エプソンダイレクトのデスクトップPCを一手に担う「ちくま精機」 訪ねて分かった1日修理や短納期を実現する“秘密”(4/5 ページ)
エプソンダイレクトのデスクトップPCは、長野県安曇野市にある「ちくま精機」で作られている。意外なことに、ちくま精機にはエプソンダイレクト(と、その親会社であるセイコーエプソン)との資本関係を持たない。そんな両社を結びつけるものは何なのか――ちくま精機の本社を訪ね、その秘密を探った。【更新】
Windows 10の延長サポート終了に向けた増産も実施
創業当初は個人向けPCの販売が中心だったエプソンタイレクトだが、現在は先述の通り出荷台数の8割が法人向けを占める。デスクトップPCの生産を受託するちくま精機でも、それに合わせて生産体制の変更/強化を実施している。
その1つが、特定法人ユーザーの要望に合わせて独自のキッティングを行う「Kライン」の構築だ。このラインでは、外部から遮断された環境で生産が行える。
また、ちくま精機では2025年10月に控える「Windows 10」の延長サポート終了に伴うPCの買い替え需要拡大を見越した準備も進めている。同社では2025年度上期に需要のピークを迎えると想定し、生産ラインの拡大を進めている。
単にラインを増やすだけでなく、既存の設備を有効活用できるように工夫も凝らしている。例えばマニュアルのセット工程では、1人の作業者が3方向に囲むように設置された棚からマニュアルや付属品をピッキングする。しかし、増産を受けて単純に作業者を2人に増やすと、導線の交錯によって作業効率が落ちてしまう可能性がある。かといって、もう1つ同じようなコーナーを作るとなると、そのためのスペースを確保しないといけない上、在庫すべき部材が増えてしまう。
そこで、もう1人の作業者が“逆方向”からもピッキングできるようにすることで解決する予定だという。
さらに、今後は人とロボットが協調して生産する体制を強化したり、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したりすることで、生産工程の自動化/合理化を推進し、人材不足や高齢化といった課題にも対応する方針だ。
エプソンダイレクトの「即日修理」「1日修理」も支える
エプソンダイレクトは「受注から2日で出荷」はもちろん、「最短1日修理」も大きな特徴である。
万が一、製品が故障した場合、修理センターに到着してから最短1日で修理を完了し、製品を返送しているのだ。この手のサービスは他のメーカーも一部で実施しているが、同社の場合は土曜日や日曜日も含めて“1日”(いわゆる「1営業日」でない)ことがポイントだ。これにより、ユーザーがビジネスを止める時間を極力抑えることに貢献している。
ちくま精機ではデスクトップPCだけでなく、ノートPCやタブレットPC、ディスプレイなどエプソンダイレクトの全製品の修理を受託している。コールセンターで修理を受け付けると、シリアルナンバーとひも付けられた「サービスID」が付与され、このIDに基づいて修理工程が管理される。
修理するPCは「個人」と「法人(企業)」、「有償修理」と「無償修理」があり、それぞれに対応は異なる。例えば個人/法人の無償修理の多くは、入庫すると比較的すぐに修理に取り掛かるため、「1日修理」よりも早い「即日修理」が行われる。無償修理では即日修理の達成比率目標を90%としているが、現時点での達成率は85%だという。なお、1日修理(入庫の翌日中に発送する修理)も含めると、ほぼ100%の実績となっているそうだ。
一方で有償修理の場合、故障品が入庫した後に故障箇所の特定を実施し、依頼主に修理続行に関する承認を取る必要がある。そのため、無償修理と比べると時間がかかる傾向にあるそうだ。
なお、エプソンダイレクトでは法人ユーザーには訪問修理サービスも提供している。こちらは全国のサービスセンターで対応を実施している。
どうやって「1日修理」「即日修理」をやっているのか?
ちくま精機に故障品が入庫するタイミングは、「朝一番」「午前10時」「午後」の3回ほどある。同社では、いずれのタイミングで入庫した場合でも、できるだけ即日修理を行える体制を整えているという。
コールセンターなどで修理を受け付けたタイミングで、作業に時間を要すると思われる部位はある程度把握されている。そのため、現場(修理工程)ではあえて時間のかかる(≒困難な)修理から順次進めるようにしている。こうすることで、1日でより多くの台数を修理しているのだ。
修理完了品の宅配業者の最終集荷は午後4時頃なので、それまでに修理を完了させることを目指しているとのことだ。
修理は、「故障品の開封」「部品のピックアップ」「修理作業」「修理完了品の梱包」の全工程を1人の作業者が一貫して担当する体制を取っている。PCの修理担当者は基本的に「デスクトップPC」と「ノートPC」で分けられているが、ほとんどの担当者がどちらの修理も行えるため、入庫予定の修理品の比率に合わせて毎日担当者の比率を調整しているという。
配送されてきた修理品は、開封時点で同封の付属品類を確認する。修理内容によっては不具合の再現作業も実施し、予定している修理方法で問題ないかの確認も行っている。
作業者の前に設置されたディスプレイには、分解手順書、作業の注意点や修理完了後の点検項目が示される。作業前にユーザーへの確認が必要な場合は、確認を行う手順も指示される。
一部の法人では法人固有の検査(点検)項目が設定されていることもあるが、それも含めて全検査を完了しないと出荷(返送)指示を行えない。点検漏れをなくし、修理品質を高めるための仕組みだ。
修理品に修理履歴がある場合は、それもディスプレイに表示される。そこに新しい修理内容などを追記していくことになるが、この情報はコールセンターとも共有されている。修理後にユーザーからコールセンターへと問い合わせが入った場合でも、履歴を元に回答できる。
ディスプレイでは、特定機種における効率的な修理方法や、気を付けるべき内容など、熟練工の「ノウハウ集」も確認できる。熟練工が得た知見や工夫を、全作業者で共有できることも強みといえる。
修理用部品は、作業フロアに置いてある。交換する部品を登録すると、部品が置いてある棚番号が表示され、そこに部品を取りに行く仕組みだ。ただし、一部の部品は別の場所に保管しているという。
エプソンダイレクトでは、2023年7月から「最長7年サポート」を提供している。それに伴い部材の在庫量が少し増える傾向にあるという。例えばノートPCなら、サポート期間が延びると「機能的な故障」よりも移動中の破損など「物理的な破損」による修理比率が増加する。そのため、ノートPCならケース類の在庫が増えるそうだ。
しかし、従来は「最長6年」だったことを考えると、それをさらに1年延ばす程度なので、在庫が極端に増えることはない。また、昨今では共通部品も多く、そのことが在庫増加の抑制に貢献しているという。
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