上半期の売上が3500億円も増加、黒字に転じた東京電力が進む分社化の道:電力供給サービス
苦境に立たされていた東京電力の業績が早くも回復した。4〜9月の上半期で売上高が前年から3500億円以上も増えて、経常利益1120億円を計上した。販売電力量は前年比で1.3%減少したにもかかわらずだ。収益悪化の原因に挙げていた燃料費が200億円程度の増加に収まったことが大きい。
電力会社が相次いで上半期の決算を発表する中で、東京電力の好調ぶりが目立つ。売上高は前年から12.8%も伸びて、3541億円の大幅な増収になった。経常利益も3013億円の改善によって赤字から一気に黒字へ転じた(図1)。まだ半期の決算とはいえ、東京電力にとっては久しぶりに明るい話題だ。しかし先行きは厳しいものがある。
売上高は増えたものの、ベースになる販売電力量は前年比で1.3%少なくなった(図2)。家庭向けの「電灯」のほか、企業向けの「電力」と「特定規模需要」も軒並み減っている。今後も減少傾向が続くことは確実で、売上高を増やすためには電気料金を再び値上げするしかない。その結果、さらに販売電力量は減っていく。このままでは立ち行かなくなることは目に見えている。
東京電力が生き残る道は、電気事業法の改正によって2018年にも実施される「発送電分離」しかない。すでに他の電力会社に先駆けて発送電分離を前提にしたカンパニー制を2013年4月に導入して、今回の決算からカンパニー別の収支も公表した(図3)。
現在の収支構造は各カンパニーの従業員数に見合った利益が出るようになっている。しかし発送電分離が実施されると、他社との競争によって取引価格が決まり、収益構造は大きく変わってくる(図4)。
最も競争が激しくなる小売事業担当の「カスタマーサービス・カンパニー」は、人員削減を含めた抜本的な改革が必要になるだろう。一方で地域の送配電ネットワークを運営する「パワーグリッド・カンパニー」は競争も少なく、安定した収益を上げることができる。
残るのは火力発電事業を中核にする「フュエル&パワー・カンパニー」だが、この部門も燃料費を抑制できれば競争力を維持できる可能性が大きい。その点で2013年度の上期に燃料費がさほど増えなかったことは朗報だ。前年比でわずか1.5%の増加にとどまった。今後は発電効率の高い火力発電所を増やしていく計画になっていて、燃料費の高い石油からガスや石炭へ転換を図ることによってコスト競争力を高めることができる。
東京電力は発送電分離を機に早く分社化することが未来に向けた最善の策になる。難問山積の原子力発電事業に将来性はないが、それ以外の発電事業と送配電事業は十分に競争力を発揮して収益を上げることができるはずだ。
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