世界最大の洋上風力発電所、その送電事業を取得した三菱商事の狙いとは:電力供給サービス(2/2 ページ)
2020年には約5000万kWにまで規模が拡大する欧州の洋上風力発電。三菱商事は洋上風力発電に不可欠な海底送電事業を取得することで、市場拡大と歩調を合わせた事業拡大を狙う。2013年9月には世界最大の洋上風力発電所London Arrayの送電事業を他企業と共同で、700億円を投じて買収した。
世界最大の洋上風力発電所とは
London Arrayは国内で見られる風力発電所とは全く異なる立地条件の基に成立している。London Arrayの位置する北海は、英国と対岸のノルウェーやデンマークに囲まれた海洋だ。海洋の面積は日本の国土の2倍もあるが、平均水深は94mと浅い。テムズ側河口から沖に40km離れても、水深は10m程度しかない。遠浅の海なのだ。London Arrayはテムズ川の沖、ケント州とエセックス州の海岸から約20km沖合に位置している。
London Arrayはその名の通り、海底からそびえる風力発電のタワーがアレイ(配列)を成したものだ。タワーが配置されている海面の面積は100km2。タワーの数は175基、1基の出力は3.6MWだ。ドイツSiemens Wind Powerのタービンを用いた。
大規模な風力発電所であるため、2009年7月の建設開始から完成まで4年を要した。最初の工事は陸上に設置する変電所から始まった(図3)。2011年3月に最初の基礎を海中に設置、順次発電を開始していき、最後のタービン(図4)を据え付けたのが2012年12月だ。総事業費は18億ポンド(152円換算で2736億円)。建設には75以上の企業や組織が参加し、延べ6700人が携わっている。
London Arrayの所有者(プロジェクトコンソーシアム)は、デンマーク最大の総合エネルギー企業DONG Energy(50%)と英国の6大電力・ガス会社の1つE.ON UK Renewables(30%)、再生可能エネルギーを扱うアブダビのMasdar(20%)だ。
英国にとって洋上風力発電所とは
英国は北海油田に依存しているため、原油の自給率が2008年時点で86.5%と高い。それでも再生可能エネルギーに対する投資には積極的であり、固定価格買取制度(FIT)を導入している。FITなどによって、2020年時点の最終エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率を15%まで高める計画だ。これはドイツの18%と肩を並べる水準だ。
英国が最も力を入れている再生可能エネルギーは風力発電だ。Global Wind Energy Councilが発行した「Global Wind Report Annual Market Update 2012」によれば、2012年12月時点の風力発電の累積出力では、英国の世界シェアは3%(8445MW)と低い。しかし、同時点で洋上風力では54%(2947.9MW)。つまり、世界シェアの過半数を占めている。洋上風力に投資を集中させていることが分かる。英国周辺の海洋は遠浅の地形が多く、北海以外にアイルランド側のアイリッシュ海にも適地がある。
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