3電力会社が9月から一斉値上げ、原価の1割削減を求められる:法制度・規制
家庭・商店向けの電気料金が北海道・東北・四国で9月から一斉に値上げになる。3電力会社の申請案に対して、国が1割の原価削減を求めて決着した。その中には役員報酬の減額も含まれるが、もともと申請時の報酬案が高額だったためだ。各社の経営姿勢は利用者の理解を得られるのだろうか。
北海道・東北・四国の3電力会社による電気料金の値上げが決まった。各社の申請案に対して、経済産業省が8月2日に査定方針を示したことで、その方針に従った料金の値上げを9月1日から実施する。北海道電力と東北電力には10%の原価削減、四国電力には10.5%の原価削減が指示された。認可の対象外である企業向けの料金の値上げ幅も合わせて減額することになる。
それにしても経済産業省の査定方針を見て驚くのは、各電力会社が高額の役員報酬を原価として申請していた点である。社内の常勤役員の平均が北海道電力で2000万円、東北電力で3000万円、四国電力は3300万円である(図1)。
いずれも従来の報酬額から削減したとはいえ、すでに値上げの認可を受けた関西電力と九州電力は役員報酬を平均1800万円に抑えるように指示されていた。その状況を認識していたにもかかわらず、3社とも1800万円を上回る金額で申請を出していたわけだ。
5月から値上げを実施した関西電力と九州電力も、申請時には高額の役員報酬を原価に加えていた。関西電力は役員1人あたり平均4100万円、九州電力は3300万円である(図2)。関西電力は値上げにあたって、「お客さまに多大なご負担をおかけしますことを深くお詫び申し上げます」と釈明しているが、そのような意識が役員レベルに浸透していたかは疑問である。
経済産業省は電力会社の役員報酬の水準として、国家公務員の上級幹部である事務次官などの「指定職」と同じレベルが適当であるとの方針を示している。その金額が1800万円である(図3)。ただし指定職の年収は2014年4月から1割程度の上昇が見込まれている。各電力会社の役員報酬も同時期に引き上げられる可能性がある。
一方で東京電力は2012年9月に実施した値上げの際に、役員報酬をゼロにする措置をとったものの、その後に報酬を復活させている。現時点の報酬額は公表されていないが、他社と同等の平均1800万円程度になっていることが想定される。もしそうであれば、社会に重大な影響を与えている電力会社の経営責任のとり方としては軽過ぎる。
こうした電力会社の経営姿勢を、いつまで国民は許容するだろうか。よりいっそう厳しい対応が政府に求められていることは明らかである。
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