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インタビュー

クルマは95%の時間停まっている――シャープが挑む「部屋になるEV」と、大阪・堺筋本町への本社移転が示す覚悟IT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)

ポストコロナ時代に入り、業界を取り巻く環境の変化スピードが、1段上がった。そのような中で、IT企業はどのようなかじ取りをしていくのだろうか。大河原克行さんによる経営者インタビュー連載は、シャープの後編だ。

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シャープが提唱する“超大型家電”としてのEV

―― シャープではデバイス事業のアセットライト化、ブランド事業の成長戦略と共に、新産業領域に取り組む姿勢を示しています。新規事業の進ちょく状況はどうですか。

沖津 今、当社が取り組んでいる新産業領域は、「EV」「AIデータセンターソリューション」「インダストリーDXおよびロボティクス」「宇宙」という4分野になります。

 これらの新産業領域では、鴻海が持つ資産を有効に活用しながら推進していくことになります。例えば、AIサーバ事業は世界で最も多くのAIサーバを生産しているという鴻海の強みを生かして、日本での事業を検討していきます。液晶パネル生産を行っている亀山第2工場は、2026年8月までに鴻海への譲渡が完了します。鴻海は、亀山第2工場にAIサーバの生産ラインを設置する計画で、2027年度にはAIサーバの生産が本格化することになりそうです。

シャープ 代表取締役 社長執行役員 沖津雅浩CEO 中期 復活 鴻海 創業 再成長
かつてはシャープの象徴でもあった亀山第2工場は、鴻海に譲渡される

 当社はこの動きに合わせて、AIデータセンター事業者に対する販売事業の立ち上げを検討していきます。当社は、AIサーバに関してはプロフェッショナルではありませんから、準備には2年程度を要するでしょう。AIサーバの生産が本格化する2027年度には、日本におけるAIサーバの販売事業を立ち上げたいと考えています。

 もう1つ、新産業領域で動いている取り組みがEVです。

―― 2025年10月に開催された「Japan Mobility Show 2025」では、EVコンセプトモデル「LDK+」の第2弾を公開しましたね。

沖津 私は、「LDK+」を超大型家電だと位置付けています。クルマは95%の時間が停車しています。クルマは移動しているときに価値を生みますが、停まっている時間には全く価値を生みませんでした。この停まっている時間に着目したのが、当社が実現するEVです。

 LDK+の名称からも分かるように、ガレージに置いておけば狭い日本の家庭に部屋を1つ増やせるというのが当社の提案です。トヨタや日産、ホンダ、三菱自動車が作っているクルマとは異なり、家につながるクルマという提案をしていくことになります。ガレージに停車しているときには車内の家電や空調を活用でき、バッテリーは非常時にも利用できます。

シャープ 代表取締役 社長執行役員 沖津雅浩CEO 中期 復活 鴻海 創業 再成長
“止まっている時間”にフォーカスしたEVの新しいコンセプトモデル「LDK+」。「Japan Mobility Show 2025」で公開された

 ここでも鴻海の資産を活用します。LDK+は、鴻海のEVプラットフォームをベースにし、そこに内装や機能を追加します。そのため、モノ作りに向けた大規模な投資が必要ありません。日本の市場だけを対象に、当面はB2Bで販売します。価格は現時点では決めていませんが、数千万円のクルマにすることは考えていません。一般の人に買ってもらう価格設定とします。

 また、販売ルートについてはクルマの販売実績を持つヤマダ電機などの家電量販店や、エネルギー関連事業で関係が深い住宅メーカーとも話をしています。LDK+を購入すれば、住宅用蓄電池を購入しなくても済むという提案も可能になります。当社の社用車に採用する計画もあります。

 このように、新産業領域においては鴻海の資産を活用していく考えです。また、鴻海は、いい技術があれば買収したり、人を採用したりする力があります。新産業分野では、そういったことも活用できると考えています。

 当社に対しては、新規事業の取り組みが遅れているのではないかとの指摘があります。コロナ禍では部品が入手できないため新たな製品開発ができず、従来モデルを維持するのが精一杯という状況もあり、これが開発の遅れにつながったり、新産業領域に踏み出しにくい状況を生んだりしていました。

 ただ、焦って新産業領域に取り組むことは考えていません。まずは、既存のブランド事業をしっかりと固める必要があります。その上で新規事業をやっていくことが大切です。複数の新規事業のうち、1つうまくいかなくても土台が崩れない体制を作ることが肝要です。

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