたい」「装着の煩わしさを乗り越えてでも使いたい」といったルールチェンジをもたらす存在になるかといえば、そこまでは至っていない。
確かに、体験の質やこれまでの2DアプリにはないUIなどは魅力だが、重さや操作性(視線入力とハンドジェスチャーの確実性や制約)などのハードルが高く、そうした基本的な装着性を高めなければ、ルールチェンジは起きないのではないかとも思う。
筆者は1つの代案(?)として、額に重さを分散するサードーパーティー製ストラップを活用している。しかし、根本的な課題解決にはAppleが第2世代以降の製品で大幅な軽量化やストラップの改良を施す他ない。
一方で、ディスプレイや内蔵スピーカーの質の高さ、コントローラーを必要としないUIのコンセプトなど、体験の質が高くインスピレーションを沸き起こすこともまた事実だ。そこに本製品の価格を掛け合わせると、どうなのか――そこはあなた次第といったところだろうか。
為替レートが「1ドル=100円」の時代なら、まだ気軽に楽しめただろうが、現在の価格では積極的にお勧めすることに慎重にならざるを得ない。ただし、あなたが開発者やクリエイターとして、このジャンルの製品に関して可能性を感じているなら、この世界に飛び込むのもいい。そして、少し先の未来を垣間見ることにコストはいとわないのであれば、間違いなく次世代の体験を得られることは保証したい。
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