気負わず作れるデータベース、iPadへの展開も容易――中小企業向けをうたう「FileMaker Pro」の特徴は:9・11の被害者特定システムも2日で開発(2/2 ページ)
iPadを導入する上で課題となっているのは、今あるデータをいかに短期間で容易にiPad向けに展開できるか。それを支援するのがファイルメーカーのデータベース製品だ。中小企業向けをうたう同社製品の特徴をCFOのビル・エプリング氏に聞いた。
プログラマーやデザイナーがいなくても開発できる
エプリング氏 このような機能をすぐ実装できるのは、中小企業の助けになると思います。企業内にプログラマーがいなくても、ドラッグ&ドロップの操作でこうしたデータベースを作成できるのです。
データベースというと、そっけないUIを想像する方もいるでしょうが、デザイナーでなくても見た目が美しく、操作しやすいソリューションを開発できる機能も用意しています。
また、業務が忙しくて開発する余裕がない企業のために、基本的な業務ですぐ使えるテンプレートを用意していますし、企業のニーズに合ったデータベース開発を支援するサードパーティベンダーもいます。
小さな企業にとっては、Excelのデータを活用しやすくなるのも便利なのではないでしょうか。データのカスタマイズも容易ですし、すぐiPadやiPhoneで活用できる形にできます。使いこなせるところから始めていただいて、徐々に活用範囲を広げるような使い方もいいのではないでしょうか。
9・11の被害者特定データベースに採用、2日間でシステム構築
―― データベースは後から項目を追加するようなことも多く、それが容易にできるかどうかも気になります。
エプリング氏 中小企業の中には、完全なものにしようと気負いすぎるあまり、それが精神的なハードルになって導入に踏み切れないケースもあるようです。FileMaker Proは、誤りを調整して是正できるイテレーション(反復)機能を備えており、柔軟性があります。おおもとのデータベースの作り込みがずさんで、期待通りのものが得られなかった場合でも、イテレーション機能を使って調整をかけられるので、本来の目的に沿った形にリカバーできます。
ルケイツ氏 あとからフィールドを付け足したり削除したり、テーブルの関連づけをし直したり、定義を調整したり……といった作業を柔軟に行えるのです。
このような柔軟性が役立ったのが、米国同時多発テロの被害者の方々の身元を特定するために開発したデータベースです。被害者を識別するために家族の方々から提供してもらった情報と、現場で見つかったさまざまな痕跡の情報を照合するシステムを開発したのですが、入力する情報は身につけているものや身体的特徴、歯の治療の情報などさまざまで、後から項目が追加されることも多いわけです。
重要なシステムでありながら、ルールもなければ既存のプロセスもなく、スペックもおおもとのデザイン設計もない。おまけにきちんとした開発工程を組むこともできなければ、テストもできないという状況でしたが、2日間でシステムを立ち上げることができました。これはあとから修正が効く、柔軟性のある開発環境であることが奏功した格好です。連邦管轄局は、いずれエンタープライズ級のシステムに移行する考えだったようですが、10年経った今でもFileMaker Proが使われています。
iOS向け製品で勝負、Android版の開発は予定なし
―― スマートフォンの市場を見るとAndroidがシェアを拡大しており、Windows Phone 7.5を搭載した端末も登場し始めています。FileMaker GoをiOS以外のスマートフォンに対応させる予定はあるのでしょうか。
エプリング氏 今のところ対応する予定はなく、iOSに注力します。今後、ビジネス市場ではタブレット端末の活用が増えると予想されますが、タブレット市場を席巻しているのはiPadです。ここでの使いやすさを追求することが重要だと考えています。
―― クラウド化が進展していますが、ファイルメーカーの取り組みは。
エプリング氏 企業にとって重要なのは、クラウド化されているか否かではなく、モバイル環境で使えるビジネスソリューションを生み出せるかどうかではないでしょうか。
その点では、FileMaker ProはWeb公開機能を備えていますし、サードパーティー企業が提供するホスティングサービスも利用できます。そのため、ファイルメーカーとして、サービスをクラウドから提供する予定はありません。
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