Core Ultra(シリーズ2)にデスクトップ/ハイエンドモバイル向けモデルが登場! これまでのIntel製CPUとの決定的な違い(5/5 ページ)
Intelが、Core Ultraプロセッサ(シリーズ2)に高性能デスクトップ向けの製品(開発コード名:Arrow Lake-S)を追加する。同時に、高性能モバイル向け製品(開発コード名:Arrow Lake-HX/H)が追加される
チップセットは「Intel 800」、CPUソケットは「LGA 1851」に
第12〜13世代CoreプロセッサおよびCoreプロセッサ(14世代)は3世代に渡り物理的/電気的に互換性を有していたが、今回のArrow Lakeではモデルチェンジされる。Core Ultra 200S/200HXプロセッサはチップセットが「Intel 800シリーズ」となり、Core Ultra 200SプロセッサのCPUソケットは「LGA 1851」となる。
Core Ultra 200S/200HXプロセッサでは、CPU直結のPCI Express 5.0バスが20レーン用意されている。20レーンのうち、16レーンは外部GPUで、4レーンはNVMe SSDで使う想定だ。第12〜13世代CoreプロセッサおよびCoreプロセッサ(14世代)と比べると4レーン増しで、より高速なNVMe SSDも使いやすくなる。
これとは別に、CPU直結のPCI Express 4.0バスも12レーン用意されている。12レーンのうち、8レーンはチップセットとのインターコネクト(DMI 4.0)として使われ、残りの4レーンはNVMe SSDやThunerbolt 5ポート(最大5基)などの接続に利用できる。4レーンをどう使うかは、マザーボード/PCメーカー次第となりそうだ。
加えて、Core Ultra 200S/200HXプロセッサではCPU側にThunderbolt 4(USB4)ポート(最大2基)も搭載している。
CPU直結のバス類。PCI Express 5.0バスは20レーン、PCI Express 4.0バスは12レーン(うち8レーンはDMI 4.0接続用)を備えた上で、別枠で最大2基のThunderbolt 4ポートも備えている
Intel 800シリーズチップセットは、マザーボード/PCメーカーの考え方次第でいろいろな入出力インタフェースを設置できるように設計されている。ただし、DMI 4.0の帯域の上限は超えられない。
チップセットのラインアップの詳細は公表されていないが、最上位モデルを基準とすると以下のポートを設置できるとのことだ。
- PCI Express 4.0バス:最大24レーン
- eSPIポート:最大4基
- USB 3.2ポート:最大10基
- USB 3.2 Gen 2x2で使う場合は最大5基
- USB 2.0ポート:最大14基
- Serial ATA 3.0ポート:最大8基
また、チップセットにはWi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)規格の無線LANとBluetooth 5.3、1000BASE-T規格の有線LANも統合されている。最新のWi-Fi 7(IEEE 802.11be)規格の無線LANやBluetooth 5.4、2.5GBASE-T規格の有線LANには、モジュールを追加することで対応可能だ。
デスクトップ向けではCUDIMM/CSODIMMメモリも利用可能に
Core Ultra 200Sプロセッサは、DDR5規格のメモリをサポートする。動作クロックは定格で最大6400MHz(DDR5-6400)となり、デュアルチャンネル対応だ。容量は最大192GBで、システム構成によってはECC(エラー誤り訂正)対応モジュールも利用できる。
メモリモジュールについては、従来のDIMM(UDIMM/SODIMM)に加えて新規格の「CUDIMM(Clocked UDIMM)」や「CSODIMM(Clocked SODIMM)」もサポートする。
CUDIMMとCSODIMMは、高クロックのDIMMを安定的に動作させるために生まれたもので、6月に行われた「COMPUTEX TAIPEI 2024」では、数社のマザーボードメーカーが対応マザーボードやメモリモジュールを参考出展していた。もしかすると、Core Ultra 200Sプロセッサ対応マザーボードの上位モデルは、CUDIMMやCSODIMMをサポートすることになるかもしれない。
新しいメモリモジュール規格「CAMM2」に対応する、デスクトップPC向けマザーボードのプロトタイプ。CAMM2はCPUの近くに配置することが特徴で、CPUとメモリを大きなヒートシンクで“まとめて”冷却することもできる。ある意味で合理的なアイデアとも思える
上がCUDIMM、下がCSODIMM。ぱっと見では今までのUDIMMやSODIMMと変わりないように見えるが、基板にクロック安定化回路(モジュールの中央部にあるチップ群)を用意していることが大きな違いだ
かなり魅力的なArrow Lake 成否の鍵は「マーケティング」?
Core Ultraプロセッサ(シリーズ)のトップエンドを担うことになるArrow Lakeは、性能重視のPCユーザー(エンスージアスト)や、最高のゲーム体験を追求するPCゲーマーにとっては待望の製品だ。
Intelの説明を聞く限り、Arrow Lakeはアーキテクチャ面においてかなり先進的で、Core Ultra 200Sプロセッサは競合のAMDのRyzen 9000シリーズと互角かそれ以上に渡り合えるCPUだと感じた。「実際の性能はどうなんだ?」という点は、今後出てくるであろう各メディアのベンチマークテストの結果待ちというところだ。
ただ、不安要素があるとすると、ユーザーが見かけ上のスペックだけで判断してしまう可能性を否定できないという点だ。ハイパースレッディングを廃止したことでスレッド数は削減されているので、「スレッド数が少ないから性能が低下した」と勘違いされるかもしれない。
競合のAMDは、今のところ同時マルチスレッド機構(ハイパースレッディング機構)を廃止していない。もしもユーザーに「同じコア数なら、スレッド数が多い方がパフォーマンスがよい」という観念が固定されているとなると、素の良さを知ってもらう前に敬遠されないか――そこが気に掛かる。恐らく、Intelもこの点は心配しているだろう。
Intelは、以下の要点をユーザーに強く“理解”してもらう必要があるだろう。
- 平均IPCが劇的に高められた近代CPUでは、ハイパースレッディング機構を使っても「見かけのスペック」ほどの性能向上を期待できない
- 高いシングルスレッド(逐次実行性能)性能を持つPコアは、ハイパースレッディング動作(≒実行スレッドの切り替え)による遅延を排除した方が高い性能を得やすい
- ハイパースレッディング機構を搭載するコストをEコアの増量に回して、スレッドの「適材適所」的実行を推進した方が全体のパフォーマンスは高まる
筆者自身も、上記のIntelの主張には強い関心を抱いている。Arrow Lakeのパフォーマンスを早く体験したい。
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