火力の調達規模を600万kWに拡大、東京電力が燃料費を1500億円削減へ:電力供給サービス
東京電力は2022年度までに火力発電の燃料費を年間に1500億円削減するため、外部からの電力調達を大幅に拡大する。新たに2019〜2023年度に供給を開始する600万kW分の電力を競争入札で募集することにした。価格の安い米国産のLNG(液化天然ガス)を前提にした入札も可能にする。
東京電力が火力発電による電力を競争入札で募集するのは2回目である。前回の入札では260万kW分の電力を調達する予定だったが、実際には68万kW分の応募しかなく不調に終わった。大きな原因になったのは入札の上限価格を低く設定しすぎたことで、今回は上限価格を非公表にして応札者を増やす。
前回の上限価格は電力1kWhあたり9.53円に設定していた(図1)。この価格では燃料費の安い石炭火力しか対象にならず、応札したのはJ-POWER(電源開発)、中部電力、新日鉄住金の3社にとどまった。
今回は上限価格を非公表にしたが、10円以上に引き上げたことは確実である。火力発電で主流のLNG(液化天然ガス)の場合には、現在のところ燃料費だけで1kWhあたり10円以上かかる(東京電力の原価想定単価は2012〜2014年度で10.72円)。今後は米国からの輸入開始でLNGの価格低下が見込めるものの、入札の単価が15円近くまで上がらなければ、発電事業者がLNG火力で応札することは難しい。
入札条件の中には、発電設備の利用率を70〜80%に維持することも含まれている。600万kWの電源を70%で運用した場合、年間の発電量は約370億kWhになる。一方で東京電力は燃料費の高い石油火力の発電量を2012〜2014年度に年間で383億kWh予定していて、今回の入札分とほぼ同じ規模の設備が残っている。
新たに600万kWの火力発電を確保できれば、稼働中の石油火力を2023年度までに全廃することも不可能ではない。石油火力の原価想定単価は15.95円で、LNG火力より5円以上も高い。石油からLNGに切り替えて1kWhあたりの燃料費を5円安くできれば、年間に1800億円のコスト削減を実現できる。
東京電力は火力発電の外部調達などを通じて、2022年までに燃料費を1500億円削減する目標を掲げている(図2)。本気で600万kWを調達して燃料費の削減目標を達成するのであれば、入札の上限価格を15円近くまで引き上げてもおかしくない。
東京電力は6月下旬から12月まで入札を受け付けて、2015年3月に落札者を決める予定だ。同様の競争入札は関西電力や中部電力など他の電力会社も2014年度中に実施することを決めていて、電力会社による発電事業者の獲得競争が激しくなっている。
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