約919g、12.4型でアスペクト比3:2の「Let's note SC」はモバイルの最適解か? 試して分かった強みと弱点(3/3 ページ)
パナソニック コネクトの「Let's note SC」シリーズは、最小最軽量モデルながら、アスペクト比が3:2のディスプレイによって視認性を確保することで、コンパクトボディーによる実用上の制約は感じにくい。ベンチマークテストで実力を検証してみた。
モバイルPCとしてのパフォーマンスを検証する
CF-SC6評価機として今回試用した「CF-SC6BDPCR」は、CPUにIntel Core Ultra 7 255Hを搭載していた。
Core Ultra 7 255Hは、ベースTDPが28W(最大ターボパワーは115Wに達する)となる“H”型番のラインアップだ。処理能力優先のパフォーマンスコア(Pコア)を6基、省電力を重視した高効率コア(Eコア)を8基組み込んでいる他、低消費電力Eコア(LP Eコア)を2基備えている。
Core Ultra 7 255Hは2024年10月に登場した“Arrow Lake”に属し、Pコアはインテル ハイパースレッディング・テクノロジーに対応して“いない”。それゆえCPU全体としては16コア16スレッドとなる。
Core Ultraに統合されたグラフィックスは、Xe-LPGを採用するIntel Arc Graphicsを採用している。Xeコアを7基を組み込み、グラフィックスコアとしての動作クロックは最大で2.25GHzに達する。
さらに、独立したAI専用エンジン(NPU)として「Intel AI Boost」を実装しており、AI処理に関するスピードを高速かつ高い電力効率で実行できる。
この他、処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR5x-6400を採用している。容量は32GBで、ユーザーによる増設はできない。ストレージは容量1TBのSSDで、試用機ではSamsung Electronicsの「MZVL81T0HFBL-00B07」を搭載していた。接続バスはPCI Express 4.0 x4だ。
Core Ultra 7 255Hを搭載したCF-SC6の処理能力を検証するため、ベンチマークテストの「PCMark 10」「CINEBENCH 2024」「CrystalDiskMark 8.0.5 x64」を実施した。
なお、比較対象としてCore Ultra 7 155Hを搭載して、ディスプレイ解像度が1920×1200ピクセル、システムメモリが32GB(LPDDR5x-6400)、ストレージが1TB SSD(PCI Express 4.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。
PCMark 10
- CF-SC6:7149
- 比較対象ノートPC:5948
PCMark 10 Essential
- CF-SC6:1万213
- 比較対象ノートPC:9596
PCMark 10 Productivity
- CF-SC6:1万306
- 比較対象ノートPC:7219
PCMark 10 Digital Content Creation
- CF-SC6:9420
- 比較対象ノートPC:8246
CINEBENCH 2024 CPU Multi
- CF-SC6:705
- 比較対象ノートPC:590
CINEBENCH 2024 CPU Single
- CF-SC6:119
- 比較対象ノートPC:100
CrystalDiskMark 8.0.5 x64 Seq1M Q8T1 Read
- CF-SC6:毎秒6977.81MB
- 比較対象ノートPC:毎秒6989.27MB
CrystalDiskMark 8.0.5 x64 Seq1M Q8T1 Write
- CF-SC6:毎秒5935.70MB
- 比較対象ノートPC:毎秒4895.97MB
比較対象の搭載CPUが同じ処理能力重視のTDP28Wであっても、一世代前のMeteor Lakeということもあってか、PCMark 10、CINEBENCH 2024共にCF-SC6のスコアが“明らかに”上回っている。
ただし、ストレージ転送速度を測るCrystalDiskMarkについては、載せているSSDがともにハイエンドクラスであったことからシーケンシャルリードが毎秒7000MB弱という結果が出ている。現代のSSDとしては、トップレベルのスコアをたたき出している。
なお、バッテリー駆動時間についてはディスプレイ輝度を10段階の下から6レベル、電源プランをパフォーマンス寄りのバランスにそれぞれ設定して、YouTubeでフルHD動画を再生し続けたところ、11時間20分10秒で残量5%となりサスペンドに移行した。
Maxperformanceと充電優先モードも検証した
CF-SC6には、パナソニックコネクトが独自に開発したパフォーマンス最適化機能「MaxPerformance」が導入されている。CPUのパフォーマンスを最大限に引き出すと同時に、放熱設計やファン制御と連動してパフォーマンスと静音、温度管理のバランスを自動で調整する。
とはいえ、UI的に「Maxperformanceただいま有効!」のような明示的な設定項目があるわけではない。環境設定ユーティリティー「Panasonic PC Hub」に用意された「熱とファンの制御」項目において「標準(パフォーマンス優先)」を選択するとMaxperformanceが有効になる。
実際にPCMark 10とCINEBENCH 2024を使ってMaxPerformanceの効果をCINEBENCH 2024のMulti Coreテストのスコアで検証してみた。
CINEBENCH 2024(Multi-Core)
- 標準(パフィーマンス優先):785
- 静音優先:699
- 冷却優先:716
それぞれのスコアを比較すると、確かに標準(パフォーマンス優先)設定で確実にスコアが引き上がる傾向が確認できた。このことからCPU負荷の高い作業ではMaxperformanceが有効になる標準設定を選択し、逆に、静かな場所での軽作業では「静音優先」設定を選ぶのが妥当といえそうだ。
CF-SC6には、パナソニック コネクトが独自に設けたバッテリー運用モードとして「充電優先モード」を用意している。このモードは、バッテリーへの急速充電を優先する代わりに、システムのパフォーマンスを一時的に抑制する。そこで、充電優先モードで処理能力がどの程度下がるのかを検証してみた。
充電優先モードはバッテリー残量が50%以下になると自動的に有効になる。ACアダプター接続中であっても、残量が51%以上ある状態では動作しない。そのため、検証にはバッテリー残量が10%以下の状態からスタートする必要がある。実際に残量6%からACを接続し、31分5秒間充電したところ、44%まで回復したことがBattery Reportから確認できた。
この「充電優先モード」状態でのPC処理性能をCINEBENCH2024で評価した結果、通常状態と比較して明確な性能差が現れた。以下は、バッテリー10%以下→充電開始→充電優先モード有効中に実行したベンチマークスコアである。
CINEBENCH2024 スコア
- 充電優先モード:Multi Core 437、Single Core 119
- 通常モード:Multi Core 705、Single Core 119
このように、充電優先モードが有効になると明らかなスコアの低下が発生する。その差は半減近い。ただ、Single Coreテストのスコアは変わらず、マルチコアの倍率設定だけが下がっているので、シングルコアだけを有効にするアプリを利用する場合は充電優先モードでも不都合は感じないだろう。
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