検索
ニュース

なぜ競技用ゲーミングPCは光らない? HPSC久木留所長とマウス軣社長が語るアスリート支援の未来東京ゲームショウ2026(1/2 ページ)

五輪やパラリンピックのトップアスリートの養成を担う「国立スポーツ科学センター(JISS)」に、eスポーツ専門の研究所が開設された。そしてマウスコンピューターは、その研究所に機材を提供している。マウスコンピューターの軣社長と、JISSの久木留毅所長が、eスポーツの未来を語った。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 予定より1日早く9月20日に閉幕を迎えた「東京ゲームショウ(TGS)2026」では、大規模ブースを中心に出展者独自のステージイベントも多数見受けられた。

 「G TUNE」「NEXTGEAR」の2ブランドでゲーミングPCを展開するマウスコンピューターも例外ではなく、ブースの内側にやや大きめのステージを設けて、複数のイベントを開催していた。そのうちの1つが、ビジネスデイの2日目(9月18日)に開催された「【eスポーツの未来を語る】G TUNE × ハイパフォーマンススポーツセンター」だ。

 このイベントでは、マウスコンピューターの軣秀樹社長と国立スポーツ科学センター(JISS)の久木留毅所長が登壇し、五輪選手を支える医科学の研究、JISSの「ハイパフォーマンススポーツセンター」に設置された「ESPORTS LAB」、そしてESPORTS LABとG TUNEの関わりなどについて語った。

軣社長
イベントに登壇したマウスコンピューターの軣(とどろき)秀樹社長
久木留さん
JISSの所長にして、HPSCのセンター長を務める久木留毅氏
海老江さん
イベントの司会/進行はゲームキャスターとして活動している海老江邦敬氏が務めた
当日の模様はYouTubeでもライブ配信された(この動画の5分30秒〜57分10秒が本イベント)

五輪の医科学ノウハウをeスポーツへ

 久木留氏は冒頭、HPSCの取り組みとスポーツ科学の可能性について説明した。

 “ハイパフォーマンススポーツ”の定義は、端的にいうと「世界一を競い合うスポーツ」だ。久木留氏は「五輪/パラリンピック」「米国の4大プロスポーツ」「欧州のクラブサッカー」「国際競技連盟の下に行われるスポーツ世界大会」といったものを挙げつつ、ハイパフォーマンススポーツにおいてテクノロジーによるサポート、とりわけハイスペックなコンピューターを活用したAI(人工知能)によるサポートが重要性が増していると語る。

 HPSCでは主に五輪/パラリンピックを目指すアスリートの科学に基づく支援に取り組んでいるが、プロスポーツはもちろん、歌舞伎やバレエ、そしてeスポーツも高度で卓越したパフォーマンスが求められるという観点でHPSCが取り組む科学的サポートが有効だと考えているという。

 実際、2022年に中国の広州市で開催された「第19回アジア競技大会」では、選手村の温冷浴施設(冷水浴と温水浴によるリカバリー)を最も活用したのはeスポーツの選手たちだったという。

 こうした経緯を経て2026年6月、HPSCの施設「味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)」(東京都北区)の「屋内トレーニングセンター・イースト」内にESPORTS LABを開設したそうだ。

HPSC
HPSCでは科学的根拠に基づく「トータルコンディショニング」に注力しており、それを社会に還元する取り組みも進めているという

ESPORTS LABは3ゾーン構成

 ESPORTS LABは、他競技のトップ選手と交流してマインドを整える「ウェルビーイングゾーン」、従来型のeスポーツについて高度な測定とトレーニングを行う「eスポーツゾーン」、そして自転車やゴルフなど、現実空間での身体運動を反映するゲーム(バーチャルスポーツ)に関する測定やトレーニングを行う「バーチャルスポーツゾーン」の3エリアで構成されている。

 2026年3月、第20回アジア競技大会に出場予定の21人の日本代表候補選手を対象に、NTCにおいて「2025年度第2回NTC合宿」が行われた。これはHPSCが推進する「エビデンスに基づく医・科学支援の効果的手法の調査研究」の一環でもあり、ラボの開設に先行して脳波測定や脳/視覚に関する医学的/科学的な知見の獲得を進めてきたのだという。

ESPORTS LAB
ESPORTS LABの概要
ESPORTS LAB
ESPORTS LABは、大きく「ウェルビーイングゾーン」「eスポーツゾーン」「バーチャルスポーツゾーン」の3つに分かれている

 合宿は単に各種数値を測定するだけでなく、「選手自身のスポーツ医・科学リテラシーの向上(日常での行動変容)」も目的としており、メンタルヘルスや睡眠衛生、自律訓練法、eスポーツ科学など、カリキュラムは多岐にわたる。

 久木留氏は「これまでデータ分析から選手へのフィードバックまでに約2週間かかっていたものが、AIとハイスペックPCの導入によってリアルタイムで可視化・フィードバックできるようになった」と解説する。NTCにおける先行研究と、AI/PCテクノロジーが融合することで、選手がその場で自身の状態を確認し、パフォーマンス向上へ直結させられる環境が整いつつあることを強調した。

 さらに、こうしたプロの知見を一般ゲーマー(ライフパフォーマンス)へ還元する取り組みとして、「体重の2%の水分が減少すると、集中力や運動能力が低下する」といった科学的根拠に基づいた水分補給、オレンジジュースなどによる糖分補給、血流促進、睡眠指導などを網羅した「eスポーツアスリート向けトータルコンディショニングガイドブック」の制作を進めているとのことだ。

合宿の概要
3月に実施した合宿の概要
合宿の様子
3月に実施した合宿の様子。頭部を見るといろいろなセンサーが取り付けられていることが分かる

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る