バッファローのSOHO向け新型NAS「TeraStation TS3030シリーズ」を情シス目線で試す 中小規模ビジネスで「2.5GbE」はメリットになるのか?(3/3 ページ)
バッファローが、小規模オフィス/SOHO向けのエントリーNASを一新した。そのパフォーマンスはいかほどか、実際にためしてみよう。
設定は「NAS Navigator2」から簡単に
TS3030シリーズの設定は、Webブラウザからアクセスできる設定画面から行う。Windows PCやMacであれば、バッファロー独自のアプリ「NAS Navigator2」から設定画面を開くことも可能だ。
これはラックマウントモデルであるTS3430RNシリーズも同様だ。「ラックマウントモデルの運用は(設定面で)専門知識が必要」と思っている人もいるかもしれないが、本機ならWebブラウザから設定できるので、常駐のシステム担当者がいなくても安心して利用できる。
NAS Navigator2を使えば、TeraStationのIPアドレスが分からなくても管理画面にアクセスしやすい。画像はWindows版だが、macOS版もあるのでMacを運用しているオフィスでも便利に使える
2.5GBASE-T対応は効果てきめんか?
先代のTS3020シリーズと比べた場合、TS3030シリーズの一番のメリットは2.5GBASE-Tポートを備えていることにある。
少し前までは、1000BASE-Tポートよりも高速なネットワークに対応するNASを探すと、10GBASE-T(10GbE)まで“ジャンプ”しなければならなかった。理論上のネットワークの最高速度は一気に10倍に上がるものの、カテゴリー6(長さ55m以内)またはカテゴリー6aのLANケーブルを使わなければならないという制約があり、機器だけでなくケーブルのリプレースも求められることがある。
また、10GBASE-T対応のネットワーク機器は高速な分だけ発熱も大きく、何の考えなしにサーバ室やサーバラックに据え置くと“オーバーヒート”してしまうこともある。機器やケーブルも含めて、コスト面はもちろん、運用面においても大きな課題を抱えていた。
その点、2.5GBASE-Tであれば、10GBASE-T対応機器よりも価格は手頃だ。また、ケーブルも1000BASE-T環境で多用されているカテゴリー5eのものを流用できる。発熱もそこまで激しくない。
昨今、2.5GBASE-T対応のLANポートを備えるPCが増えている他、2.5GBASE-T対応ルーター/ハブ/スイッチも手頃になってきた。今回、ビジネス向けのTeraStationのエントリークラスの製品でも2.5GBASE-T対応を果たしたことは、小規模オフィスやSOHOのネットワークパフォーマンスの“底上げ”につながる観点ではありがたい。
しかし、TS3030シリーズはHDDのみで構成されたNASだ。RAIDを構成したとしても、2.5GBASE-Tのメリットを享受できるのかと疑問に思う人もいるだろう。
そこで今回は、RAID10(TS3230DNのみRAID1)でアレイを構成した上で、「CrystalDiskMark 8.0.4」を用いて、1000BASE-Tポートを利用した場合と、2.5GBASE-Tポートを利用したときのパフォーマンスを測定してみた(PC側は2.5GBASE-Tポート搭載)。
まず、読み出し速度は以下の通りとなった。
- 読み出し(SEQ1M Q8T1)
- TS3230DN 1000BASE-T:毎秒118.28MB
- TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒285.24MB
- TS3430DN 1000BASE-T:毎秒118.28MB
- TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒286.25MB
- TS3430RN 1000BASE-T:毎秒118.07MB
- TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒295.48MB
- 読み出し(SEQ1M Q1T1)
- TS3230DN 1000BASE-T:毎秒112.4MB
- TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒249.55MB
- TS3430DN 1000BASE-T:毎秒113.88MB
- TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒252.51MB
- TS3430RN 1000BASE-T:毎秒113.04MB
- TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒260.47MB
- 読み出し(RND4K Q32T1)
- TS3230DN 1000BASE-T:毎秒115.94MB
- TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒120.51MB
- TS3430DN 1000BASE-T:毎秒114.02MB
- TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒121.38MB
- TS3430RN 1000BASE-T:毎秒114.77MB
- TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒134.58MB
- 読み出し(RND4K Q1T1)
- TS3230DN 1000BASE-T:毎秒12.32MB
- TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒12.16MB
- TS3430DN 1000BASE-T:毎秒11.79MB
- TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒12.28MB
- TS3430RN 1000BASE-T:毎秒9.67MB
- TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒12.24MB
結果は一目瞭然で、2.5GBASE-Tポートを使うと、シーケンシャルリード性能が約2.3倍になった。SSDを普段メインで使っているつい忘れがちだが、今発売されているHDDは、一昔前のHDDと比べると格段にパフォーマンスが向上しているのだ。
1000BASE-Tは最大1Gbpsなので、メガバイト換算すると毎秒125MBが限界値であるのに対して、最大2.5Gbpsの2.5GBASE-Tは、毎秒312.5MBが限界値となっている。HDDのシーケンシャルリードは1000BASE-T環境では生かし切れず、2.5GBASE-T環境において初めてパフォーマンスを発揮できるようになっているのだ。
一方、1000BASE-Tでも頭打ちにならないランダムリード性能は、2.5GBASE-T環境でも大差ない。
続いて書き込み性能も計測してみたので、以下に結果をまとめた。
- 書き込み(SEQ1M Q8T1)
- TS3230DN 1000BASE-T:毎秒116.18MB
- TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒169.87MB
- TS3430DN 1000BASE-T:毎秒117.65MB
- TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒252.7MB
- TS3430RN 1000BASE-T:毎秒117.64MB
- TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒251.03MB
- 書き込み(SEQ1M Q1T1)
- TS3230DN 1000BASE-T:毎秒104.01MB
- TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒153.93MB
- TS3430DN 1000BASE-T:毎秒103.18MB
- TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒200.91MB
- TS3430RN 1000BASE-T:毎秒113.8MB
- TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒208.04MB
- 書き込み(RND4K Q32T1)
- TS3230DN 1000BASE-T:毎秒54.29MB
- TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒56.46MB
- TS3430DN 1000BASE-T:毎秒50.55MB
- TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒54.34MB
- TS3430RN 1000BASE-T:毎秒48.63MB
- TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒52.92MB
- 書き込み(RND4K Q1T1)
- TS3230DN 1000BASE-T:毎秒11.86MB
- TS3230DN 2.5GBASE-T:毎秒11.2MB
- TS3430DN 1000BASE-T:毎秒10.35MB
- TS3430DN 2.5GBASE-T:毎秒11.95MB
- TS3430RN 1000BASE-T:毎秒10.11MB
- TS3430RN 2.5GBASE-T:毎秒11.87MB
4ベイモデルについてはシーケンシャルライト性能が約2倍となっている。RAID10の効果はてきめんのようだ。
一方で、2ベイモデルはスコアが約1.47倍程度しか向上しなかった。RAIDの構成の都合で、書き込み性能が頭打ちになってしまったのだと思われる。とはいえ、特にシーケンシャルライトでは一定のパフォーマンス改善効果は見られるので、2.5GBASE-Tへの対応は大きなメリットとなる。
2.5GBASE-Tに対応したネットワーク機器が必要となるものの、既存配線を生かしつつ高いパフォーマンスを得られるという大きなメリットを享受できるのが、TeraStation TS3030シリーズの強みだろう。
クライアントPCがマルチギガに対応していなくとも、上流ネットワークのアクセススピードが速くなれば、複数人でアクセスした際のパフォーマンス改善も期待できる。業務効率の向上も見込める。
エンタープライズ向けのストレージ製品はどうしても高価になりがちだが、NAS本体代とマルチギガ対応スイッチを買いそろえても、100万円以内の予算に収まるTS3030シリーズは、SOHOや中小企業ユーザであっても、比較的パフォーマンスの高いNASを構築できるので、非常にオススメなNAS製品といえる。
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