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さて、新機能紹介の最後としては、“レビュー”機能の向上について取り上げたい。レビューとは言っても製品レビューではなく、英語で言う、ドキュメントを“チェックし合う”という行為を支援するための機能となる。
主なポイントは、「レビュートラッカー」という新機能が追加された点だろう。この機能により、文書の送信先リストを自動的に作成し、送付つぃた文章や注釈に対するコメントが返信されたかどうかをトラッキングすることができるようになる。つまり、レビュー依頼者のレビュー管理が容易になるというわけだ。
また、受け取った注釈コメントをもとの文章へ再入力する必要も軽減される。Adobe PDF文書から直接Word XPファイルへ、テキストに対する編集などの注釈を書き出すことができるようになった。
一挙ファミリー化の内容は
米国でAdobe Acrobatが登場して今年で10年になる。今まで派生製品としてAdobe Acrobat Capture、Adobe Acrobat Messengerが米国では登場しているが、根幹となるAdobe Acrobatの10年目にしてのファミリー化は、意外と遅かった、という印象を受ける。
PhotoshopにLEそしてElementsが登場して一定の成果をあげ、Photoshop Albumとして派生していったことを考え合わせると、Adobeの中のAcrobatという幹は、コンセプト先行から実質的拡大期に入ったと言うべきだろうか。
まずはファミリーの位置づけと、その機能の違いについてざっと説明しよう。
Adobe Acrobat 6.0 Professional日本語版(Win、Mac)
価格:通常版 5万4,800円、アップグレード版 1万9,500円、アカデミック版 1万9,500円
必要システム構成(Win版):
Intel Pentiumクラスのプロセッサ、NT4.0、2000 Pro SP2、XP Pro、XP home、Tablet PC、Internet Explorer 5.01以上、64Mバイト以上のメモリ、245Mバイト以上のHDD空き容量
Professional版だけの機能:
Visio、Project、AutoCADからボタン一つでPDF変換(レイヤー対応)、大判用紙サポート、ルーペツール、パン&ズームツール、雲形ツール、フォームフィールドの設定、プリフライト、分版プレビュー・出力、カラーマネジメント、トンボ・カラーバー設定、PostScript/EPS書き出し
Adobe Acrobat 6.0 Standard日本語版(Win、Mac)
価格:通常版 3万4,800円、アップグレード版 1万2,500円、アカデミック版 1万2,500円
必要システム構成(Win版):
Intel Pentiumクラスのプロセッサ、Windows98SE、NT4.0、2000 Pro SP2、XP Pro、XP home、Tablet PC、Internet Explorer 5.01以上、64Mバイト以上のメモリ、220Mバイト以上のHDD空き容量
Standard版以上に搭載される機能
Outlook/Lotus Notes新規メールの添付文書をボタンでPDF変換、Internet ExplorerからボタンでWebページをPDF変換、ウインドウ分割表示、シャチハタスタンプ、注釈のスレッド化・ステータス設定、レビュートラック、TouchUpテキスト、証明書セキュリティ、電子署名の記入
Adobe Acrobat Elements日本語版(Win)
価格:ライセンス販売のみ(1,000ライセンス単位、米国では1シートあたり28ドル)
必要システム構成(Win版):
Intel Pentiumクラスのプロセッサ、Windows98SE、NT4.0、2000 Pro SP2、XP Pro、XP home、Tablet PC、Internet Explorer 5.01以上、64Mバイト以上のメモリ、95Mバイト以上のHDD空き容量
Elements版以上に搭載される機能
Microsoft OfficeからボタンでPDF変換、PDF変換時に元のOffice文書を埋め込む、各種ファイルを右クリックでPDF変換、複数のファイルを一度にPDF変換して結合(PDFバインダー)、PDFからWord書き出し、PDFから表を選択してExcel書き出し
Adobe Reader 6.0日本語版(Win、Mac)
価格:無料
必要システム構成(Win版):
Adobe Reader以上に搭載される機能
eBook Reader機能、PDF文書内検索、Web上のPDFを検索、フォームへのデータ入力(オートコンプリート)、フォームデータのXML送信、電子署名の検証、Adobe Photoshop Albumのスライドショー表示
なお、Adobe Acrobat 5.0からAdobe Acrobat Standardへは、無償アップグレードが用意される。受け付け期間は2003年の5月15日〜8月14日だ。
プライスバリューは、上がった? 下がった?
Adobe Acrobat 5は、日本のAdobe Store価格(2003.4.14当時)で、2万8,310円だった。クラスとしての位置づけは、Standerd版と同等であろうから、これは価格が上昇したような感触も受ける。ただ、前段の新機能紹介では触れていないが、Standerd版以上には日本語OCR機能も付属する。それを考え合わせると、まずまず無難な価格設定と言えるかも知れない。
バーティカル市場が対象の中心となるProfessional版については、大判対応やカラーマネジメント対応などが付加された上での、価格上昇という印象はは否めないだろう。
Acrobat Elementsについては、店頭では販売せず、ライセンス単位も非常に大きいため、これまた特殊だろう。ただ、バリューに対するプライスは非常に安いと言える。
最後にMac版について、機能制限が複数発生している。Microsoft OfficeやInternet Explorerとの連携部分、AutoCADなどとの連携部分、ヘッダー・フッタの設定、透かし設定、パスワード設定、セキュリティ・電子署名の設定、などだ。Windows OSやWindows版アプリケションに依存する部分でもあるので、いたしかたないところか。
大量ライセンスバージョンであるAcrobat Elementsの登場や、日本語OCR機能の添付など、にぎやかな面もあるが、いずれにせよ今回のバージョンアップにより、オフィス文書環境をPDF化する切り札になったことに間違いはない。PDFを作り、送り、レビューし、反映させる。堅実なアドビのバージョンアップらしく、しっかりと根幹の部分の機能強化がなされていることが、真のハイライトだ。
あとはユーザーが、PDFをやるか、やらないか、である。
[大出裕之, ITmedia]
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