Snapdragon X2 Elite/Extremeは初代モデルから2年でどこまで進化したのか:鈴木淳也の「Windows」フロントライン(2/3 ページ)
Qualcommが、11月に開催した「Snapdragon Architecture Deep Dive 2025」で、同社のPC向け最新SoC「Snapdragon X2 Elite」の詳細を明らかにした。その内容をお届けする
市販のゲームタイトルで90%以上の対応を目指す「Adreno」
今回の「Snapdragon X2 Extreme」と「Snapdragon X2 Elite」は、Oryonや80TOPSに到達したNPU(Hexagon)の処理能力に着目されがちだが、どちらかといえばGPUである「Adreno」の強化が大きいかもしれない。
Qualcommによれば、前世代のX Eliteとの比較で平均で2.3倍のパフォーマンス向上が見込まれ、同等のパフォーマンスを実現するのであれば消費電力は前世代の25Wに対して10W程度で済むなど、登場から2年の時間が経過しているとはいえ、非常に大きなステップアップを果たしている。
また省電力を志向したSnapdragon X2 Eliteのみならず、あえてExtremeという制限なしの上位モデルを投入したことからも分かるように、各種クリエイティブ作業、そしてゲーミング市場を明確なターゲットにしており、その際にGPU性能が重要になることからも、今回の処理能力の大幅な引き上げの注力ポイントが見てとれる。
同社によれば、GPUの継続的な強化のためにドライバの更新頻度を従来の四半期ベースから将来的に月次ベースへと移行することを予定しており、加えてX2 Elite/Extreme搭載製品が市場投入される2026年第1四半期には、市場のゲームの90%以上が同プラットフォーム上で動作することを目標としているという。
率直なコメントになるが、初代のSnapdragon X Eliteが上にも下にもどっちつかずの性能で、訴求力が弱いという印象だったが、このあたりを積極的に改善していこうというのが、今世代のSnapdragonのPC向けプロセッサの特徴となる。
アーキテクチャ的な特徴だが、GPUの機能を分割した4つの“スライス”からなる構成を採用し、これにより拡張性と歩留まり向上を実現したという。
以前のレポートにもあったように、HPM(High Performance Memory)と呼ばれる21MBのオンチップメモリを備えることで、DRAMへのアクセスで発生するオーバーヘッドを低減させ、16基のレイトレーシング処理ユニットの搭載、そしてジオメトリ処理の強化で前世代の4倍の性能を実現するなど、基本性能の向上を目指している。
Deep DiveではQualcommの担当者らと記者との質疑応答が行われたが、この中で触れられたトピックをいくつかまとめると、ドライバ自体はOS非依存の設計に加えてVulkanの最適化でLinuxゲーミングへの応用が比較的容易なことや、NVIDIAのDLSSのような専用ハードウェアを搭載しないものの、NPUやマトリックス命令の組み合わせで超解像(GSR:Game Super Resolution)が可能だということを担当者らはコメントしている。
先ほどの対応ゲームタイトル90%オーバーが目標だと触れたが、PCゲーミングの世界では切っても切り離せない問題のアンチチートのソフトウェア対応について、BattlEyeやEasy Anti-Cheat(EAC)のArmネイティブ動作を進めており、ゲームタイトル対応をサポートする。
この他、質疑応答では何度も「dGPU(外付けGPU)やeGPU(外部接続GPU)の対応予定はないのか?」という質問が繰り返されていたが、Qualcommの公式回答としてはあくまで単一のSoCで提供される(比較的)省電力志向のアーキテクチャを志向しており、ニーズに応じて考えるとの方針だ。
PCIeレーンを備えているため接続そのものは可能なのだが、一方でその場合の対応ドライバを用意するのは外付けGPUを提供するベンダー側であり、ビジネス的にSnapdragon X Elite向けに製品を提供するのが成り立つのか、あくまでそれを踏まえての判断になるだろう。
余談だが、Deep Diveの会場の1つになった米カリフォルニア州サンディエゴのQualcomm本社では、ゲーミング担当の研究室内にデモンストレーション用のコーナーがしつらえてあり、各種メジャータイトルを実際に体験することができた。
ゲームセンターにあるようなアップライトボディーのゲームが、実はSnapdragon X EliteシリーズのノートPC上で動作していた……みたいなサプライズもある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Qualcommの新SoC「Snapdragon X2 Elite」に見るPCのトレンド
Qualcommがハワイで開催した「Snapdragon Summit 2025」で、新たなSoCを発表し、2026年での投入を明らかにした。その内容をまとめた。
「Windows 11 バージョン 26H1」がターゲットとする2つのArmプロセッサとは
Microsoftから、「Windows 11バージョン 26H1」がリリースされた(「Windows 11 Insider Preview」にて)。特定のシリコン(SoC/CPU)をサポートするためにプラットフォームの変更を行ったとのことだが、ターゲットとなるプロセッサは何だろうか?
生成AIが笑ってしまうほど高速に――Qualcommが450TOPSの“外付け”NPUを開発 Dell Technologiesのx86ノートPCに搭載
Qualcommは自社のSnapdragon Xシリーズを搭載するPCを強く訴求している。しかし、COMPUTEX TAIPEI 2025に合わせて設置したプライベート展示場に足を向けると、なぜかx86 PCが主体となって展示されているコーナーがあった。どうやら、Qualcommの“新製品”が展示されているそうだ。
Epic GamesのアンチチートツールがArm版Windowsに対応完了 “スナドラ”搭載PCで遊べるフォートナイトも近日リリース
3月に対応を予告していた「Easy Anti-Cheat」のArm対応が完了した。
レノボの小型PC「ThinkCentre neo 50q Tiny Snapdragon」を試す ArmアーキテクチャのデスクトップPCはアリ?
レノボ・ジャパンが、Snapdragon X搭載の小型PC「ThinkCentre neo 50q Tiny Snapdragon」を発売した。今までノートPCばかりだったArmアーキテクチャのWindows PCだが、ようやくデスクトップの選択肢も出てきた格好だ。実際に試してみよう。






