手を骨折して仕事がピンチ!…… 窮地を救ったのは、あの“分割キーボード”だった(2/2 ページ)
骨折して不便だったことや、それをどのように解決し、どうにか原稿を書くために筆者が行ったことを紹介していく。
骨折していても、原稿を書くために行ったこと
繰り返しになるが、骨折していても原稿を書かねばならない。だが、左手がいつも通りに使えないとなるとキーボードで文字を打つことは難しい。元気な右手と、左手の動かせる指を使って文字を打てなくはないが、やはり思った通りにキーが打てない場面は多く、右手だけで頑張ってみても効率は悪い。
そこで筆者は左手がまともに使えない現在、以下の方法でどうにか原稿を書いている。
スマートフォンの音声文字起こし
手が使えないのであれば、手以外で原稿を書けばいい。そこで今回試したのが「音声からの文字起こし」だ。
実際取材でもインタビューなど以前は手書きでメモを書いたり、ボイスレコーダーで録音したものを聞き返して文字に起こすようなことを行っていたが、最近はスマートフォンのAI機能を活用して、音声からの文字起こし機能を使う場面が多い。
実際この文字起こし機能だが、機種によって文字起こしの精度にばらつきはある。より確実な文字起こしをしたい場合に、有償の文字起こしサービスを利用するという方法もあるが、まずはお試しとして「Google Pixel 9 Pro」を使うこととした。
音声からの文字起こしだが、製品名や専門用語などはどうしても片仮名や近しい違う言葉になってしまうが、精度はかなり高い方だろう。
文字起こししたデータはGoogle Pixel 9 Proから、クラウド経由でPCに取り込むこともできるので、あとはいつも通り使い慣れたテキストエディタにコピーして、細部を直していくことで原稿の体裁を整えることができた。
左右分割キーボード
音声からの文字起こしで原稿の土台を作ることはできたのだが、細部を直していくにはやはりキーボード操作が必要だ。もちろん全文を書くのに比べれば負荷が軽めの作業なので、左手が不自由な状態でも意外といつものキーボードで修正作業を進めていくことはできる。
だが、そもそも普通の運指ができないのであれば、普通のキーボードを使わないというのも1つの解決策になる。そこで用意したのが左右分割キーボードだ。
現在使っているのは、YouTuberであり、dripの代表取締役CEOも務める堀口英剛氏が製作している「conductor」というキーボードだ。
conductorは40キーとキー数が少なく、キーが格子配列かつ約17mmと一般的なキーボードよりもキーピッチが狭い。また、左右分割かつ完全ワイヤレスで設置場所の自由度が高く、ZMK Studioによるキーカスタマイズにも対応している。
これらの仕様は、筆者の骨折した左手との相性がとにかく良い。骨折で手首を動かせない分、普段のキーボードの位置に左手を持ってくるのが難しいのだが、分割キーボードであれば設置場所が自由なので、左手がつらくない場所に置いてタイピングできる。さらにconductorのようにキーピッチが狭いということは、指のキー移動を最小限で済ませられる。そしてキーカスタマイズで親指が担うキー操作を違う指、違うキー同士の組み合わせで実現するようにもできる。
もちろん変則的なキー配列なので慣れは必要なのだが、使っているうちにだいぶ慣れてきたことで、右手だけでキー入力を行うよりもスムーズに入力することが可能になった。
現代技術で、手が使えない不便が解決できるいい時代
商売道具である腕をけがしてしまったことで、日常生活だけでなく仕事にも支障が出てしまう状況には、正直かなりのショックを受けた。
例えばハンドソープのポンプを押すこともできないし、ドアノブをつかんで下げるようなこともできない状態で、手首や親指までしっかり固定されてしまったことで握るといったこともできない、信じられないほど「できないことの多い治療期間」を過ごすことになった。
だが、今回筆者は原稿を書くために「AIによる音声文字起こし」「左右分割キーボード」と、どちらもここ数年のトレンドや技術の進化により、どうにか左手が使えないなりに、手順こそ違えどいつもと同じように原稿を書くことができた。
これが数年前であれば、今回のようなケガの治療中は閉店、あるいは休業状態になっていただろう。
もちろん手が使えない人のために生まれた技術や製品ではないのだが、テクノロジーの進化で、身体の不自由は克服できることを自分の身で体感することができ、今はいい経験になったと少しばかり晴れやかな気持ちになっている。
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