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「13インチiPad Pro」(M5モデル)を使って分かった、タブレット×オンデバイスAIのもたらす“新しい生産性”本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

Appleの「iPad Pro(M5)」がまもなく発売される。筆者は発売に先駆けて試してみたが、先代のM4チップモデルを上回る可能性を見いだした。その一部を紹介したい。

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ストレージのアクセス速度向上は地味に効果が大きい

 また、先に触れたストレージ性能の向上も普段使いには大きなメリットとなりうる。ストレージへのアクセス速度は容量によって若干の差はあるものの、どの容量も従来モデルの最大2倍の速度になったそうだ。速度向上は最新のNAND技術により、シーケンシャルリード/ライト速度が向上した結果だという。

 実際にiPad Pro 13インチ(M5)の1TB構成で「Antutu Benchmark」のストレージテストを実施してみたところ、シーケンシャルの読み出しは毎秒6.63GB、書き込みは約8.67GBとなった。

 USB Type-C(USB4)端子を介して動画やRAWデータをやりとりする際にかなりの効果がありそうだが、実際にアプリを使う段でも、特に写真や動画を扱う場合は有意な違いが出る。

 まず「Lightroom for iPad」でのサムネイル生成は明らかに高速化している。体感では従来の半分以下の時間で表示される。5000万画素のRAW画像を大量にカメラからインポートする待ち時間も短縮もされた。

 また、「Final Cut Pro for iPad」のタイムライン上で複数の「ProRes RAW」トラックを配置した場合のリアルタイムプレビューなど、データアクセスが頻繁になりそうな画面でデータの読み出しが追いつかずにフレームがドロップする現象が見られなくなった。

ストレージ
Antutu Benchmarkで1TBモデルのストレージパフォーマンスをチェックしてみた。タブレットでこれだけのスピードが出るのはちょっとすごい

タブレットの可能性を広げる「オンデバイスAI」

 さて、M5とiPad Proの組み合わせは、このジャンルの製品にどのような影響を与えるだろうか?

 タブレットは、あらゆる姿勢で使うものだ。立っても、座っても、寝転んでも使える。そしてクライアント先でのプレゼンテーション、移動中の新幹線、ソファーでリラックスして……といったように通常のノートPCでは使いづらい状況でも、柔軟に対応できる。

 一方で、かつてのタブレットには「生産性の壁」があった。コンテンツの消費には優れているが、創造には向かない――そう見なされてきた。複雑なプロジェクトの管理、大量のデータの処理、高度な編集作業は、やはりノートPC、あるいはデスクトップPCの領域だと考えられていた。

 しかし2025年、AppleはiPadに「マルチウィンドウシステム」を導入した。生産性において“PC並み”を目指しているのは明らかで、ここにAIを組み合わせることで限界を突破しようとしている。

いえーい
マルチウィンドウシステムによって、iPadはPC並みの生産性を持ちうるツールとなった。特にパワフルなiPad Proでは、その恩恵を大いに受けやすい

 例えば「Procreate」でイラストを描く際、ラフスケッチを描くとAIが完成形のバリエーションを提案したり、「DaVinci Resolve」でAI機能で強化されたカラーコレクション機能を使って動画の色を自在に操ったりすることができる。

 「メモ」アプリで手書きメモを取る際、Scribble機能が手書き文字をリアルタイムでテキスト化し、さらに「Apple Intelligence」がメモの内容を解析して関連情報を提示する。「明日の会議の議題」と書けば、カレンダーから明日の会議をピックアップし、過去の関連会議のメモも参照できるようにする。この文脈の自動理解が、手書きという自然な入力方法と組み合わさることで、思考を妨げないワークフローが実現する。

 タブレット型の端末は、ユーザインタフェース(UI)や画面サイズに制約がある。一方で、タッチパネルやApple Pencilといった要素では、Macを上回るUIの幅を備えている。これらをAI機能と組み合わせることによって、より複雑なことをよりシンプルな操作により可能にする。

ベンチマークが示す圧倒的な性能向上

 Appleは、公式サイトにおいてiPad Pro(M5)のパフォーマンスを計測した結果を旧モデルと比較している(絶対値ではなく相対比であることに注意)。 先に触れたDraw Things: AIのテスト結果だけでなく、例えば「Affinity Photo 2」のMLノイズ除去では、M4モデル比で最大2.9倍、M1モデル比で最大4.9倍の速度で進み、「Adobe Lightroom」のAIノイズ除去は、M4モデル比で最大2.7倍、M1比で最大5倍の速度で行えるという。

 しかし、これらの数字はもちろん単なる数字だ。しかしながら、これほどAI処理のスループットは底上げされたならば、あなたが開発者だとして「次に何をしようかな?」と考えるきっかけにはなるだろう。これだけの高速化によってもたらされた能力を使って、より優れた、誰かを驚かせるようなAI機能を実装したいと思うに違いない。

 なお、筆者が「Geekbench 6」で行ったベンチマークテストでも、従来のiPad Proを圧倒するパフォーマンスは確認できた。

CPUテスト
Geekbench 6のCPUテストの結果
GPUテスト
Geekbench 6のGPUテスト(Metal API)の結果

 M1チップの登場から約5年――Apple Siliconの電力効率革命がもたらした変化を、私たちは目の当たりにしてきた。2025年秋、iPad Pro(M5)の登場は、オンデバイスAI革命の”元年”を示しているように思える。

 今後5年間で、タブレット×AIがどれほど進化するか、まだ完全には予測できない。しかし、確実に言えることがある。iPad Pro(M5)は、その進化の基準点となる。

機材協力:Apple Japan合同会社

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