F1のデータ戦略がAIで変化、攻略の鍵は“シム”からリアルタイム分析へ レノボがグローバルパートナーになった理由:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)
2024年からF1とグローバルパートナー契約を結ぶLenovoの協力で、冠スポンサーとなった日本グランプリにおける“レース運営全体を支えるテクノロジー基盤”について取材した。
4月8日に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催されたF1日本グランプリは、トップチームの一角であるレッドブル・レーシングのドライバーに日本人の角田裕毅が抜てきされた直後であること、さらに鈴鹿サーキットを所有する本田技研工業にとってもチャンピオンチームとの協業最後の年ということもあり、大きな盛り上がりを見せた。
フォーミュラ1(F1)が世界最高峰の技術を集めたレーシングカーによるレースイベントとして、過去にも最新のコンピュータテクノロジーが応用されてきたことは多くの読者が承知しているだろう。
しかし、ひとことで“最新のコンピュータテクノロジー”と言っても、その使われ方は変化している。
筆者がF1に関連したテクノロジー取材をしたのは、小林可夢偉選手が表彰台に上がった2013年以来のことだが、その間にF1におけるテクノロジー活用は想像以上に変化していた。
世界中のサーキットを転戦するF1の“共通リソース”
F1の全体像を理解するために、F1が(常識的には)かなり特殊な運営形態を採用していることからお伝えしておきたい。“F1を支えるテクノロジー”を考える上で、極めて重要な部分だからだ。
F1というレースイベントは、驚くほど幅広いリソースをシーズン中、一貫して確保した上で“全てのリソースが”世界中を移動しながら運用されている。
VIPゲストをもてなすパドッククラブの椅子、テーブル、グラス、お皿、料理人から料理の給仕担当者などに始まり、各種セキュリティゲートのシステム、果ては関係者をサーキットに送迎するドライバーなど、本当にあらゆるリソースが世界中を巡っている。
これはF1を支えるテクノロジー基盤にもいえることだ。F1のイベントを支える技術インフラも独自に開発され、どのサーキットでも同じものが運営されている。
タイム計測用センサーなどタイミングシステムも、サーキットに固定で埋め込まれたものではなく、F1独自のシステムが用意され、フライング検知センサーなども含めて各地に展開されている。
例えば、走行タイムのデータにしてもサーキットのセクターを大まかに分割したタイム表示だけでなく、その細分化された“ミニセクター”のデータまで精密に計測し、即座にチームや映像メディア、モータージャーナリストなどに提供されることで、より高度な戦略分析や解説が可能になっている。
映像配信も基本的には同じだ。コーナーの縁石やコース端のウォールに埋め込まれたカメラなど、さまざまな“特化型カメラ”がサーキット各所に設置され、F1独自ののシステムで制御、運用されている。
この大量に集められた映像、センサーなどからのデータは、単に放映/配信されるだけでなく、チームが戦略を立案するための貴重な情報源として共有されるものだ。
英国にあるデータセンターには、週末に開催されるレースごとに膨大なデータがストリーミングされ、即座に分析され、必要な形で各チームにフィードバックされる。そのサイクルの早さ、正確さ、安定性を支えるために、Lenovoが提供するサーバおよびPCなどが利用されているというわけだ。
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