多様なニーズに応える14機種58色――シャープの2009年冬・2010年春モデル(2/2 ページ)
シャープがドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル向けの2009年冬・2010年春モデルのラインアップ全14機種58色を紹介する携帯電話事業説明会を開催。通信システム事業本部長の大畠昌巳氏が、新モデルラインアップの狙いと今後の戦略を語った。
多様化するユーザーニーズに対応
厳しい競争の中でユーザーからの支持を集めるためには、多様化するユーザーのニーズに応える形で製品を展開していくことが重要だと大畠氏は言う。今回カメラ機能を強化したモデルを多数ラインアップしたのも、Web上などで写真を使ったコミュニケーションが普及し、携帯電話でブログやSNS、写真共有サービスを利用するユーザーが増えていることが一因にある。
「ケータイのカメラに対するニーズは確実に高まっている。日常的に利用する機能の1つであり、利用頻度が高いという調査結果も出ている。今後もシャープは、コンパクトデジタルカメラの進化に遅れをとらないよう、高画素化や高画質化を進める。それと同時に、携帯電話ならではの、カメラを使いこなせるユーザーインタフェースやアプリケーションの提案も重要になる。単純に高機能になればいい訳ではないと考えている」(大畠氏)
端末数が過去最大の14機種58色にまで増えたのも、端末需要が飽和する中で多様化するニーズに対応するための措置だ。他社のラインアップを見ても、特化型端末やデザイン注力モデルが相次いで登場しており、バリエーションは拡大する方向にあると大畠氏。メーカー各社は機能以外にも携帯電話の価値向上に注力していると話した。
ちなみに端末のバリエーションは増えているものの、内部では共通化されている部分もあり、ベースモデルはそれほど増えているわけではないという。「ユーザーの要望やニーズに応えようとすることで、今回のようなラインアップになった。モデル数が多いので、採算面では結構苦しいが、ベースモデルに対してのバリエーションという形でモデルが増えている。そのため効率化なども含めて何とかできているという状況だ」(大畠氏)
スマートフォン、そして新規市場への取り組み
スマートフォンを含め、今後シャープがどのような戦略で端末を開発していくかについても語られた。
これまでスマートフォンというと、コアユーザーやビジネスパーソン向けの端末ととらえられることが多く、「一般のユーザーにはあまり浸透していなかった」と大畠氏。しかしiPhoneの登場により、状況が変わった。ユーザーのすそ野が一気に広がり、いわゆるアーリーアダプターだけでなく、一般の人もiPhoneのような端末を手にとることが多くなり、「スマートフォンが身近なものだというイメージに変化している」(大畠氏)という。これをきっかけとして、スマートフォン市場が拡大していく可能性が十分にあると話した。
特にiPhoneの登場は、新しいビジネスモデルを創出したことに注目しているという。
「iPhoneを中心とした新たなビジネスエコシステムが活況を呈している。アプリケーションの開発は、参入に値する市場規模や、開発キットの存在、ハードルの低さなどが重要になるが、iPhoneはこうした条件を満たしつつあり、プレーヤーの数が拡大している。端末メーカーは端末の売り上げだけでなくアプリの売り上げなども得ることができ、端末とアプリの両面でお客様に訴求できるようになっている。そして端末やアプリの充実が、さらなるユーザーの獲得につながり、それがアプリ開発の呼び水になる、という良好な循環を生んでいる。新しい商品がビジネスモデルを創出し、市場をさらに拡大できることを示す好例だ」(大畠氏)
シャープとしても、スマートフォン市場の拡大をにらんで、オープンOSを採用した端末を、「国内のユーザーのニーズに合わせ、シャープならではの形で」(大畠氏)提供することを計画している。それがAndroid OSを採用した新型スマートフォンだ。詳細はあまり語られなかったが、2010年には発売する予定で、FeliCaの搭載やキャリアサービスへの対応なども検討しているという。おサイフケータイ対応のAndroid端末などが出てくれば、スマートフォンの購入をためらっているユーザーにも強力にアピールできることは間違いない。
2台目需要や新規の需要を開拓する動きも活発になっており、そうした市場にも注目しているという。通信機能付きデジタルフォトフレームやネットブックのような通信機能を搭載した商品、セキュリティを向上させた子供向けケータイなど、従来の枠組みを超えた商品が増加している。通信インフラの高速化やパケット通信の定額化を踏まえ、こうした動きはさらに加速すると見られ、それを踏まえた商品展開も必要になるとの見通しを示した。
また2010年以降は、LTEサービスが始まることもあり、通信の高速化と定額化がさらに進む。これを受け、大畠氏は携帯電話によるクラウドサービスの利用が本格化すると見る。「キーボードやカメラなどの入力装置を持ち、必要十分な出力装置(ディスプレイ)を備えるケータイの存在感はますます高まる」(大畠氏)
「魅力あふれる商品の創出に取り組み、業界に活気を取り戻す」
厳しい情勢が続く携帯電話市場だが、前述したスマートフォンや新規需要の開拓など、新しい成長分野の芽生えも見えつつある。その状況を踏まえ、大畠氏は「魅力あふれる商品の創出に取り組み、業界に活気を取り戻す」と力強く宣言した。
「魅力あふれる商品開発を続けるために、ケータイの進化を止めることはしない。業界ナンバーワンのメーカーとして、市場を拡大し、また新しい需要を創出する新規商品の開発も継続して行っていく」(大畠氏)
具体的には、
- さらなる高機能化へのこだわり
- デザインだけでなく、ハイエンドで培った技術を裏付けとした魅力あるミッドレンジ向け端末の開発
- Open OSを活用した新しい商品の創出
の3つの項目を掲げた。
高機能化へのこだわりとは、やみくもに機能を強化することをではないという。ニーズに裏打ちされた、必要とされる機能を極めた上で、ハイエンドモデルのさらなる進化を図る。またミッドレンジモデルでは、ハイエンドモデルで培った技術を、ワンポイントフィーチャーのような形で導入。特徴的な機能を持ちつつ、価格にシビアなユーザーにも満足してもらえるような、バランスのいい商品の開発を目指す。そしてOpen OS戦略として、前述したAndroid OS搭載機を、日本市場に合わせたカスタマイズを施して展開することで、新たな市場を作っていきたい考えだ。
「今後も市場の変化に対して、他社より速くいい製品を展開していきたい」と話した大畠氏は、「来年度もシェアナンバーワンの地位を盤石なものにしたい」と自信を見せた。
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